2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23760235
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
若山 俊隆 埼玉医科大学, 保健医療学部, 講師 (90438862)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 内面形状計測 / 三次元計測 / 分光バイオプシ |
Research Abstract |
超精密で特殊な加工技術によって作製された小孔や小管は,環境・エネルギー分野から航空宇宙・自動車産業そして建築や土木に至るまで普及され,その応用は様々な分野へ展開されている。これらにわずかな欠陥が生じたとき,危機的な事態を引起す可能性があることは周知の事実である。本研究では,非接触で高速かつ高精度に内面形状計測を行う手法の開発を目指している。 平成23年度は白色リングビームプローブとラジアル分光器を開発した。白色リングビームプローブは光源に白色LEDを用いている。集光するために,回折光学素子を用い,集光位置にφ400μmの光ファイバを配置している。レンズ系によってコリメートされた光はコーンミラーに照射され,白色のディスクビームを生成した。これを内面のサンプルに照射して,リングビームをCCDカメラで捉えることを確認した。CCDカメラに検出される画像は白色の光セクショニング面であり,これを解析し,内面の三次元形状を取得できる。本研究では,これに加えてサンプルの分光情報を同時に得る。これを実現するためにラジアル分光器の作製を試みた。従来の回折格子は溝が一軸方向に配列されている。一方,ラジアル分光器に用いるラジアル回折格子は同心円状に溝を切る必要がある。本年度はこのメカニズムを確認するために,回折格子(フィルム)をセグメント状に切り出して,これを157枚配列した。また,このラジアル回折格子は空間分散があるため,1500rpmの中空モータにこれを搭載し,問題点を解決した。ラジアル回折格子はレンズ系とCCDカメラを使用してラジアル分光器とした。 白色リングビームプローブとラジアル分光器を用いて内面形状計測を行った。白色の光セクショニング面の外周に分光スペクトルが同時に得られる。これにより,三次元形状と分光情報が同時に取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初はスペクトル共焦点型の三次元内視鏡の開発を目指したが,光学系の複雑さと性能の両面で困難な点が多いことが明らかになった。この点をブレークスルーするために,白色リングビームプローブとラジアル分光器の構想に変化した。計測する方式は当初と計画が若干異なったが,三次元像と分光情報を同時に得る点に関しては十分な成果を得ることができた。ラジアル分光器に関してはフィルム状の回折格子を157枚配列させて,ラジアル回折格子を自作した。この際,手作りであったことから空間分解能が1mm程度になってしまった。今後,空間分解能の高い素子の作製が必要であると考えられる。白色リングビームプローブに関しては高輝度LEDを使用しているため,スペックルなどの影響なくシャープなリングビームを取得できた。以上を組み合わせた分光三次元内視鏡は内面の三次元形状とともにその分光情報を独立に検出することに成功した。これらの点からも平成23年度の研究計画は十分に達成された。本研究成果は2012年精密工学会春季大会にて"分光三次元内視鏡に関する研究-白色リングビーム光源とラジアル分光器の開発-(齊藤 菜都美,若山 俊隆,吉澤 徹)"として発表された。 この研究成果に加えてφ5mmの細管の三次元プローブ内視鏡の開発も同時に進められ,溝等の計測を実現している。まだ,このプローブ内視鏡は完成度が低いが,産業分野を中心にその応用性の高さから今後に大きな期待が寄せられている。 また,本研究の中でキーデバイスとなるコーンミラーを自作してきたが,その過程で光学的にとても興味深い現象が得られた。これが偏光面を軸対称に波長依存性なく制御する方法であることが判明した。この現象はとてもユニークなので,第59回応用物理学会春季大会にて口頭発表し,特許出願に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度までに研究開発を進めてきたラジアル分光器は空間分解能を高めるためにラジアル回折格子を新たに開発することを予定している。作製方法として,超精密旋盤によるナノ構造の作製を予定している。ここでは透過型のラジアル回折格子の作製を行なう。白色リングビームプローブは,現在までに一定の成果が上がっているが,よりコンパクトな素子の開発を行うことを予定している。これを行なうためにコーンミラーも独自に開発する。開発法としては研磨する機構を独自に作製する。 また,平成24年度当初の予定である偏光イメージングを実行するためにはチャネルド偏光計測を導入することを予定している。上記の三点を組み合わせることで,三次元,分光そして偏光といった多次元の情報をそれぞれ独立に取得するシステムの開発を行なう。また,多自由度の関節をもったロボットアームを開発することを予定している。ロボットアームにはロータリーエンコーダを搭載させることで内面三次元形状の絶対位置測定の実現を目指す。 また,平成23年度にコーンミラーの自作を進めてきたところ,興味深い現象を見出し,これが軸対称波長板への応用の可能性を秘めていることが見出せた。軸対称波長板を本光学系に導入することで上記に示したチャネルド偏光計測へも発展することが期待できるため,この点を意識しながら多次元内視鏡の開発を進めていく。この多次元内視鏡を実際に応用展開するためにソフトウエアの開発と共に産業分野および医学分野への応用を目指して研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
空間分解能の高いラジアル分光器を作製する。超精密旋盤は本学にないので,ラジアル回折格子を超精密旋盤で機械加工するのに必要な外注費として研究費を使用する。外注とは別に独自に作製する方法を見出すことも検討している。 白色リングビームプローブ用の光ファイバおよびコリメートレンズ系の購入を計画している。また,キーデバイスとなるコーンミラーは自作することを計画しているが,自作に必要となる材料および工作機械を研究費として支出することを予定している。 偏光分布を計測するために必要な光学素子を購入するのにも研究費を使用することも予定している。とくに平成23年度に見出された軸対称波長板は波長依存性のない光学特性を有しているため,紫外,可視光そしてテラヘルツ領域にまで応用展開することが可能と考えている。この素子を多次元内視鏡に組み入れればより高次元の世界にない内視鏡の開発が可能になると考えられるため,この部分の基礎研究にも研究費を当てることを考えている。 これらの研究成果を国内外に広く公知するために,国内での学会発表および国際会議,展示会ならびに学会誌で積極的に発表し,研究費はそれらの旅費や経費に使用することを予定している。 また,次年度に使用する研究費(61,731円)は年度末にほぼ執行されており,その残金は翌年度に合わせて使用させていただく。
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