2012 Fiscal Year Research-status Report
低エミッタンス・短パルス半導体フォトカソードの開発
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23760310
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
金 秀光 名古屋大学, 高等研究院, 特任助教 (20594055)
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Keywords | 半導体フォトカソード / 短パルス / 高量子効率 / 内部電界 |
Research Abstract |
申請者は、エネルギー回収型リニアック(ERL)用の低エミッタンス・短パルス・高量子効率の半導体フォトカソードの開発を目的にした。短パルスの実現には、電子の速い拡散速度と電子を効率的に真空に取り出すことが必須である。申請者は、半導体超高速デバイスと半導体発光デバイス分野でのアイディアを半導体フォトカソードに生かして、低エミッタンス・短パルス・高量子効率半導体フォトカソードの実現を目指した。 短パルスと高量子効率を実現するために、申請者はフォトカソードに内部電界を印加し、励起電子の移動速度を向上することを試みた。試料はAlGaAs材料を導入し、表面に向かってAl組成を0.2~0までに小さくすることで、400 kV/mの内部電界が生じさせた。 その結果、600 nmの厚さにおいて、内部電界を印加することで、電子ビームの応答性は、35 psより20 ps までに減少することに成功した。また、内部電界は電子を表面に向かって移動させるため、量子効率の向上にも至った。523 nm励起光での量子効率は、内部電界を印加した試料では13%と高く、これは内部電界ない試料の8-9%より、1.5倍の向上である。 我々は、内部電界が電子の速い移動に有効であることを証明した。これは半導体フォトカソード領域では初めである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代放射光源として、ERLの研究開発が世界数カ国で競争的に進められている。本計画では10 mAの平均電流と20ps以下の短パルスが必要であり、大電流を安定に長時間提供するためには、量子効率の向上が必須である。内部電界を導入したフォトカソードの作製は、この分野において初めての試みであり、パルスの短縮と量子効率の向上に有効であることを見事に確認した。 しかし、今問題になっているのは、得られた電界効果が(240 kV/m)であり、予測値(400 kV/m)より小さいことである。GaInAs系のトランジスタの論文によると、電界が大きくなるとドリップ速度に限界が生じる。われわれの場合、試料界面での電界が不均一であり、ある所では大きすぎます。その影響で電界の効果が小さくなったという理解できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ERL用の電子ビームは、100 mAの大電流が必須となる。フォトカソードの量子効率が1%の場合、100 mAの電流値を得るためには、10 W以上の励起用レーザー光が必要になる。しかし、10 W級のレーザー光はフォトカソードを加熱、破壊する原因になる。大電流を得るためには、フォトカソードの量子効率を増加して、レーザー光のパーワを低減することと、加熱問題を回避できるフォトカソードの作製することが必須である。 解決すべき点: ① NEA半導体フォトカソードでは、励起光により電子を伝導帯までに励起し、その後、励起電子は表面へ拡散し、NEA表面を介して真空に取り出す。電子の励起過程、拡散過程と取出過程に注目して量子効率に関わる要因を明らかにする。② 10 ps前後のパルス幅で、さらに10 W級の出力が安定な光源としては、現在は波長530 nmのレーザーしかない。530 nmのレーザー光の吸収が起きない基板を用いて、加熱問題を回避することが不可欠である。 裏面照射型フォトカソードでは、励起光をフォトカソードの裏面から収束して照射するために、励起光を吸収しない基板を用いる。励起光を吸収しない基板はまたフォトカソードの加熱問題を避けることになる。本研究で設計・開発した内部電界を導入したフォトカソードを透明な基盤上に作製し、高量子効率かつ加熱を回避できるフォトカソードを開発する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究で問題になっているのは、得られた電界効果が、予測値より小さいことであり、これは部分的に電界の値がが大きすぎることだと考えられる。 今年度は、内部電界を均一に導入したフォトカソードを作製し、量子効率・パルス測定を行う予定である。
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