2011 Fiscal Year Research-status Report
統計的に不正検知可能な情報理論的暗号方式とその応用
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23760330
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
岩本 貢 電気通信大学, 先端領域教育研究センター, 特任助教 (50377016)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 秘密分散法 / 情報理論的暗号 / 不正検知 / 統計的手法 / 暗号プロトコル |
Research Abstract |
今年度は,本研究が対象としている,暗号文の改ざんや成りすましに対する耐性が特に必要となる実例として,情報理論的に安全なfirst-priceオークションに関する検討を行った.このプロトコルでは,複数の入札者が暗号化された入札情報を競売人に送り,競売人が開札を行う.開札を行うまでは全ての入札情報が秘匿されるべきであり,開札後に落札者と落札額が判明した後は,落札額に関する情報が秘匿されることが求められる.このタイプの暗号プロトコルに対しては,どのような安全性を要求すべきかといった基礎的な議論すら存在しないため,我々は秘匿性に関する要求の定式化から考察をスタートした.その結果,安全性の定式化および,プロトコルの提案,安全性証明を与えることに成功した. プロトコルは秘密分散法をベースにする方式であり,我々が考えている不正検知方式を適用できる可能性がある.上記の安全性モデルを考察する上で,入札情報の間に相関が存在すること,および,入札情報が一般には一様分布に従わないことが,自然に要求される仮定となることを指摘した.本研究課題が理論基盤にするIwamoto-Yamamoto-Koga (IKY) による不正検知方式の特徴として,上記のような仮定の下でも最適な暗号化および不正検知が可能であることが明らかになっており,我々の研究する不正検知方式がこのような暗号プロトコルに対して,非常に有効に機能する可能性が示唆された. その他,視覚復号型秘密分散法や,共通鍵暗号方式の基礎概念に関する知見など,情報理論的に安全な暗号理論に関する幾つかの成果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に関する当初の計画では,IKY方式を拡張した安全性概念を考察し,モデル化・実現が可能であるかを検討する予定であったが,今年度は応用例に関する研究が大きな成果となった.研究全体としては実システムへの応用まで考察する予定でいるので(当初の予定では研究の後半であった),本年度の研究が目標からそれたことにはならないが,IKY方式の概念の拡張に関する考察が早急に必要であると考えている.そのため,研究の進め方については応用を視野に置きながら,基礎的な部分に立ち返った検討を進める必要がある. なお,オークションの研究に関していえば,開札後の安全性証明はかなり数学的な技巧を要する証明になっているので,単に既存プロトコルを応用するだけでない,非自明な成果が得られたと考えられる.現在までの成果については国際会議に投稿中であるが,この数学的な証明の直感的な意味を考えることや,提案方式の効率の議論なども早急に結論をまとめたい. 研究予定の順番に変更が生じたものの,応用に関する研究が予定より多くなったため,今後の研究に関する報告性のイメージがつかみやすくなったという予定外のメリットが得られたと考えられる.この知見を有効に活用しつつ,IKY方式の拡張を目指すことが来年度の課題になると考えている. 上記以外に得られた成果も,不正検知の観点からの検討を再度行うことも重要な課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究予定では最初に行う予定であった,モデル化に関する理論検討を進めることが最も重要な課題である.そこでは,今年度に得られたオークションプロトコルなどへの応用を念頭に置いて研究を進めることが可能となっている.今年度に提案・解析を行ったオークションプロトコルについても,より効率的な方式の考案,最適性証明などを行う予定であり,国際会議への投稿や論文作成を適宜行う予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は,情報理論的暗号理論に関する情報収集・対外成果の発表のためにISIT (International symposium on informationtheory)やICITS (International conference on Information Theoretic Security) 等といった,分野最先端の国際会議に参加する予定であり,そのための旅費が本年度の最も主要な支出となる. 実験設備(パソコン等)に関しては,現状で十分であるが,必要や技術の進歩に応じて,ソフトウェア等は適宜導入する予定である.また,書籍等に関しても必要なものを導入する.
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