2011 Fiscal Year Research-status Report
大気圧空気や酸素中で空間一様に発光するバリア放電を用いたオゾン発生装置の効率向上
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23760270
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
大澤 直樹 金沢工業大学, 工学部, 講師 (40454227)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | オゾン生成 / 誘電体バリア放電 / 大気圧タウンゼント放電 / オゾン発生効率 / 純酸素 / 乾燥空気 / 換算電界 / 放電維持電圧 |
Research Abstract |
本研究の目的は,空間一様に発光するバリア放電(均一バリア放電と略する)を用いたオゾン発生器の効率向上法の解明である。均一バリア放電をオゾン生成に用いると,投入エネルギーを多くし高濃度のオゾンを発生させてもオゾン発生効率がほとんど低下しないが,発生効率が従来法(空気原料の場合約50g/kWh)の約半分になる課題がある。平成23年度は,オゾン発生と消滅の放電化学反応プロセスに着目して,オゾン発生効率が従来法よりも低くなった原因の解明に注力した。 原料ガスに空気を用いると,原料ガス中の窒素分子が放電内の電子と衝突して窒素原子に解離する。窒素原子は放電でできた酸素原子と結合し窒素酸化物になる。この窒素酸化物は生成されたオゾンやオゾンの生成に必要な酸素原子を消滅させ効率の低下を招く。本実験では,放電でできた窒素酸化物がオゾン生成効率低下の原因ではないかと考え,窒素酸化物の発生しない純酸素を原料ガスに使用してオゾン発生実験を行った。その結果,従来のバリア放電ではオゾン生成効率は50g/kWhから250g/kWhに向上したが,均一バリア放電ではオゾン生成効率はほとんど向上しなかった。このことから,窒素酸化物がオゾン生成効率低下の原因では無いことを明らかにできた。次に,酸素原子の発生に関係する電子のエネルギーを調べた。均一バリア放電の電子エネルギーは約1.5eVであり,従来のバリア放電(1-10eV)よりも低いことがわかった。そこで,放電ギャップを2.0mmから0.7mmに短くし均一バリア放電の電子エネルギーを高くしたときのオゾン発生効率を調べた。その結果,オゾン発生効率を25g/kWhから約50g/kWhに向上できた。以上のことから,オゾン生成効率低下の原因は,電子のエネルギーが低く酸素原子をあまり生成できなかったためであることを明らかにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は,オゾン発生と消滅の放電化学反応プロセスに着目して,オゾン発生効率が従来法よりも低くなった原因を解明することを目的に研究を進めた。オゾン発生器の原料ガスを空気から酸素に変え,窒素酸化物の発生しない条件で実験を行った結果,従来のバリア放電ではオゾン生成効率が50g/kWhから250g/kWhに向上したが,空間一様に発光するバリア放電ではオゾン生成効率がほとんど向上しなかった。このことから,オゾン発生効率が低くなった原因は放電でできた窒素酸化物ではないことを明らかにできた。均一バリア放電では,電子衝突による酸素分子の励起と解離反応が起きにくくなっていると考えられたので,電子のエネルギーを放電維持電圧,ギャップ長,平均自由行程から計算した。その結果,従来のバリア放電の電子エネルギーは1~10eVであるのに対して,均一バリア放電の電子エネルギーは約1.5eVと低いことがわかった。次に,放電ギャップ長を短くして均一バリア放電の電子エネルギーを高くした実験では,オゾン生成効率を25g/kWhから50g/kWhに向上できた。以上のことから,均一バリア放電では電子エネルギーが低く酸素分子の励起や解離を十分に起こすことができなかったため,効率が低下したということを明らかにできた。以上のことから,本研究は,当初の計画以上に進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,均一バリア放電を用いたオゾン発生装置に既知のオゾン発生効率向上法を適用したときの効果を明らかにする。オゾン発生効率を高めるためには,(1)放電による酸素原子の発生効率向上,(2)放電でできた酸素原子と酸素分子の反応効率の向上,ならびに,(3)オゾンの熱分解の抑制がある。このうち,放電による酸素原子の発生効率の向上については,平成23年度の研究で明らかにできたので,平成24年度は,放電でできた酸素原子と酸素分子の反応効率の向上と,オゾンの熱分解の影響について検討する。 文献によると,ガス圧力を高くして放電ギャップの長さを短くすると,放電空間の低温高圧につながり,酸素原子と酸素分子の反応効率が向上するとされている。ここでは,均一バリア放電を用いたオゾン発生装置において,放電空間のガス圧力を変えたときのオゾン発生効率を明らかにする。また,バリア放電装置の誘電体や電極を冷却したときのオゾン発生効率を明らかにする。 これらの実験から得られた結果を取りまとめ,国内外の学会で発表する。また,実績報告書を作成し提出する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
均一バリア放電を用いたオゾン発生装置の効率向上方法を研究ため多くのバリア放電装置やオゾン発生器を設計製作し実験する。そのため,圧力計,誘電体材料,配線材料,配管材料,電極材料,原料ガス(酸素)などの消耗品費として45万円使用する予定である。 電気学会主催の基礎・材料・共通部門大会や研究会に参加し,これまでに得られた研究成果を社会や国民に配信する計画である。そのための国内旅費として15万円使用する予定である。 フランスで開催される第8回非熱平衡プラズマに関する国際シンポジウム(ISNTP-8)やポーランドで開催される第13回高気圧低温プラズマに関する国際シンポジウム(HAKONE-XIII)に参加し,これまでに得られた研究成果を国民や社会に配信する計画である。ISNTP-8については,アブストラクト審査を通過し現在フルペーパーを執筆中である。また,HAKONE-XIIIについては,アブストラクトを投稿し審査中である。これらの学会参加費として10万円使用する計画である。
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