2012 Fiscal Year Annual Research Report
高精度ディジタルフィルタ構造の解析的合成による高性能信号処理システムの開発
Project/Area Number |
23760322
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
八巻 俊輔 東北大学, 国際高等研究教育機構, 助教 (10534076)
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Keywords | 状態空間ディジタルフィルタ / L2感度最小実現 / L2スケーリング制約 / リミットサイクル |
Research Abstract |
「スケーリングを考慮したL2感度最小実現」がリミットサイクルを発生しない構造であることの理論的証明に取り組んだ.リミットサイクルは,有限語長ディジタルフィルタにおける乗算時の丸めや加算時のオーバーフローなどの非線形性によって生じるものであり,出力信号が発振してしまう現象であるため,信号処理システムの安定化のためには発生しないことが望ましい.我々のグループは,「スケーリングを考慮しないL2感度最小実現」がリミットサイクルを発生しない構造にできることを過去に理論的に証明している.しかし,実際にディジタルフィルタをハードウェア上に実装する際には,内部状態のオーバーフローを抑制するためにL2スケーリング制約を考慮すべきである.そのため,L2スケーリング制約条件を満たしたL2感度最小実現のリミットサイクルの有無について明らかにすることが重要である.本研究では,スケーリングを考慮した2次のディジタルフィルタのL2感度最小実現がリミットサイクルを発生しないフィルタ構造であることを数値計算により示した.まず,さまざまな極零点配置を与え,それぞれについて2次ディジタルフィルタを設計した.次に,設計した2次ディジタルフィルタに関して,L2スケーリング制約を考慮したL2感度最小実現を合成し,その係数行列がリミットサイクルを発生しないための十分条件を満たすかどうかを数値計算により確かめた.その結果,与えたすべての極零点配置に関して,リミットサイクルを発生しないための十分条件が満たされることが確認された.この結果より,L2スケーリング制約を考慮したL2感度最小実現は一般にリミットサイクルを発生しない構造であることが予想される.本研究成果は,高精度ディジタルフィルタ構造の安定化に非常に有効であり,高性能信号処理システムの開発に大きく貢献するものである.
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Research Products
(19 results)