2011 Fiscal Year Research-status Report
高分解能MRI画像計測のための高感度な折り畳み式マイクロコイルの研究
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23760240
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
土肥 徹次 中央大学, 理工学部, 助教 (20447436)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | マイクロ・ナノメカトロニクス / マイクロセンサー / 医用マイクロ・ナノマシン / 核磁気共鳴画像(MRI) / MEMS・NEMS |
Research Abstract |
平成23年度は,マイクロコイルの新しい試作手法として,平面型マイクロコイルを平行に折り畳む試作方法の確立を行った.MRI(Magnetic Resonance Imaging)の高分解能画像を取得するためには,MRI信号計測用のコイルの信号受信感度を向上させることが必要であり,そのためにはコイルの抵抗値減少と,コイルの巻き数の増加が必要である.しかし,これまでは柔軟なポリイミド基板上にCuなどの金属配線を行う試作手法であったので,コイル抵抗を低減するために導線の線幅を太くすると巻き数が減少し,巻き数を増加させるために線幅を減少させると抵抗値が増加するという,トレードオフの関係にあった.この問題を解決するために,平面型マイクロコイルを平行に折り畳む方法により,低抵抗で巻き数多いマイクロコイルを実現できる試作手法を確立した. 試作コイルは,Cu/ポリイミド/Cuのフレキシブル基板を使用し,2つの平面型マイクロコイル部と,コイル連結部から構成されている.マイクロコイルの外周には,固定用の爪を差し込む穴を4か所配置した.コイルの外周は両面にCu層を残し基板の強度を保つ.コイルの中心部はコイルに影響が出ないようにポリイミドのみとなっている.コイルの組み立て手法としては,まず基板上に試作した平面コイルを基板から切り出し,平面型コイルと連結部の境界線で90度に折り曲げる.そして,連結部の腕を平面コイル外周に沿って曲げ,固定用の爪を平面コイル部の穴に差し込み曲げることで構造が完成する.周波数80MHzにおいて,試作コイルは1.72µH,手巻きコイルは0.41µHのインダクタンスであり,試作コイルは手巻きコイルの約4.2倍の値となった.また試作コイルの自己共振周波数は約120MHzとなり,アンテナ用コイルとして十分な性能を持つことがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では,平成23年度に折り畳み式マイクロコイルの試作手法の確立と,MRI信号計測デバイスのプロトタイプの試作を行い,平成24年度にMRI信号計測デバイスとマイクロコイルを統合してMRI画像計測実験を行うことを予定していた. このうち,平成23年度に実施を予定していた折り畳み式マイクロコイルの試作手法の確立については,2つの平面型マイクロコイル部とコイル連結部を折り上げることにより,マイクロコイルを試作する手法を確立した.研究開始当初は,折り畳むことだけを念頭にしていたが,コイルが配置された2面が接触すると特性が不安定になってしまうため,微小な間隔で平行に保持することが重要であることがわかった.そこで,2平面間を一定間隔で保持できるようにコイル連結部を作成することで,この問題を克服することができた.以上によって,巻き数が多く,かつ,低抵抗なMRI画像計測用のマイクロコイルを試作する手法を確立することができた. 一方,MRI信号計測デバイスのプロトタイプについては,これまでアクリルパイプの先端にマイクロコイルを配置したデバイスを試作してきたが,平成23年度は従来試作してきたデバイスをそのまま使用し,平成24年度に改良をおこなうこととした.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、マイクロコイルをMRI信号計測デバイスと統合してMRI画像の計測を行い,さらに画像計測結果をフィードバックしたコイルの改良を行うことで高解像度なMRI画像計測の実現を目標として研究を遂行する予定である. 具体的には,まずMRI信号計測デバイスのプロトタイプの試作を行い,プロトタイプの先端部にマイクロコイルを配置できるようにする.これまでアクリルパイプの先端にマイクロコイルを配置したデバイスを試作してきたが,デバイス根本部分を内視鏡の根本部と結合し,既存の術具と類似した形状とする.このプロトタイプの先端に折り畳み式マイクロコイルを配置し,試作コイル用に調整したMRI装置との接続回路を内視鏡の根本部分に配置する.この統合デバイスによって,MRI信号計測用標準試料(ファントム)の計測を行い,折り畳み式マイクロコイル,旧手法により試作したマイクロコイル,医療用コイルでの信号対雑音比(SNR:Signal to Noise Ratio)計測の比較実験を行う.折り畳み式マイクロコイルのSNRが十分に向上しなかった場合には,スケール効果による検討を行う.スケール効果による検討結果,試作した折り畳み式マイクロコイルの電気特性,計測されたSNR計測の実験結果から,マイクロコイルや統合デバイスの改良すべき点の洗い出しを行う.このようにして改良を行うことで,MRI信号受信感度を大幅に向上し,高解像度なMRI画像計測を実現する.なお,統合デバイスを利用した高解像度なMRI画像計測の結果を取りまとめ,その成果を国内・国外の学会や学術論文誌で発表する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費使用計画としては,設備備品用の物品費として,試作基板へのレジスト塗布用のスピンコーター(ミカサ社製 MSA-100)を購入することを予定している.これは,試作基板上に均一にレジストを塗布することによってマイクロコイルの試作精度の向上を目的とした装置の導入であり,研究遂行上必要な装置である.また,消耗品用の物品費としては,マイクロコイルとなるフレキシブル基板や,MEMSプロセスに必要となるアセトン・銅エッチング液などの各種薬品類を購入予定である.旅費としては,国内外での研究調査・研究発表のため,IEEE MEMS(台湾・台北で開催予定),電気学会「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウムに参加するための交通費を想定している.その他の費目では,東京大学「超微細リソグラフィー・ナノ計測拠点」の電子線描画装置でガラスマスクを試作する費用を予定している.最後に,研究成果を投稿する際の外国語論文の添削費や投稿費,学会への参加費もその他の費目からの支出を予定している.
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