2012 Fiscal Year Research-status Report
人体温熱快適性に及ぼす環境6要素の非定常・非一様性の影響評価
Project/Area Number |
23760192
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
島崎 康弘 岡山県立大学, 情報工学部, 助教 (20584270)
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Keywords | 温熱快適性 / 人体モデル / 人体熱負荷 / 部位差 / 非一様 / 非定常 / 環境評価 |
Research Abstract |
本研究の目的は,非定常変動時及び非一様性の強い空間での人体温熱快適感を精度よく予測することができる温熱快適性指標の確立であり,平成24年度計画では,非一様性の理解が主たる取組みであった.既存の多くの温熱環境指標は人体を質点として扱ったものである.一方で,実空間は放射温度や気温などは空間内で均一になっていなく,人体側も頭から足先までどこも同じ温熱感受性を有しているわけではない.そこで,人体を構成する主要な部位における温熱感受性を把握し,全身モデルへの組み込みを行ない部位差までも考慮した温熱快適性指標の検討を行った. 局所的に熱刺激を与え,各部位における環境要素と生理的要素から局所熱負荷量を求め,被験者実験により得られる関係から局所温冷感,そして全身温冷感を予測する方法をとった.熱刺激付与に熱電素子であるペルチェ素子を用い,熱流板を取り付けることで人体皮膚表面の熱の流れを把握する.熱伝達の仕方で感受性が異なる恐れもあることから,ふく射熱伝達を再現できるふく射パネルを用いた同様の実験も実施した.本研究では刺激箇所として人体熱モデルの構成上の必要性や人体体温の指標である平均皮膚温の算出法を参考に9箇所を選定し,部位の比較を行なった.結果,熱刺激付与開始により局所熱負荷量は急激に変化し,それに伴って局所温冷感および全身温冷感は直ぐに応答する.時間経過と共にそれぞれの値はやがて収束に向かう.一方,皮膚温度は急激に変化しないことから時定数の観点から温熱状態を表す指標として局所熱負荷量を測る方法は適している.局所熱負荷量と局所温冷感の間には一定の関係があり,回帰直線の傾きから各部位における温熱刺激の感度がわかり,額や体幹で感受性が高く,四肢末端部で感受性が低くなった. また,複数部位の同時刺激,異なる環境下,温刺激など総合的な局所効果を含んだ人体熱モデル構築の基礎となるデータが得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「非一様性の理解」に関して,当初計画において実施予定であった項目は,局所熱刺激の全身温熱環境への影響把握,人体9部位の温熱感受性の違いの解明,刺激面積差に起因する刺激効果の違いの考察,熱刺激に対する飽和値・閾値の解明,効果的熱刺激法の導出であった.局所刺激付与実験結果をもとに,温熱感受性の部位差を相対的に数値化まで行えており,おおむね良好に研究は進行している.昨年度において,やや遅れ気味であった課題も人工気候室など環境条件を整えることで軌道修正できているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は本研究の総括の年度となる.23年度実施した「非定常性」,24年度に実施した「非一様性」の理解をもとに様々な環境に適応可能な評価モデルの構築を行う.まずは,数値解析モデルをして構築するが,被験者実験ベースでの検証も行う.屋外環境を想定すれば,ふく射受熱の影響が大きく,その他でも風速などダイナミックな変動を起こす.したがって,異なる環境として,異なる路面における環境評価や風速変動の影響を表現できるかを中心にみてゆく.実験は春夏秋冬の4シーズン行うことになるが実験の効率化を図るため,追加で熱センサーを購入する.また,被験者の謝金も大学規定に従い支出する.特に風速にかかわる実験は特殊な風洞を用いる必要があり,共同研究先に出向いての実験となることから,旅費を計上する.なお.既に行った予備実験においては良好な結果を得ている. 4シーズンすべての結果を待つわけにはいかないため,本研究の評価手法の有用性をある程度確認したのち,構築した数値人体モデルを用いることで温熱環境評価を行なう.提案されている様々な温熱環境対策施策を定量的に評価するとともに,今後行なうべき費用対効果の大きな施策を検討・提案する.また同時に,積極的に国内外の会議や学術雑誌で情報発信を図り,社会へ成果の還元をする.そのため,旅費やその他の経費に関して必要な支出を検討している.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費 165千円;顕熱・潜熱流束センサ(30千円×4個),実験消耗品(45千円). 旅費 350千円;国内学術会議(伝熱@仙台,人間生活環境@神戸,ヒューマンダイナミクス@東京 各1回=130千円),共同研究先における屋外および人口気候室共同実験(4日×4シーズン=200千円). 人件費・謝金 250千円;被験者実験の謝金として大学規定により支出(1千円@1人×25人). その他 80千円;論文発表・印刷に使用.
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Research Products
(7 results)