2011 Fiscal Year Research-status Report
原子間力顕微鏡を用いた酸化物ReRAMにおける抵抗変化機構の解明
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23760313
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
木下 健太郎 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60418118)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 国際情報交流 |
Research Abstract |
電極/金属酸化物(=メモリ層)/電極なる構造をとる抵抗変化メモリにおいて、メモリ層に高温超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8+x (Bi-2212)単結晶を用いることで結晶粒界や基板ストレスによる物性測定への影響を回避し、更に、Bi-2212の持つ酸化度に敏感な超伝導特性 (超伝導臨界温度Tc及び常伝導状態の抵抗率), 大きな抵抗異方性及び大きな酸素拡散係数といった特徴を利用することで、主に以下の成果を得た。・酸化のギブズエネルギが低いAlを上部電極として堆積させ、Bi-2212から酸素を奪うことによってメモリ効果が発現することを確認した。これは金属酸化物に対して酸素枯渇層を導入し、電界による酸素イオンの移動によって枯渇層の修復と生成を制御することがメモリ効果の起源であることを示すだけでなく、メモリ形成の基本技術に繋がり得る。・Tcとメモリ特性の相関を調査し、結晶の酸化度の低下と共にメモリ特性(特に高抵抗値と低抵抗値の比)が促進されることを示した。・上部電極に酸化のギブズエネルギが高いPtを用いても、水素アニール処理することでメモリ効果が発現することを示した。特に、本メモリ効果が酸素ではなく水素イオンの移動に起因することが確認され、メモリ効果が広義の酸化還元で生じることを示しただけでなく、移動イオン種の特徴を考慮した特性制御の可能性を示した。水素移動型メモリでは水素イオンの質量及びイオン半径より酸素移動型に比べて高速化が期待される。・Bi-2212の大きな抵抗異方性を利用して抵抗変化が生じる電極界面を特定し、動作界面が上下電極の何れであるかをモニターしながら電気特性を評価することが可能となった。故に、Bi-2212単結晶がメモリ効果の起源を調査するためのモデル系となり得ることを示した。以上、Bi-2212の特徴を活かし、メモリ効果の起源に関する新たな知見と基本技術が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は(1)単結晶育成、(2)サンドイッチ構造のメモリ特性評価、(3)AFMによる抵抗書き込み、(4)AFM抵抗書き込み領域の物性評価、(5)AFM抵抗書き込み領域の超伝導特性評価、に分けて計画を進めてきた。(1)ノウハウを生かしてBi-2212単結晶を育成し、Tc計測に必要な4端子電極を形成するのに十分な数mm角サイズの単結晶を得た。(2)酸化のギブズエネルギに着目して電極材料を系統的に変化させ、ギブズエネルギの低いAlとBi-2212界面にてメモリ効果が生じることを確認した。また、ギブズエネルギが高いPtを堆積した後、水素アニールした試料においてもメモリ効果が発現することを確認し、両構造の電気特性を詳細に評価した。水素アニール試料にて水素イオンの移動に伴う抵抗変化が確認される等、新たな知見が得られた。(3)-(5)大幅な方針の修正を強いられた。これらの研究項目は、何れもAFMを用いてBi-2212単結晶に直接電圧を印加しながら走査することで、上部電極を堆積させずに広範囲に抵抗変化領域を形成することが前提となっていた。しかし、実際にはAFMによる書き込み条件の如何によらず抵抗の変化は生じなかった。そこで、(2)の結果を利用し、Al/Bi2212或いはPt/Bi2212界面の分析を進めることで、Al堆積或いはPt堆積+水素アニールによりメモリ効果が発現する機構の解明を目指すことにした。現在までにPt/Bi2212構造でPt膜厚20nm以下でもメモリ動作することを確認し、界面のXPS分析を進めている。発現機構だけでなく、スイッチングに伴う電子状態の変化を明らかにするため、電極界面全体でスイッチングを生じさせるための電圧条件や素子構造についても検討を進めている。また、素子構造の工夫によりTcとメモリ効果の関係を調査することが可能となり、酸化度とメモリ効果の関係を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
AFMによるBi-2212単結晶に対する抵抗の直接書き込みの実現が困難であることが判明し、大幅な計画の修正が必要となった。しかし、電極の薄膜化による(i)抵抗変化界面の直接分析及び(ii)素子形状の工夫による超伝導特性とメモリ特性の相関関係の調査が可能となり、「抵抗変化領域の物性解明及びBi-2212単結晶の特徴を活かし、メモリ効果に関する新たな知見を取得することでメモリ機構を解明する」という当初の目的に向けた研究を引き続き推進することが可能となった。更に、研究を進める過程において水素イオン移動型のメモリ効果という基礎、応用の両側面から注目されるべき現象が観測され、新たな研究項目を追加する必要性が生じた。そこで、今後の研究推進の方策として、(1) Pt/Bi-2212構造においてメモリ特性が水素アニール条件に強く依存することから、アニール時の温度や水素濃度がPt近傍におけるBi-2212の電子状態に及ぼす影響を明らかにし、これとメモリ特性との相関を明らかにする。(2) 水素アニールによって発現したメモリ効果が水素移動によって生じることが実験的に示唆されていることから、 Ptの触媒効果と水素イオン移動型メモリ効果の相関を明らかにする必要がある。故に、触媒効果の主要パラメータである温度とメモリ特性の関連の調査を進める。(3) 酸素移動型(Al/Bi-2212)と水素移動型(Pt/Bi-2212)でパルス応答特性を比較し、移動イオン種の違いによる動作特性の差異を明らかにする。平成24年度に行うことが計画されていた研究項目についても予定通り推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する研究費が40万円程度あるのは、電極の堆積に用いるスパッタ装置の老朽化が激しく、故障が頻発しており、急なメンテナンスが必要となる場合に備えるためである。研究費は単結晶試料育成用の坩堝や原材料費、スパッタ装置の修繕等に使用することを予定している。
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Research Products
(12 results)