2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23760211
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Research Institution | Tokuyama College of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 厚行 徳山工業高等専門学校, 機械電気工学科, 助教 (40450142)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 褥瘡 / 床ずれ / 超音波モータ / リニアモータ / 体圧分散 / 振動特性 / 負荷特性 |
Research Abstract |
皮膚等の組織が長時間圧力を受けて壊死してしまう褥瘡(床ずれ)は、難治性で感染症を引き起こす可能性が極めて高く、患者の大きな苦痛となっている。また2時間おきの体位変換が必要で介護者の負担も大きく、高齢化社会の深刻な問題となっている。褥瘡の予防には体圧を低く保つ必要があり、頻繁な体位変換など介護者の負担も大きい。 本研究では、超音波リニアモータを複数個設置し、体圧の掛かった箇所を凹ませる方式の褥瘡軽減ベッドを提案し、褥瘡軽減ベッド用の超音波リニアモータの開発を試みている。エアーポンプを用いた従来方式は、常時加圧が必要なため頻繁に騒音が発生することや力を加えた時の安定感の無さ等が欠点である。一方、超音波モータはギアが不要で静粛、保持力が大きい等の利点がある。 試作した超音波モータは複合振動を得るため、共振周波数60 kHz・直径 15 mmのボルト締めランジュバン型振動子(BLT ) 2本をレ型コネクタで結合した構造にした。レ型に配置することによって駆動面を大きくすることができる。 試作した振動子のアドミタンスループ・振動分布・振動軌跡を測定した。各振動子の共振周波数にはずれがあり、十分な性能が引き出せていないことが分かった。しかし、複合振動は得られ、位相を変えることによって、振動軌跡の回転方向を変えることができることは確かめた。 駆動周波数59.6 kHz、駆動電圧 150 Vrmsで負荷特性を測定した結果、最大推力 31 N・最大上昇速度 176.5 mm/s・最大効率 4.82%が得られた。先の研究で試作した超音波リニアモータより性能は向上している。また、各部の共振周波数を一致させるため、より正確な音速を求める実験を行い、再設計・改良した超音波リニアモータを試作した。その他、モータの製作と並行してマイコンを用いた制御回路の製作も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
褥瘡軽減ベッド用の超音波リニアモータを試作し、振動特性や負荷特性等について検討した。先の研究で試作した超音波リニアモータの性能以上のモータを実現することができた。しかし、得られた推力は 30 Nであり、目標としていた 150 Nには達しなかった。目標値に達しなかったのは、共振周波数の不一致が大きな原因であると考えている。各部の共振周波数を一致させるため、より正確な音速を求める実験を行い、超音波リニアモータを再設計・試作した。 1台目の超音波リニアモータの試作・調整、音速を求める実験などに時間が多く掛かった。また、校舎改修に伴う研究室の引っ越しがあり、半年ほど設備の乏しい環境の中で複数の研究を行っており、予定通りに進めることが難しいときもあった。
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Strategy for Future Research Activity |
新しく試作済みの超音波リニアモータの振動特性・負荷特性を測定する。共振周波数が一致しているか確認し、ずれがある場合はレ型コネクタあるいはスペーサの長さを調整して共振周波数を一致させる。推力の目標値は 150 Nとする。また、圧力印加用ばねの種類・ステータ-スライダ間に印加する圧力・駆動面形状・入力波形の位相・駆動面へ投入する潤滑油の種類・駆動電圧などの条件を最適化する。 製作中の制御装置を用いて、実際にモータを圧力に応じて制御する。圧力が印加されると下がり、圧力が除去されると元の位置に戻るように制御する。圧力の測定にはストレインゲージを用い、マイコン(Arduino)で制御する。 褥瘡軽減ベッドの簡易モデルとして椅子状の体圧分散装置を製作する。 150 N 以上の推力が得られるモータが完成したら、9個のモータを製作する。9個のモータをマトリックス状に配置して椅子状の体圧分散装置とし、体圧の分散が可能か検討する。各モータに印加される圧力が等しくなるように制御することで体圧が分散される。 時間的に余裕がある場合は、人が横になれる大きさの褥瘡軽減ベッドを設計・製作し、実際に試してみる。接触圧力は携帯型接触圧力測定器で測定し、体圧の分散ができているか確かめる。また、静粛性・耐久性・寝心地・消費電力・磁場強度・コスト等を確かめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アドミタンスループ測定機の購入を考えている。試作した超音波モータを理論的に解析し、装置の性能を確認するためには、共振周波数・動アドミタンス・Qの測定が必要である。アドミタンスループ測定機はこれらを測定するために必要な装置である。既に保有しているインピーダンスアナライザを用いるため、比較的安価な値段でアドミタンスループ測定機を構成できる。 購入予定の圧電型ロードセルは圧力印加用ばねのばね特性測定に用いる。超音波モータの動作はばねの種類や圧力によって大きく変化するため、ばね特性の測定が必要である。 購入予定の携帯型接触圧力測定器は実際に体圧分散ベッドの適合評価や褥瘡発生の危険度評価に使用されている装置であり、試作する体圧分散装置の評価に用いる。なお、体圧分散装置の製作にはボルト締めランジュバン型振動子等やスライドガイド等の機材費が必要である。 随時国内外の学会で発表するにあたり、旅費や研究成果投稿費も発生する予定である。
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