2011 Fiscal Year Research-status Report
幹細胞の分化誘導のためのリアルタイム機械刺激応答評価マイクロデバイスの構築
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23760232
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
中島 雄太 山口大学, 理工学研究科, 助教 (70574341)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 細胞刺激 / リアルタイム細胞観察 / マイクロデバイス / BioMEMS |
Research Abstract |
フォトリソグラフィとモールディングによって製作した自己接着性を持つPDMS構造体の積層により、細胞への圧縮刺激を動的に制御できるマイクロデバイスの構築に成功した。本デバイスは、ガラス基板とPDMS構造体の透明材料のみで構成されるため、光学顕微鏡を使って細胞をリアルタイムで観察することが可能である。製作したデバイスは、圧力導入ポート、ガスケット、幅200μm、深さ50μmの細胞導入用のマイクロ流路、深さ200μmの細胞培養チャンバ、培養チャンバの直上に製作された細胞に圧縮刺激を与えるための厚さ10μmのダイアフラムなどから構成される。圧力導入ポートより空気圧を導入し、ダイアフラムをたわませることによって、その薄膜で培養細胞に圧縮刺激を与えることができる。 圧力を印加することによるダイアフラムの基礎的な変形特性を評価するために駆動実験を行った。ダイアフラムに印加する圧力を1~10kPaに徐々に変化させた際、ダイアフラムは約80~180μmと圧力に応じて徐々に変形した。一方で、ダイアフラムの理論的な変形挙動を調べるためにFEM解析による構造解析を行った。この際、ダイアフラムのヤング率は3.2MPa、解析モデルは軸対象モデル、材料モデルは超弾性、をそれぞれ設定した。FEMでの解析結果と実験結果を比較したところ、誤差は24%未満でありグラフは同様の傾向を示した。これらの結果より、構築したデバイスは細胞への刺激を印加する空気圧によって制御でき、細胞に対して静的な刺激だけでなく動的な刺激を与えることが可能であることがわかった。 さらに、当初の予定を繰り上げて製作したデバイス上での細胞培養実験を試みた結果、細胞はデバイス内でも培養可能であることが確認できたが、培養チャンバ内への細胞導入効率とチャンバ内の培養面への細胞接着が悪いことが判明した。この課題については次年度に検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標であった機械刺激応答評価マイクロデバイスの設計・試作・動作実験が完了した。また、当初の予定を繰り上げてデバイス上での細胞培養実験を実施しており、当初の予定より多少の進展はあるが、デバイス製作時の歩留りとチャンバ内への細胞導入効率が悪い点、チャンバ表面へ細胞が接着しにくい点など新たな課題も見つかっているため、達成度はおおむね順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、前半には、構築したデバイスの有効性と妥当性を検証するためにデバイス内での細胞培養実験と細胞刺激実験を行う。既に得た結果から、デバイス製作の歩留りや培養チャンバ内への細胞導入効率、チャンバ表面への細胞接着が悪いことが判明しているため、まずはこれらを改善する。デバイス製作の歩留りに関しては、各層を積層する際に酸素プラズマにより表面のクリーニングと活性化を行う事により層間の強固な接合を試みる。また、細胞導入効率の向上に関しては、デバイスの再設計を行い、チャンバに導入された細胞がチャンバ外に流れ出て行かないような設計を考案する。そして、細胞接着を改善するために、チャンバ内を酸素プラズマによる洗浄と親水化やコラーゲンなどの細胞接着因子をコーティングすることなどを検討する。これらの改善を行いながら、随時、骨芽細胞への刺激実験を実施し、リアルタイムで観察することにより細胞の応答評価を行うことが可能であることを実証する。 後半には、実際に間葉系幹細胞をデバイス内に培養し機械刺激を与えることにより、細胞の形態変化の挙動や細胞内カルシウムイオン濃度の変化を観察・評価し、機械刺激と分化挙動などの相関を求める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度の研究費は、研究を遂行する上で恒常的に必要な、ガラス基板やレジスト、表面処理剤、有機溶剤などの薬品、器具類などのデバイスの製作に必要な消耗品や、培地や血清などの細胞培養用薬品類、ディスポーサブル器具、細胞の応答や挙動を観察するための試薬類などの消耗品を購入する予定である。また、実験で必要な理化学器具も購入する。その他には、研究成果の発表や調査研究のための国内外への旅費や学会参加費、論文投稿料でも使用する。後半の細胞刺激実験では、多数の実験的検討が必要であるため、研究補助を行ってもらうための謝金を計上した。 次年度に使用する予定の研究費は、交付当初、震災等の影響で予算が減額される可能性があったため、購入を予定していた圧力印加装置の購入を延期したことで生じた。この装置を使用せずデバイスの駆動実験を行う必要があったため、静水圧を利用した圧力印加法を考案し、手動ではあるが精度良く圧力を印加できることを確認した。現段階では、今後もこの方法で実験を進める予定である。一方で、圧力を印加し駆動実験を実施した際、デバイスの層間の接着力に不備があり、デバイス製作の歩留まりが悪いという不具合が発生した。このため、次年度に請求する予算と合わせて表面のクリーニングと活性化を行い、層間をより強固に接合するための酸素プラズマ装置を購入し上記の課題を克服する予定である。
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Research Products
(3 results)