2011 Fiscal Year Research-status Report
球面踵部,扁平足およびバネ足関節を持つ3次元受動歩行の安定解析とその実現
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23760247
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
衣笠 哲也 岡山理科大学, 工学部, 准教授 (20321474)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 受動歩行 |
Research Abstract |
本研究の目的は,3次元2足受動歩行に,扁平足とバネ足関節および球面集部を導入し,その安定化原理を明らかにすることである.初年度の目標は,円弧踵部を持つ2次元歩行モデルによる安定解析と歩行の詳細なデータ取得である. 目標1:円弧踵部を持つ2次元モデルについては,バネ剛性と踵部半径の安定性への影響について数値的に深く考察することが重要である.本年度は衝突によるモデルの変化を考慮しながら運動方程式を導出した.現在,受動歩行における円弧踵部の影響を調べるためにMATLABを用いたシミュレーションを行っている. 目標2:歩行の詳細なデータ取得については,前年度までに実現した扁平足とバネ足関節を持つ3次元受動歩行機RW03に,球面足関節の姿勢を計測する柔軟変位センサおよび歩行中の足裏圧力中心ZMPを計測する6軸力各センサを実装し,歩行中の姿勢およびZMPの計測に成功した.3次元受動歩行機の実現例は少なく,扁平足を持つものは存在しない.また,歩行の安定化領域は非常に狭く,歩行機に計測機器を実装することによる物理特性の変化が歩行を不可能にする可能性がある状況の下で,歩行評価に重要な知見を与えるデータ取得を可能とした点は重要である.さらに,実験結果から,ZMPが歩行中に8字を描くこと,左右の揺動が単振動に非常に近いことという人の歩行との類似性を確認した.受動歩行と人の歩行との類似性は過去に指摘されているが,人の歩行評価にも用いられるZMP軌跡と左右の揺動の類似性を初めて示した点は意義がある. さらに,これまで経験的に知られていた「脚部のバラスト位置の調整が歩行の安定化に重要な役割を果たす」という知見に対して,バラスト位置が左右揺動とZMPの振幅を調整する効果があることを明らかにした.この点は,2足歩行機を設計する上で重要な知見である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
目標1の2次元動力学モデルを用いたシミュレーションと安定解析は,円弧踵部と扁平足の組み合わせ部分におけるモデルの切り替えが必要となる.この点が予想よりも複雑で,時間がかかっており結果を得るに至っていない. 目標2の歩行の詳細なデータ取得については,予定通り,データの取得を実現し,有用な知見を得られた点で順調に推移しているといえる.また,受動歩行機における脚部バラストの効果を明らかにした点は,2足歩行を設計する上での重要な指針であり,この点は予想していた結果を上回る成果である.しかし,球面踵部を持つ2次元歩行機の設計製作は目標1の結果が得られていないため,設計を開始することができなかった. 以上の理由から,やや遅れていると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は,実験で得られた結果に基づき,球面踵部および膝を導入したより人に近い3次元2足受動歩行機の実現を目指すことである.受動歩行は,人などの2足歩行生物の歩行の核をなし,その解析を行うことは興味深い.それだけでなく,さまざまな2足歩行機を設計製作する上で,2足歩行を実現しやすい歩行機である受動歩行機を実現することは,2足歩行機を実現するための重要な設計指針となる. そこで具体的に,まず初年度に引き続き,円弧踵部と扁平足を持つ受動歩行の安定解析をすすめ,2次元歩行機の設計製作を行うことで球面踵部の効果について検証する.また,3次元モデルを構築し,数値解析を中心とした歩行の安定解析を行う. これと同時に,初年度に得られた,膝と球面踵部のない歩行機の実験データに基づき,膝関節を持つ受動歩行機を設計製作し,受動歩行を実現する.さらに,得られた歩行機に,計測機器を導入し,歩行解析を行う. 最終的に,得られた結果を統合することで球面踵部を導入した3次元2足受動歩行機を実現するとともに,歩行の解析を行うことで受動歩行のメカニズムを明らかにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は,新たな歩行機の設計製作に必要な物品費として30万円を計上する.また,初年度に得られた結果を発表するために,国内でシステム制御情報学会研究発表会(京都),日本機械学会ロボティクスメカトロニクス講演会(浜松)および国外におけるIMEKO world congress(釜山)に参加する予定であるため,旅費として30万円を計上した.また,資料整理などのために人件費・謝金を10万円,成果報告としての各学会における参加費,掲載費および論文掲載費としてその他費目を20万円計上している.初年度残金(2万円弱)は物品費として使用する.
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