2011 Fiscal Year Research-status Report
人体温熱快適性に及ぼす環境6要素の非定常・非一様性の影響評価
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23760192
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
島崎 康弘 岡山県立大学, 情報工学部, 助教 (20584270)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 温熱快適性 / 人体モデル / 人体熱負荷 / 部位差 / 非一様 / 非定常 / 環境評価 |
Research Abstract |
本研究は実空間の非定常・非一様性を考慮した温熱快適性指標の構築により,従来にはない人体の生理情報および感性(温熱感覚)を取り込んだ都市空間の温熱環境解析を行なうことで,人間本位により近い生活空間の創造および環境情報の提供を目指すものである.平成23年度は,「非定常応答として,日射量(放射温度),気温,湿度,気流,代謝量,着衣量の環境6要素の変動に対する人体温熱感受性の応答を観察することで,過渡応答過程におけるオーバーシュート反応や立ち上がり時間・落ち着くまでの時間を明らかにする」ことを目的とした.そのために,日射量,気温,湿度,代謝量,着衣量の非定常変動を伴う被験者実験(男女とも)を実施した.測定項目として気温,湿度,日射量(全天および反射),長波放射量,風速,黒球温度,皮膚温,発汗量,酸素摂取量,二酸化炭素放出量,心拍数,温冷感申告,温熱快適感申告を記録し,同時に上述の値より人体熱収支に当たる人体熱負荷量を算出した.人体熱負荷量は本研究で用いるために提案された人体熱モデルであり,人体の温熱状態を示す指標であると考えられる.例えば,1要素のみをステップ変化させる実験において,その外部変動に対して人体熱負荷量および人間心理(温冷感・温熱快適感)はおおむね同様の反応を見せ,実験結果より温冷感や温熱快適感といった人体の体感温度を一定の精度と追従性をもって表すことができていることが分かった.従来の温熱快適性指標の多くは非定常状態の予測が難しいなかで,人体生理情報を導入することで本モデルの優位性を示すことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度計画において,年度の目標を非定常性の把握とした.本研究のベースとなるのは人体熱モデルである「人体熱負荷量」であるため,人体と環境の熱の授受を表現する物理モデルの導入が必要である.しかしながら,例えば湿度知覚はそのプロセスが未解明であるなど本モデルでは十分に考慮できていない部分も存在する.また,人体は恒常性を有していると共に個人差が存在するため,この影響を考慮する必要性に迫られている.よりベースラインを揃えた実験を行なうため,被験者のスケジュール管理やプロファイルの作成(カルテ)を行うなど工夫を行い,人工気候室を用いて理想的な環境条件を作ることで現在対処している.
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Strategy for Future Research Activity |
23年度で未完全な非定常反応の把握について引き続き検討を行うと共に,研究計画どおりに,平成24年度は主に人体非一様性の理解について取り組む.実空間では放射温度や気温などは空間内で均一になっていない上,人体側も頭から足先までどこも同じ温熱感受性を有しているわけではない.そこで,人体を構成する主要な部位における温熱感受性を把握し,全身モデルへの組み込みを行ない部位差までも考慮した温熱快適性指標を完成させる.人体熱負荷量において非一様性を表現するため,局所的に熱刺激を与え,各部位における環境要素と生理的要素から局所熱負荷量(熱刺激量)を求め,被験者実験により得られる関係から局所温冷感,そして全身温冷感を予測するという方法をとる.熱刺激を与えるため熱電素子であるペルチェ素子を用い,熱流板を取り付けることで人体皮膚表面の熱の流れを把握する.ペルチェ素子は直接皮膚に接触させ温刺激・冷刺激どちらの作成にも対応できるが,熱伝達の仕方で感受性が異なる恐れもあることから,ふく射熱伝達を再現できる小型のふく射パネルの準備も行なう.熱刺激を感知する温度受容器の分布密度には部位差があるため,本研究では刺激箇所として人体熱モデルの構成上の必要性や人体体温の指標である平均皮膚温の算出法を参考に9箇所(前額,頚,腹,脇腹,上腕,手甲,大腿,下腿,足甲)を選定し,それらの部位の比較を行なう.異なる面積に刺激することが必要な場合を想定し,いくつかのサイズの異なるも熱刺激モジュールを作成する.ペルチェ素子,熱流板,温度センサー,電源からなる熱刺激モジュールをマイコン制御することで様々な刺激強度や刺激時間を設定する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費 650千円;熱刺激モジュールの作成(1部位@30千円 × 9部位 = 270千円),刺激モジュール用マルチ電源(1台@100千円 × 1 = 100千円),制御回路(1台@30千円 × 1台 = 30千円),熱流板(1枚@25千円 ×9枚 = 225千円),その他消耗品代(実験用品等 225千円).旅費 450千円;都市温熱環境に関する最大級の国際会議(ICUC-8)への投稿が受理されており,昨年度未使用分旅費とあわせて使用する(ダブリン1週間 = 350千円).また,人工気候室利用実験等のため共同研究先への出張を年3回行う(大阪 3泊4日 ×3 = 100千円).人件費・謝金 50千円;被験者実験に対する謝金として大学規定に基づき支出する(1人@1千円 × 50人 = 50千円).その他 20千円;参考図書・論文購入,および論文投稿・英文校閲に使用する.
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Research Products
(5 results)