2011 Fiscal Year Research-status Report
SAM界面の熱物質輸送特性に関わる諸要因の分子論的解析
Project/Area Number |
23760172
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菊川 豪太 東北大学, 流体科学研究所, 講師 (90435644)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 熱工学 / 自己組織化 / 計算物理 / 分子熱流体 / 界面輸送特性 / SAM / 分子動力学 |
Research Abstract |
自己組織化単分子膜(self-assembled monolayer, SAM)などの分子薄膜材料は,固体表面の修飾技術として広く研究が進んでいる.これらのデバイス応用を指向し,熱・物質などの輸送特性に関する研究を行うことを目的としている.ここでは,分子シミュレーションを用いて,SAMを介した熱物質輸送特性を明らかにする.特に,SAM,溶媒の分子種や環境条件など輸送特性に影響を与える諸要因について,その分子論的メカニズムを理論的・数値的に明確にすることを目標とする.本年度ではSAM分子であるアルカンチオールの機能性末端に親水性を持つヒドロキシル基(-OH)を有する分子モデルを構築し,水溶媒との界面熱輸送特性を解析した.この結果を疎水性の末端を持つSAMと比較することで,溶媒との親和性の高い親水性末端では界面熱抵抗が極めて小さいことを明らかにした.このことは,実用的な微視的スケールの熱デバイスを構築する上で非常に有用な知見になると考えられる.また,この要因を明らかにするため,SAM-溶媒界面における熱輸送をミクロな構成要素に分解して解析した.結果として,親水性末端と水溶媒間ではファンデルワールス相互作用がクーロン相互作用による熱エネルギー伝搬を卓越していることが明らかとなった.このことは親和性の要因であるクーロン相互作用がSAMと溶媒間の親和的な分子構造,すなわち水分子がSAM側の親水基部分に侵入し混合することに大きく寄与しているが,熱エネルギーの輸送自体にはそれほど寄与していないことを示している.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度では,当初予定の通りSAM末端の化学特性を変化させて界面熱輸送特性の計算を行い概ね計画を達成したが,さらに異なる機能性末端(例えばカルボキシル基)の計算を行うことができなかった.またSAM界面での物質輸送の解析に関しても,自由エネルギー測定手法の確立を現在行なっているところである.
|
Strategy for Future Research Activity |
SAMの分子スケール構造による輸送特性への影響に着目した解析として,SAMの秩序性が輸送特性に与える影響を明らかにする予定である.SAM内部構造の秩序性を変化させるため,アルカンチオール分子鎖中にエーテル結合(分子鎖中に-O-結合を含む)や不飽和結合を導入したり固体表面のSAM分子被覆率を変化させるなどSAMの構造的な特性を変更する.またSAM界面における物質輸送特性については,平衡論的な分子拡散係数の評価とともに,物質輸送係数と密接に関係する分子の自由エネルギー分布の評価を行う予定である.このため,より高効率な自由エネルギー解析手法(adaptive umbrella samplingなど)を導入・確立する予定である.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度では解析結果の蓄積・保存を行うためのデータメディアやストレージなど計算機用消耗品を購入するために予算を計上している.また,本研究の成果を発表するため,論文校閲・投稿費用,および国内外への成果発表旅費を計上している.
|
Research Products
(6 results)