2012 Fiscal Year Research-status Report
伝送周波数無変換を特徴とする高効率で安全な深部癌温熱治療用電力伝送システムの研究
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23760269
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
柴 建次 東京理科大学, 基礎工学部, 准教授 (10343112)
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Keywords | ハイパーサーミア / 癌 / 電磁界 / 絶縁 / 電力伝送 / ワイヤレス電力伝送 |
Research Abstract |
本年度の成果としては,主として,1.最適な周波数および出力電力の検討(熱伝導解析),2.経皮電力伝送と組み合わせた実験の検討を行った. 1においては,加温効率,加温ムラ,他の臓器への影響を考慮し,1.5M-3.4MHzが最適と判断した.出力電力については,電磁界解析によるSARの結果からは 電力:2Wで十分な加熱効果が得られる結果となったが,熱伝導解析を行ったところ,膵臓の加温が不足しており,さらに高い電圧を印加する必要があることがわかってきた.原因は,膵臓の血流による放熱効果が大きいことであるが,放熱のパラメータ設定が大きすぎる可能性もあるため,引き続き検討する予定である(膵臓は,熱がこもらない臓器と一般的にいわれており,正しく解析できている可能性も大きい). 2については,NaCl水溶液を用いた場合,アルギン酸溶液を用いた場合,寒天を用いた場合の3種類の円柱模擬人体を試作し,円柱の外に巻いた体外コイルと,模擬人体の内部にいれた直径16cmの中空コイルを用いて,電力伝送+加熱実験を行った.体外コイル巻き数は25回巻きに固定し,体内コイルを3回巻き,5回巻きの2種類について検討した.その結果,体内コイル5回巻きにおいて,膵臓のみを7℃程度,加温することができた.経皮エネルギー伝送によって,他の臓器が加温されることは無いことを証明することができた.また,TLM法を用いた電磁界解析によって,実測と同じモデルを作り,加温効果を調べたところ,実測と同様,経皮エネルギー伝送によって,他の臓器が加温されることは無く,膵臓のみを局所的に加温可能であった.これらの成果は,国際ハイパーサーミア学会大会で発表を行った. さらに,体内の温度情報を体外に情報伝送するシステムについても,実機を用いて基礎的実験を行い,容量結合方式を用いて温度情報をリアルタイムに体外に伝送できることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年目の項目にも一部取りかかることができたため,おおむね順調と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は.当初の計画通り,負荷整合による回路系と癌組織のインピーダンスマッチングと,癌組織の温度制御システムの設計開発を中心に行うとともに,1,2年目で新たに課題となった内容を検討する.その中でも,特に,埋込電極については,実用化を考えると課題も多く,手術時の埋込のしやすさなどの考慮にかけるという意見を多くいただいた.これを考慮して,高濃度のNaCl水溶液などを用いて,袋状の電極を作ることができないか,2,3年目で追加で検討を行う.また,絶縁電極の種類,熱伝導解析でこのされた課題についても,2,3年目で検討する.サーモグラフィーによる熱分布測定は,模擬生体の費用が多くかかる見込みのため,予算と照らし合わせた上で,購入するか,レンタルを行うか,検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年の課題としては,主として,負荷整合による回路系と癌組織のインピーダンスマッチングと,癌組織の温度制御システムの設計開発の2つがある. 深部癌組織の温度を効率良く上げるためには,出来る限り大きな電力を癌組織まで伝送する必要があり,インピーダンスマッチング(負荷整合)が重要となる.癌組織や正常な生体組織は,抵抗とコンデンサの並列回路と見なすことができ,トランスは,漏れインダクタンスと巻き線抵抗が分布している.ここでは,調節用のリアクタンスを体外の回路に挿入できるようにし,負荷整合を取ることで高出力化を測る. また, 癌組織の温度が43℃に達していることを検出するため,温度測定と安定化制御が必要となる.そのため,無線で体内の温度情報を外に出す装置と,その情報を用いて制御する仕組みが必要になる.2年目の成果により,無線で体内の温度情報を外に出す装置については,容量結合型情報伝送システムを試作し,体内深部から体外への温度情報伝送が可能であることがわかった.しかしながら,寸法が大きい,電力が別バッテリで動作する,温度制御まではできていないという問題がある.そのため,これらを解決し,経皮電力伝送の電力を体外から制御する実験を行う.電気定数と形状を等価とした模擬人体を用いて検証実験を行う.
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Research Products
(7 results)