2011 Fiscal Year Research-status Report
筆記動作を用いた高精度マルチモーダル認証手法の構築
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23760345
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村松 大吾 大阪大学, 産業科学研究所, 特任講師 (00386624)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | バイオメトリクス / 機械学習 / 画像、文章、音声等の認識 / 暗号・認証等 |
Research Abstract |
筆記動作によるマルチモーダル認証手法を構築するためには技術として「オンライン署名認証」,「ペン持ち方認証」及び「Fusion手法」の3つの要素技術が必要となる.また認証手法の有効性を確認するためには,定性的に有効性を示すデータと定量的に有効性を示すデータが必要である.平成23年度はこの中において「ペン持ち方認証」の静的特徴のみを用いた技術開発を主に行うとともに,必要なデータの収集を行った.ペン持ち方認証技術としては,筆記時のペン持ち方から多数の特徴を抽出し,それらの特徴をスコアレベルで統合することで本人と他人を高い精度で判別できる技術を開発するとともに,なりすまし攻撃への耐性も考慮しつつ技術開発を行った.認証精度は30人の静止画データに対し等誤り率で対他人2%,対なりすましデータ4%程度を実現している.データ収集では定性的に有効性を示すデータとして,千人規模のペン持ち方のデータを収集した.このデータは認証率の評価用として利用するのではなく,今後ペン持ち方を分類する際に利用予定であり,このデータにより非常に多くの人物のペン持ち方特徴を用いて,ペン持ち方の個人性を解析できると考えている.また定量的に有効性を示すデータとしては40人から筆記動画データを取得した.このデータではペン持ち方の動的変化とともに,オンライン署名データも取得可能であるため,今後はこのデータを用いてペン持ち方の動的特徴を用いた認証技術開発を行うとともに,オンライン署名認証とのマルチモーダル化の技術開発を行っていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では3年で筆記動作によるマルチモーダル認証手法の構築を目指しており,初年度においては主にペン持ち方の静的特徴を用いた認証技術の開発及び今後の研究用の筆記動作データの収集を行う予定であった.ペン持ち方の静的特徴を用いた認証技術に関しては,当初想定していた精度の技術が開発できており,またなりすましに対する精度の評価も行うことができた.採録の決まった雑誌論文はないものの,23年度の研究成果は既に論文にまとめ投稿予定であるため,全体としては概ね順調であると考えている.またデータに関しては定量的評価用データとして40人からの筆記動作データの取得が完了している.予定では50人程度を目標としていたため,人数の点からは目標に届いていないもののすぐに後れを取り戻せる範囲であると考えている.また,定量的評価用データ以外に定性的評価用データを千人規模で収集できたことは,今後の研究を進めるにあたり非常に有効である.オンライン署名認証とペン持ち方認証のFusion手法については,この2つの認証スコアによるFusion手法の検討は行えていないが,他の認証スコアによるFusion手法の検討により多くの知見,及び技術開発ができている.
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Strategy for Future Research Activity |
23年度までの研究ではペン持ち方の静的特徴に注目して認証技術を開発してきたが,今後はペン持ち方の動的特徴を用いた認証技術を確立するとともに,オンライン署名認証とのFusion手法を検討していく.ペン持ち方の動的特徴を用いた認証技術としては,これまでに構築したペン持ち方認証技術で有効であった特徴の時間変化に注目し,各特徴を時系列データとして用いる認証技術を構築する予定である.また歩容認証で利用されているシルエット変化に伴う特徴などはペン持ち方認証にも利用可能であると考えられるため,それらの技術も利用し,ペン持ち方の動的特徴を用いた認証技術の開発を行っていく.この際,ペン持ち方の画像領域をこれまでの研究知見に基づき分類して用いることも検討する.さらに,異なるアプローチにより複数の技術が構築されるため,複数アルゴリズムの結果を統合することでペン持ち方認証の認証精度を改善していく.ペン持ち方認証とオンライン署名認証の統合手法に関しては,まずはスコアレベルの統合を行うことで,認証精度の改善を目指す.また,ペン持ち方認証に用いられる特徴と,オンライン署名認証で用いられる特徴の間には強い相関がみられることもあるのため,2つの認証技術を別の認証技術としてスコア統合することを考えるだけでなく,特徴の性質を考慮しつつ,より前段階(最終スコア計算前)で統合する方法の検討を行っていく.さらに精度評価においては,なりすましデータの収集も行っていく.データ収集では,筆記動作の動画を被験者(なりすまし者)に提示し,一定時間のなりすまし練習後にデータを取得することで,より高度ななりすましデータを収集予定である.なりすましデータ収集用にロボットを購入予定であったが,人による攻撃の方が重要性が高いと考え,本年度の研究ではロボットによるなりすましを想定しない.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費としては,なりすましデータ収集用のノートパソコンと動画再生が可能なデバイスなどを複数台購入予定である.また研究開発に利用しているマシンの老朽化に伴い,新規にデスクトップパソコンを購入予定である.また実験データ保存用のハードディスクも複数台購入する.旅費としては,国内外学会への成果発表・動向調査のための出張旅費や,協力者のいる成蹊大学・早稲田大学への打ち合わせ出張旅費などを予定している.人件費・謝金は,データ収集の協力者・被験者などへの謝礼,データ処理を行うアルバイト学生への謝礼等である.なりすましデータ収集では,なりすましの練習等が必要となるため,その時間の謝礼も考慮している.その他として,研究に利用するソフトウェアの購入,研究成果の論文別刷代,国内外学会の参加費などを予定している.尚,なりすましデータ収集用にロボットを購入予定であったが,人によるなりすましデータを収集した方がロボットによるなりすましよりも研究の重要性が高いと考え,ロボットは購入しない.
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Research Products
(5 results)