2011 Fiscal Year Research-status Report
高効率電力変換効率と低コストを両立する次世代電力増幅器の基礎理論の確立とその応用
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23760253
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
関屋 大雄 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 准教授 (20334203)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 電力増幅器 / 低コスト / 無線通信用増幅器 / RF電源回路 / ランプバラスト / 非線形回路解析 / 国際情報交流 米国オハイオ州 |
Research Abstract |
電力増幅器では、スイッチ素子における電力損失がエネルギ損失の主要因となる。そのため、スイッチに生じる電力損失の低減が、電力増幅器の電力変換効率の向上に直結する。現在実用化されている中で、最もスイッチング損失を低減する技術が、E級スイッチングである。このスイッチング技術を用いたE級増幅器は、スイッチがオンに切り替わる際に電流・電圧が連続的に変化するため、電力損失、およびノイズの発生を極めて低く抑えることができる。しかし、スイッチがオンからオフに切り替わるとき、電流にジャンプが生じる。このとき、電流には降下時間が存在するため、スイッチ電圧と電流が同時に発生することになり、電力損失が生じる。この影響を抑えるためには、高速なスイッチ素子を使わなければならず、それが電力増幅器のコストの削減、電力変換効率の更なる向上へのボトルネックとなっている。本研究では、電力変換効率の向上とコストの削減を両立する次世代電力増幅器の研究開発を行う。現在の電力増幅器はスイッチ素子における電圧・電流のジャンプに起因する電力損失が発生する。また、その影響を抑えるために、高速なスイッチ素子を用いる必要がありコストの増大につながっていた。本研究では、スイッチ素子における電圧・電流がともに連続波形となるスイッチング技術を確立する。そのための基礎理論を申請者の持つ設計技術と非線形解析理論を融合させることにより構築する。さらに、構築した理論に基づき、無線通信用増幅器、RF電源回路、ランプバラストへのアプリケーションを意識した電力増幅器の設計を行う。これらの設計を通じ、電流・電圧波形を連続にすることに加え、アプリケーションに応じた性能改善のための役割を注入電流に付加できることを示す。提案する増幅器は性能、コストの両面において従来の技術を凌駕するのみでなく、各アプリケーションにおいてブレークスルーを創出する可能性を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度はスイッチ素子の電圧・電流が連続となる次世代電力増幅器について、理論的な側面からその特性を明らかにし、様々なアプリケーションに対応できるように準備することが主要課題であった。 まず、注入電流にスイッチ素子の電流を連続とするために要求される条件を理論的に導出した。さらに、低電力、高電力変換効率などの条件をコスト関数として表現し、非線形回路理論を応用することにより、注入波形に求められる条件を導出できた。非線形回路理論をパワーエレクトロニクスの問題解法に適用する研究手法は申請者独特の着眼である。次に上記フェーズで導出した注入電流の条件を満足する注入回路の回路構成を検討し、その設計法を確立した。申請者が発明した数値設計アルゴリズムを適用することにより、複数の拘束条件を同時に満足する設計値を求められた。さらに広範囲のパラメータ領域における設計曲線を作成し、様々なアプリケーションに対応するための基礎データとして整理することも行った。さらに、スイッチ素子の寄生容量、寄生インダクタが回路動作に及ぼす影響を解析的に明らかにした。さらにこれらの影響を組み込んだ回路設計手法を確立できた。増幅器の特性はスイッチ素子の特性に大きく依存する。近年、化合物デバイスが登場し、これらを電力増幅器に用いることで、革新的な性能改善が図られる可能性がある。しかし、デバイスによって寄生素子に異なる特徴があるため、これらが増幅器の動作に与える影響を明らかにできたことは大きな意味を持つ。 ここまでが当初の研究計画であったが、その上で、次年度予定のランプバラストを意識した回路設計の試作を行った。そのために、増幅器にフィードバックネットワークを導入し、自励振動を可能とする回路構成を提案した。さらに、非線形回路理論の安定解析を導入し、自励発振器の安定性を保証した上で増幅器を設計する技術を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降は提案する電力増幅器を2種類のアプリケーション向けに設計する。前年度確立した理論および導出した設計曲線を用いて設計を進めることができる。本フェーズは、構築した理論の妥当性、有効性を例証する側面も持つ。さらに, アプリケーションに応じて注入電流に異なる付加価値を持たせることを提案する。本フェーズでは増幅器が各アプリケーションに与えるインパクトを明らかにすることが主目的であり、課題の設計仕様は現有の実験装置のスペックを考慮したものとなっている。具体的には1.100 MHz, 30 dBm(1W) 出力の次世代通信用増幅器の開発、2.30 MHz, 1kW出力のRF電源回路の開発の開発を行う。 通信用増幅器では、EERと呼ばれる線形化技術を適用することにより、広帯域な線形増幅器を開発する。ここで, 提案する増幅器において 注入電流の最適化により出力フィルタの共振周波数を搬送波周波数と同一にすることを提案する。これが実現されると、E級増幅器などで問題となっているEER適用時のスプリアス発生を防ぐことができる。これは、スプリアス除去のための回路が不必要となることを意味し、結果的にシステム規模の縮小化につながる。 さらに、RF電源アプリケーションを意識した高出力増幅器の設計を行う. RF電源回路は半導体製造装置や、MRIなどの医療機器に用いられ、数メガヘルツから数百メガヘルツの高周波電力を発生させるための装置である。高出力電力が設計仕様の特徴であり、インタリーブ技術やプッシュプル技術など高出力化のための回路構成を提案する。さらに, 注入電流に高出力化のための役割を持たせる。ここで, 前年度の結果を用いながら化合物デバイスと開発するスイッチング技術を組み合わせることにより、革新的な電力変換効率を達成できる可能性がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、具体的な回路開発が主な研究課題となるため、主に、回路素子などの実験消耗品に使用する計画である。また、実験仕様において、直流電源装置を増強する必要があり、開発状況に応じて購入することになる。また、回路開発期間の短縮を目的として、回路実験補助に関する謝金を積極的に導入する。さらに、前年度の研究成果公表のための旅費、論文誌投稿料などにも適宜使用する。旅費に関しては、現在、国際会議に1回出席、国内の研究会等に2回出席する予定である。
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Research Products
(17 results)