2011 Fiscal Year Research-status Report
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23760180
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
エイナルソン エリック ジー 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (00553603)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / 色素増感型太陽電池 / 電気化学インピーダンス / 表面電気特性 |
Research Abstract |
SWNT(single-walled carbon nanotube,単層カーボンナノチューブ)はグラファイトやフラーレンに続く炭素の同素体であり,グラフェンシート一層を円筒状に巻いた構造を持つ物質である.SWNTは高い電気伝導性,化学的安定性などを有しているという特長をもつことからデバイスなどへの応用が期待されている.色素増感型太陽電池は1991年にGratzelらによって開発された有機太陽電池で高効率,低コストに作製できる可能性をもつ太陽電池である.一方で,改善すべき課題としてPt(プラチナ)を使用するコスト面,資源的制約面の問題や電解液,アノードなど構成要素それぞれに残されており,改善に向けて研究が進められている.色素増感型太陽電池の重要な問題のひとつとして,対極に用いるPtは資源的問題あるため実用的な材料ではない.さらにPtは電解液による腐食が確認されており,化学的安定性に問題がみられる.以上のような問題点を解決するための代替材料として本研究ではSWNTを採用した.SWNTは対極電極に必要な特性である化学的安定性,及び比表面積をもつ材料であるため対極材料として利用可能であると考えられる.そこで,本研究では化学的安定性,および比表面積が大きい構造をもつSWNT膜を色素増感型太陽電池の対極にPt電極の代替材料として用いることを目的とし,その有用性を電気化学インピーダンス(Electrochemical Impedance)法(以下EIS法)を実験的に行った.EIS法を用いてセルのインピーダンスを測定したら,対極をPtからSWNTに変えたことによる対極/電解液界面での電荷移動抵抗は両者を比較してほとんど変わらず,電解液/対極界面の電荷移動に関して十分な性能をもっていることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単層カーボンナノチューブの合成技術開発を進めることができ,また太陽電池の作製および計測に必要な設備や技術を得ることもできた.現状としては当初の予定通りの研究進行状況だと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
SWNT対極がPt対極に追いつくためには以下の方法を提案する.まずSWNT膜の電解質濃度を高くする必要があると考えられることである.SWNT膜は比表面積の大きい構造をしているため,電解液が吸着しやすく拡散移動を妨げていることが考えられる.SWNT膜を用いるとき,電解質濃度を上げることで,反応速度の向上を狙える可能性があると考えられる.次に,膜の均質性を向上させる方法である.マイクロオーダーでみると不均質な膜が形成されている部分が多く見られたため,より均質な膜が作製可能な方法が必要であると考えられる.例えば,SWNTをペースト状にしてスクリーンプリント法で塗布するというような方法である.しかし,増粘のために混入した有機物を加熱によって除去する必要があるため,SWNTが破壊されるのに気を付ける必要がある.サイクリックボルタンメトリー法(CV法,Cyclic Voltammetry法)は電極の入力信号を電位走査速度の大きい繰り返し三角波として電流応答を測定する方法である.CV測定では作用電極の電圧を正や負の方向へ変化させつつ物質を電極上で酸化,還元させることでどの電圧でどのような速度の反応が起こるかを観測することができる.CV法は,実験系の酸化還元反応の基本的な性質を調べることができるため,非常に有用な方法であるため,SWNT対極の状況を調べるためにCV法を利用することは適切である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の計画として,均質なSWNT膜を作製する必要があると考えられるため,単層カーボンナノチューブの合成条件または転写の仕方を検討する.例えば,SWNTをペースト状にしてスクリーンプリント法で塗布するというような方法である.しかし,増粘のために混入した有機物を加熱によって除去する必要があるため,SWNTが破壊されるのに気を付ける必要がある.今後は,上記のCV法などを使用し,太陽電池のより詳細な特性評価や,単層カーボンナノチューブ構造が特性に与える影響を分析していく.具体的にはデバイス性能向上に求められる単層カーボンナノチューブ膜の表面を明らかにすると同時に,その実現に向け合成技術の改良を進める.また,既存のデバイスだけでなく新たな単層カーボンナノチューブのエネルギーデバイスの開発も目指していく.現状において,研究計画の変更や遂行上の問題はないと考える.
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Research Products
(29 results)