2012 Fiscal Year Research-status Report
アナログ高集積化回路による人工知能を搭載したMEMSマイクロロボットの開発
Project/Area Number |
23760243
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
齊藤 健 日本大学, 理工学部, 助教 (70580174)
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Keywords | 人工知能 / MEMS / マイクロロボット / ハードウェアニューラルネットワーク / パルス形ハードウェアニューロンモデル |
Research Abstract |
MEMSマイクロロボットについては,昨年度開発した4.0×2.7×2.5[mm]サイズのマイクロロボットに加え,15.7×8.90×11.5[mm]サイズのベアチップを搭載可能なマイクロロボットを新たに開発した。蟻のような6足歩行を実現するマイクロロボットでは世界最小であり,2件の英文論文誌,1件の邦文論文誌に掲載された。また,当該年度中に1件の邦文論文誌,2件の英文著書に採録となり現在印刷中である。 アナログ高集積回路による人工知能回路については,昨年度東京大学大規模集積システム設計教育研究センター(VDEC)を利用し作製したが,測定した結果動作しなかった。そこで,当該年度中にVDECを利用し新たにICチップを設計したがこちらも動作しなかった。しかし,Digian Technology Inc.を利用し作製したICチップが動作し,MEMSマイクロロボット用の駆動波形の出力に成功した。 一般的にロボットの動作制御は,マイクロコントローラ等を用いたデジタル制御である。今回試作したICチップは生物の脳と同様に,神経細胞が出力するパルス波形を基に,ロボットの動作制御が可能である。ICチップは細胞体モデルおよび抑制性シナプスモデルで構成し,4つの細胞体モデルを抑制性シナプスモデルで全結合した。細胞体モデルはパルス波形を出力する発振器であり,抑制性シナプスモデルは細胞体モデルの発振を抑制する機能を持つ。抑制性シナプスモデルで全結合した4つの細胞体モデルは,電源投入時には,ランダムに発振しているが徐々に抑制し,最終的に4相同期となる。細胞体モデルの発振順序は外部入力により変更可能である。4つの細胞体モデルの出力を,アクチュエータである人工筋肉ワイヤ(形状記憶合金の一種)に入力することで加熱させ,歩行動作を生成する。現在ベアチップのMEMSマイクロロボットへの実装を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MEMSマイクロロボットについては,昨年度開発した4.0×2.7×2.5[mm]サイズのマイクロロボットに加え,15.7×8.9×11.5[mm]サイズのベアチップおよび電源搭載が可能なマイクロロボットを新たに開発した。よってMEMSマイクロロボットの開発は計画通り達成した。 アナログ高集積回路による人工知能回路については,平成24年度はVDEC により実用的なIC チップを設計・試作し,2.3mm 角のベアチップをMEMS マイクロロボットにワイヤーボンディングで接続し,電源以外を全てロボットに搭載する計画であった。しかし,平成23年度VDECで設計・試作していた1.2[μm]デザインルールは平成24年度に廃止となり,代わりに0.8[μm]デザインルールのテスト試作が新たに開始された。テスト試作によるICの測定をおこなった結果,人工知能回路は動作しなかった。チップ内に構成した線形抵抗,コンデンサの測定値が設計値の約2倍となり,MOSFETの諸特性も設計値と異なった。今後0.8[μm]デザインルールにて人工知能回路を試作する場合には,パラメータの調整が必要である。 一方で,Digian Technology Inc.を利用し0.35[μm]デザインルールにて作製したICチップが設計通り動作した。また,パッケージングされたICチップの出力波形では動作が可能なので,現在ベアチップをMEMS マイクロロボットにワイヤーボンディングで接続し,動作が得られるか検討中である。よって,アナログ高集積回路による人工知能回路の試作および動作確認については計画通り達成したが,マイクロロボットへの搭載には至っていないため,計画より若干の遅れがあるが,次年度に達成する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
アナログ高集積回路による人工知能回路のICチップ試作において,Digian Technology Inc.を利用し0.35[μm]デザインルールにて作製したICチップは動作したが,VDECを利用したICチップは動作しなかったため,引き続き0.8[μm]ルールにてチップ試作を行う。 また,MEMS マイクロロボットに搭載するセンサからの入力信号の情報処理を行うアナログ高集積化回路による独自の人工知能回路を構築し,プログラムの不要なロボットの自律的な歩行動作の制御システムが構築可能であることを明らかにする。センサには触覚センサ・匂いセンサ等を予定しており,センサ等の研究は別に検討を行っている。 さらに,平成23年度から継続して研究を行って得られた結果を取りまとめ,論文誌・国際会議等で成果の発表を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究費が生じた状況について。 平成23年度VDECで設計・試作していた1.2[μm]デザインルールは平成24年度に廃止となり,代わりに0.8[μm]デザインルールのテスト試作が新たに開始された。 当初1.2[μm]デザインルールの試作代金を計上していたが,0.8[μm]デザインルールに変更となり,0.8[μm]デザインルールはテスト試作であるため,試作代金が無料となり,2チップ分の研究費を次年度持ち越しとした。 次年度の研究費の使用計画として,VDECの0.8[μm]デザインルールによるICチップ試作代金として20万円を2チップ分計40万円。International Joint Conference on Neural Networks 2013(IJCNN2013)に採録となったので旅費として25万円。39th Annual Conference of the IEEE Industrial Electronics Society(IECON 2013)における,Special Session on Biomimetics and Bionics Roboticsに投稿中であり,旅費として23万円。 計88万円を使用する計画である。
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