2012 Fiscal Year Research-status Report
グラフェン内テラヘルツプラズモンの理論解析とそのテラヘルツ波素子への応用
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23760300
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 昭 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (70510410)
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Keywords | グラフェン / テラヘルツ / プラズモン |
Research Abstract |
本年度は、初年度に構築した理論解析環境を用いてグラフェン内プラズモンの物性を明らかにするとともに、理論解析環境をさらに発展させた。具体的には、以下の研究を実施した。 1.ゲート電極をグラフェンチャネルの直上に周期的に配した、一重格子ゲート構造における周波数のゲート電圧による変調性の解析を行なった。この構造においては、ゲート領域プラズモン・非ゲート領域プラズモンの結合の強弱によってプラズモン周波数およびゲート電圧変調性が決定されることを明らかにした。 2.短距離点欠陥散乱および長距離不均一性散乱によるプラズモン減衰の解析を行なった。点欠陥密度が10の12乗/cm2程度、不均一性の相関長が100nm以上である高品質なグラフェンであれば、減衰レートが10の11乗/sオーダーに抑えられることを明らかにした。 3.ソース・ドレインコンタクトを有するトランジスタ構造において、プラズモンのエネルギーがコンタクトへリークするためにプラズモン減衰が起こることを明らかにした。この機構による減衰レートはグラフェンにおけるキャリアの速度vFをチャネル長で割ったものに比例することを明らかにした。 4.電子・ホール摩擦によるプラズモン減衰を考慮するため、新たにホール伝導および電子・ホール摩擦の散乱積分の近似的評価式をシミュレータに組み込んだ。この機構による減衰は音響フォノン散乱等による減衰よりもはるかに大きいため、一重格子ゲート構造でゲート領域は電子のみが存在するようにゲート電圧をかけ、非ゲート領域では電子・ホールが同数程度存在する状況にすることで、ゲート領域のみにプラズモンが励起されることが期待できる。この現象は不安定性の発現に利用できる可能性がある。 5.化合物半導体の非対称二重格子ゲート構造二次元電子ガスにおいて、電流注入によるプラズモン不安定性を示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ソース・ドレインコンタクトを有する単ゲートトランジスタ構造においてプラズモンの減衰が存在することが明らかになったため、計画にあった同構造でプラズモン不安定性を発現させることが困難となった。そのため、格子ゲート構造における不安定性を解析するモデルを新しくシミュレータに取り入れる必要性が生じ、プラズモン不安定性の解析にはまだ至っていない。 また、電子・ホール摩擦を活用した格子ゲート構造におけるプラズモンのゲート領域への閉じ込めを解析するため、当初計画になかったホール伝導をシミュレータに取り入れる必要が生じた。このため、本来の計画に遅延が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は格子ゲート構造におけるプラズモン不安定性の解析モデルを取り入れたシミュレータを完成させ、巨大プラズモン不安定性の解明に焦点を当てて研究を遂行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度予算は主に学会での研究成果発表、学術論文誌への投稿に使用する。
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