2011 Fiscal Year Research-status Report
磁壁移動を考慮した積層鉄芯の異常渦電流損のモデリング手法の開発
Project/Area Number |
23760264
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
高 炎輝 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40586286)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 電気機器工学 / シミュレーション工学 / 積層鉄芯 / 異常渦電流 / 磁区 / 鉄損 |
Research Abstract |
本研究では,高効率な電気機器の開発・設計に用いられる磁界解析の損失計算の高度化・高精度化を図るため,電気機器をインバータ電源下で用いた場合の損失の増加要因の一つである磁壁移動によって生じる異常渦電流損に関して,従来の数値的なモデリング方法では無く,磁壁移動を考慮した物理的なモデリング手法を開発する.そして,磁区構造が異なる各種電磁鋼板を用いて,開発したモデリング手法の妥当性を検討し,電源に高調波成分が含まれる場合の鉄損解析法を確立する.さらに,開発したモデリング手法をインバータ電源下で駆動するリアクトルに適用し,その妥当性と有用性を示す. 本年度は,表皮効果を無視した一次元磁区モデル(Pry and Bean model)と表皮効果を考慮した一次元有限要素モデルによる二種類の鉄損のモデリング方法を開発するとともに,無方向性電磁鋼板と方向性電磁鋼板の材料,磁束密度,および周波数の各条件を変更した場合の最適なモデリング方法について実測値(カタログ値)と比較することにより検討した.その結果,磁区の大きさが厚みに対して小さい無方向性電磁鋼板では,表皮効果を考慮し,磁区の大きさに関係する渦電流損の修正係数は,磁束密度と周波数には関係なく,材料毎に決定される一定値とすればよいことがわかった.また,磁区の大きさが厚みに対して大きい方向性電磁鋼板では,表皮効果を無視し,修正係数は,磁束密度には関係しないが,材料と周波数で変化させる必要があることが明らかになった.さらに,これらのモデリング方法を各種電磁鋼板に適用し,磁束密度と周波数を変更した鉄損の計算値は,鉄損の実測値(カタログデータ)をほぼ再現できることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画は,磁壁移動を考慮した異常渦電流損の物理的なモデリング方法の開発と単板磁気試験器による各種電磁鋼板の鉄損特性の測定を行うことであった. 異常渦電流損の物理的なモデリング方法の開発に関しては,当初,磁区構造を簡易的に考慮する一次元モデルと直接考慮する二次元モデルを開発する予定になっていたが,一次元モデルに関しては表皮効果を考慮したモデルと無視したモデルが開発できたが,二次元モデルに関しては表皮効果を無視したモデルしか開発できなかった.また,本研究の方向性を決定するため,次年度に予定していた各種材料,磁束密度,および周波数に対する表皮効果の考慮の有無など最適なモデリング方法を早急に明らかにする必要が生じたため,単板磁気試験器による各種電磁鋼板の鉄損特性の測定に関しては,カタログデータで代用して,次年度行う予定であった最適なモデリング方法を本年度明らかにした. 従って,おおむね順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が研究最終年度であるため,本年度完成できなかった表皮効果を考慮した二次元磁区モデルを完成させるとともに,本モデリング方法を均質化手法により積層構造を考慮した積層鉄芯の損失解析法に導入し,実器の損失解析を行うことにより,本研究の有用性を明らかにする.1.表皮効果を考慮した二次元磁区モデルによる異常渦電流損のモデリング方法の開発:表皮効果を考慮した二次元磁区モデルを用いた異常渦電流のモデリング手法を開発し,表皮効果の考慮が必要な無方向性電磁鋼板の異常渦電流損のモデリング方法の精度を向上させる.2.単板磁気試験器による各種電磁鋼板の鉄損特性の測定:本年度行う予定になっていた単板磁気試験器を製作し,各種材料の励磁条件を変更した場合の鉄損特性を測定し,モデリング方法の妥当性を検証する.3.異常渦電流損を考慮した積層鉄芯の損失解析法の開発:上記で開発した二次元磁区モデルを用いた異常渦電流損のモデリング手法を,均質化手法により積層構造を考慮した積層鉄芯の損失解析法に導入することにより,異常渦電流損まで考慮できる積層鉄芯の損失解析法を開発する. 4.インバータ電源用リアクトルの損失解析:インバータ電源下で用いられる実器のリアクトルを用いて,上記で開発した損失解析法の妥当性を実測値と比較して検証するとともに,従来の異常渦電流損のモデリング手法である導電率を大きくする方法や近似式を用いる方法などの数値的なモデリング手法と比較することにより,本研究で開発された物理的モデリング手法の有用性を示す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.物品費(1,077千円):単板磁気試験器を製作するため,その材料費と励磁用として精密電力増幅器(NF・4505,@934,500×1台)を予定している.2.旅費(800千円):成果発表として,海外旅費2件(Intermag 2012, MMM/Intermag 2013),国内旅費2件(CEFC 2012, 電気学会研究会)を予定している.3.人件費・謝金(100千円):大学院生による解析・実験補助として謝金を予定している.
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Research Products
(3 results)