2011 Fiscal Year Research-status Report
多重壁構造におけるモードの局在化現象とその制御応用
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23760208
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
岩本 宏之 首都大学東京, システムデザイン研究科, 助教 (90404938)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 遮音制御 / モードの局在化現象 / フィードバック制御 |
Research Abstract |
近年,高周波数領域において有効な二重壁構造に,低周波数量域において有効な能動制御を適用することで,広帯域にわたる遮音性能を実現するハイブリッド手法に関する研究も行われてきている.二重壁にかぎらず,複数の柔軟壁からなる多重壁構造は,同様な構成部分の集合から成る構造物の典型であり,これを繰り返し構造物と呼ぶ.しかし,一様とされる構成要素からなる繰り返し構造物においては,誤差分散はその多少に関わらず必ず存在する.このとき,系全体にわたって分布するはずのモード形状が,その誤差分散の程度に応じて,一部の領域に集中する場合がある.これをモードの局在化現象という.一般に,当該現象は応力集中や疲労破壊などの観点より忌避すべきものではあるが,外乱エネルギの封じ込めが自然な状態で達成できていると考えると,振動・騒音抑制問題への応用が可能である.そこで本研究は,多重壁構造にモードの局在化現象を積極的に惹起させることによって,壁を透過しやすい低周波音を指定された中間層に局在化させ,結果として放射音をキャンセルする手法の提案を目的とする.今年度は,三重壁をtest vehicleとして,モードの局在化現象の確認を行い,さらにフィードバック制御の観点から,隣接する2つの平板の連成を絶縁する制御法を提案した.まず始めに,モーダルカップリングによる多重壁構造物の振動解析を行い,それにより隣接する平板相互の連成関係を明らかにした.次に,各平板の連成関係と振動絶縁条件を導いたのち,フィードバック制御による制御理論を構築した.これにより,振動を外乱にさらされる要素のみに集中する振動の局在化と,構造の遮音性向上を実現することができる.さらに,数値解析の観点から,振動エネルギの絶縁効果と外乱が作用する平板における局在化を確認し,遮音の観点からも当該制御手法が有用であることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の最も重要な目的は,フィードバック制御およびフィードフォワード制御の両面から,多重壁構造物における革新的な能動遮音制御手法を確立することである.研究実績の概要にもあるように,平成23年度においては,フィードバック制御の観点から制御手法を提案し,その有用性を数値解析により明らかにしている.したがって,制御系の簡素化などの課題は残るものの,2年間の研究期間において目的の半分がほぼ達成されたといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り,平成23年度においては,フィードバック制御の観点から制御手法を提案し,その有用性を明らかにした.平成24年度はフィードフォワード制御の観点から研究を行う.一般にフィードフォワード制御はモデル化誤差などの影響に対して敏感であり,基本的に適応フィルタの援用を前提とする.この場合,制御系の設計問題はエラー信号の計測問題に置き換わる.本研究の主題は多重壁構造物においてモードの局在化現象を模擬する制御手法の提案であることから,各要素間のエネルギの移動をモデリングし実時間で計測する手法を提案する.基本的なアイデアとしては,波動の観点からエネルギの移動を記述し,代表者がこれまでに提案してきた波動フィルタリング法をベースすることを試みる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は前述の波動フィルタリング法の確立と実験実証を行う予定であったが,フィードバック制御による遮音制御手法の提案にシフトしたため,波動フィルタに使用する予定のPVDFフィルムの購入を見送った.これが,剰余金発生の主な理由である.したがって,平成24年度においては,構造用センサとしてのPVDFフィルム,間隙内の音圧を計測するためのマイクロホンなど,センサ系を購入する予定である.また,国際会議や岡山県工業技術センターの研究連携者との打ち合わせのための旅費等にも支出する予定である.
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Research Products
(13 results)