2011 Fiscal Year Research-status Report
高精度ディジタルフィルタ構造の解析的合成による高性能信号処理システムの開発
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23760322
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
八巻 俊輔 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10534076)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ディジタルフィルタ / 2次モード / L2感度最小実現 / 周波数変換 |
Research Abstract |
本研究では,高精度なディジタルフィルタ構造の解析的合成手法の開発を目的としている.今年度の研究においては,2次モードがすべて等しいディジタルフィルタのクラスを明確化した.具体的には,2次モードがすべて等しいディジタルフィルタの伝達関数の一般式を導出した.2次モードがすべて等しいディジタルフィルタの伝達関数の一般式は,オールパスディジタルフィルタの伝達関数を定数倍して,それに定数を加えるだけの非常に単純な式であることを明らかにした.さらに,それらのディジタルフィルタが1次FIRディジタルフィルタをプロトタイプフィルタとした周波数変換によって得られることを証明した.また,2次モードが等しい2次のディジタルフィルタの伝達関数の一般式の閉じた形の表現を与えた.昨年度までの研究において,本申請者は2次モードがすべて等しいディジタルフィルタに関してはL2感度最小実現を解析的に合成できることを示している.今回新たに導出した伝達関数で記述できるディジタルフィルタには,位相補償や周波数変換などに利用されるオールパスディジタルフィルタや,狭帯域雑音信号の除去などに用いられる帯域阻止形ディジタルフィルタ,狭帯域信号の抽出に用いられる帯域通過形ディジタルフィルタ,周期をもつ雑音とその高調波成分を除去するくし形フィルタなど,ディジタル信号処理において重要な役割を担うさまざまなフィルタが含まれる.これらのディジタルフィルタに関して,L2感度最小実現を解析的に合成できるということは,実用上重要なディジタルフィルタをより高精度な構造で実現することが可能になるということであり,高精度なディジタル信号処理システムの構築に大きく貢献する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究活動において、当該年度中に行う予定の研究内容の大半は達成できており、その成果は学術論文誌に採録されており、国際学会でも次年度に発表することが決定している。また、国内学会でも発表を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた結果をもとにして,「スケーリングを考慮したL2感度最小実現」がリミットサイクルを発生しない構造であることを証明することをめざす.リミットサイクルは,有限語長ディジタルフィルタにおける乗算時の丸めや加算時のオーバーフローなどの非線形性によって生じるものであり,出力信号が発振してしまう現象であるため,発生しないことが望ましい.本申請者のグループは,「スケーリングを考慮しないL2感度最小実現」がリミットサイクルを発生しない構造にできることを過去に証明している.しかし,実際にディジタルフィルタをハードウェア上に実装する際には,内部状態のオーバーフローを抑制するためにL2スケーリング制約を考慮すべきである.本研究では,スケーリングを考慮したL2感度最小実現がリミットサイクルを発生しないフィルタ構造であることを理論的に証明することを目指す.まず,「スケーリングを考慮しないL2感度最小実現」と「スケーリングを考慮したL2感度最小実現」との関係性(どのような座標変換によって結ばれるか)を明らかにする.そして,2次のディジタルフィルタについて,スケーリングを考慮したL2感度最小実現がリミットサイクルを発生しない事を理論的に証明し,その証明を高次のディジタルフィルタへ拡張する.さらに,平成23年度および平成24年度の研究において得られた結果を取りまとめ,係数量子化誤差が小さくかつリミットサイクルを発生しないディジタルフィルタ構造の解析的な合成手法に関する成果の発表を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究は予定通り進めた上で、年度末執行分の会計が済んでいないために生じたものである。
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