2013 Fiscal Year Research-status Report
軌道上無人輸送機の自律ドッキングハイブリッドシミュレーション
Project/Area Number |
23760214
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安孫子 聡子 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40560660)
|
Keywords | ハイブリッドモーションシミュレーション / 接触力学 / 閉空間把持 / 宇宙マニピュレータ |
Research Abstract |
本研究の目的は,軌道上無人輸送機のドッキングや構造物組立等の軌道上サービスを対象とした微小重力下での浮遊物体同士の必然的な衝撃,および偶発的な衝突の際の安全性を考慮した自律ドッキング制御の確立である.同研究の検証には地上微小重力模擬環境であるハイブリッドモーションシミュレータと空気浮上テストベッドを用いている.平成24年度終了時には,ワイヤの初期形状がワイヤの全長とたるみ量から楕円積分によって理論的に導出できるに至った.接触力とめり込み量の関係は,幅広いめり込み量やたわみ量の条件化において成立する実験式を導出することができた.平成25年度は,平成24年度の研究成果をもとに,現実に即した数値シミュレータを構築した.対象として,実軌道上にて運用されているH-II Transfer Vehicle (HTV) の宇宙ロボットアームSSRMSによる捕獲シミュレータを開発した.実軌道上データと比較・検証することで,数値シミュレータの妥当性を示した.さらに,ケーススタディとして,シミュレータを用いて,捕獲危険条件の検証を実施した. 一方,ハイブリッドモーションシミュレータでは,宇宙ロボットアームSSRMSによるHTVの捕獲を対象として,スケールダウンした数理モデルを用い,数値シミュレーション同様に捕獲危険条件の検証を実施した.ハイブリッドモーションシミュレーションを用いることにより,数値シミュレーションでは,正確にモデリングされ切れていない摩擦・すべりや多点接触等の影響を含んだ接触現象を再現でき,数値シミュレーションのみでは検証できない捕獲危険条件の細分化ができる.今後は,開発したシステムをもとに3本のワイヤによる閉空間把持機構の柔らかさと宇宙ロボットアームの関節が有する柔軟性の両方を利用した柔らかい把持の手法のまとめを行う予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開発した数値シミュレータを用いて,実軌道上でのHTV捕獲時のロボットアーム手先に対する相対運動の推定を行った.その結果,3本のスネアワイヤが一定速度で閉じていく間に3回ほどのはね返りを繰り返し,最終的な締め上げ把持を行ったと推定された.また,ケーススタディを実施し,捕獲失敗となる相対速度の検証を実施し,実軌道ミッションにて想定している安全基準よりも数倍大きな速度においても安全な捕獲・把持が可能であることが示された. 一方,ハイブリッドモーションシミュレータ特有の遅れ時間に対する問題に関して,反発係数に基づく補償法を提案してきた.反発係数に着目することで,システムの安定性および実現象との差異を定量的に評価できる.そこで,対象とする接触現象の周波数解析を行った.その結果,対象とする接触周波数では,ハイブリッドモーションシミュレータシステムが安定な領域で検証が可能であることが示された.また,空気浮上テストベッドによる接触現象と同様の運動をハイブリッドモーションシミュレータにより実施し,両者の結果を比較した結果,遅れ時間の影響により運動模擬の完全な一致は得られないが,遅れ時間の影響を定量的に見積もることで,対象とするシミュレーション運動が開発したハイブリッドモーションシミュレータを用いて検証可能であるとの結論に至った.
|
Strategy for Future Research Activity |
本報告書提出現在において,ワイヤの数理モデルの構築は良好であり,数値シミュレータの構築はほぼ終了した.また,ハイブリッドモーションシミュレータの時間遅れによるシステムの不安定さという問題は,ワイヤとの接触現象において接触周波数は十分に小さく,開発したシステムにおいてシミュレーション検証が可能であることが示されている.また,両シミュレータを用いて,研究協力者であるJAXAロボティクスグループより提供していただいたHTV捕獲のフライトデータとの比較やケーススタディを実施している.そこで,最終年度はスネアワイヤによる閉空間把持機構の柔らかさと宇宙ロボットアームの関節が有する柔軟性の両方を利用した柔らかい把持の手法を用いた弾き飛ばしを抑えた把持・ドッキング手法の実験・検証・まとめを行う予定である.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は研究代表者が産休および育児休暇を取得し,約半年間にわたり,研究の中断が生じた.そのため,研究は数値シミュレータの信頼性の向上を目指した開発や理論検証に注力した形となった.そのため,ハイブリッドモーションシミュレータと空気浮上テストベッドの機構システムは平成25年度初めに開発済みの機器を使用しており,経費の利用を延長することとなった. 次年度は,ハイブリッドモーションシミュレータと空気浮上テストベッドの機構システムの修正にかかる経費,また,成果発表のための各種学会への参加費および論文投稿費を計上する予定である.
|
-
-
-
[Presentation] Dynamic Simulator for HTV Capture with Space Station Remote Manipulator System2014
Author(s)
Ryo Yoshimitsu, Akinori Kobayashi, Yudai Yuguchi, Riku Takano, Satoko Abiko, Kenji Nagaoka, Kazuya Yoshida, Hiroki Nakanishi, Mitsushige Oda, and Hiroshi Ueno
Organizer
12th International Symposium on Artificial Intelligence, Robotics and Automation in Space
Place of Presentation
Montreal, Canada
Year and Date
20140617-20140619
-