2011 Fiscal Year Research-status Report
窒化物半導体への希土類元素サイトセレクティブドーピング技術の開発
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23760281
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
関口 寛人 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00580599)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 希土類添加半導体 / 窒化物半導体 / ユーロピウム |
Research Abstract |
希土類(Eu)添加窒化物半導体は発光線幅が狭く発光効率が高いため、高効率・低消費を実現する発光デバイス材料として魅力的である。しかしながら、結晶中に取り込まれたEuイオンからの発光は周囲の原子配置(サイト)により励起効率・発光効率が異なるために、取り込まれた全てのEu元素が発光に寄与するわけではない。本研究では、高効率発光を実現する特定の発光サイトにEu元素を取り込むための技術開発を行うことを目的とする。 希土類元素半導体における発光サイト制御技術の手段としてこれまでに共添加技術が有効であることが示されてきていたが、Eu添加GaNにおいては何が有効となるのか明らかにされていなかった。我々はMg共添加がEu3+からの発光強度の増大に寄与していることを見出した。詳細な光学特性評価から発光強度の増大の要因を調べたところ、Mg共添加により高効率な発光を実現する発光サイトにEu元素が選択的に取り込まれているためであることを明らかにした。 またEu添加GaNを活性層に用いたLEDを作製し発光特性を評価したところ、素子の明瞭な整流特性が観測された。発光特性を調べたところ、Eu3+起因の非常にシャープな線幅をもった赤色発光が観測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、高効率発光を実現するためにEu添加GaNにおいて発光サイト制御を実現するための基礎技術の開発を行うことを目的としている。これまでの研究において、成長モードが結晶中へのEu元素の取り込みに影響を与えることを明らかにしていたが、結晶成長の困難さから顕著な発光強度の改善には至っていなかった。本研究において、p型GaNの成長条件の模索の過程において、Mg共添加がEu添加GaNからの発光強度を増大させる効果があることを見出した。詳細な光学特性評価からMg共添加が発光サイト制御に寄与しており、その結果として発光強度の増大に強く寄与していることを明らかにした。まさにこれが当初計画していた発光サイト制御を実現するためのキーテクノロジーであり、本研究において達成すべき基盤技術であると言える。但し、現時点における発光特性はMg添加量に対してのみの1方向からの検討に過ぎないため、希土類添加半導体を用いた高性能発光デバイスを実現するためには、Eu濃度や成長温度、供給量比などの最適化を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究成果により、本研究の目的である発光サイト制御への大きな足がかりを作ることに成功した。平成24年度においては前年度に開発したMg共添加技術を中心として、研究を進める。一般に発光強度のEu濃度依存性は濃度消光があるために、最適なEu濃度が存在する。しかしながら、Mg添加した状態ではその最適点は異なると考えられるため、成長温度やV/III比などの最適化を進めながら更なる高効率化を目指していく。またデバイス化を考えた際には、光励起下での最適点とは異なってくる可能性もあるため、その要因を明らかにしつつ、Mg添加技術を利用したデバイスの高性能化も同時に進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究は結晶成長が中心となるため、これに必要な基板(サファイア基板上GaNテンプレート)や原料(Ga、Al、Eu)、薬品などの消耗品の購入に加え、Eu濃度を調べるための外部委託によるSIMS分析等に使用する予定である。また昨年度の研究成果を発表するための国内外旅費や論文出版費に当てる予定である。
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