2012 Fiscal Year Research-status Report
均衡モデルに基づく階層型デマンドバスのミクロシミュレーション
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23760356
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
赤嶺 有平 琉球大学, 工学部, 助教 (00433095)
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Keywords | デマンドバス / 交通シミュレーション / 高度交通システム |
Research Abstract |
マルチエージェントシステムをベースとしたミクロ交通シミュレータの性能向上(現況再現性の向上)に関する研究及びデマンドバスモデルの導入に向けてTDM(交通需要マネジメント)のシミュレーション実験を行った. ミクロ交通シミュレーションの精度向上のため,信号を直接モデル化することなく「交差点における平均待ち時間」を新たに提案した.実際の交通においては,交差点は信号機により路線間の接続を制御する事で任意方向への通行を可能としている.本研究では,平均待ち時間を導入する事でサイクル長,オフセット,スプリットなどの一般的な信号制御パラメータを個別に入力することなく高い現況再現性が実現できる事を確認した. 交通利用者の行動の変化を促す事で既存交通の利用効率を高め旅行時間等の短縮を図る政策はTDMと呼ばれ,手段,時間,経路の変更等様々な方策が実施されている.これを広く社会に普及させるためには,合理的な判断基準を利用者に提示する必要があると考え,スマートフォン等のGPS付き通信デバイスにより現況及び過去の旅行時間が正しく推定できる状況化において合理的な出発時間を利用者に提示することで時間的・空間的に交通需要を分散させる手法のシミュレーション実験を行った.その結果,経路のみを変更した場合と比較してより多くの利用者において旅行時間が短縮することが分かった。 また,デマンドバスシミュレータ構築へ向けて,簡易的な運行経路探索アルゴリズムを実装したモデルを交通シミュレータに組み込んだ.交通利用者の手段選択の変化を促すには旅行時間の短縮が重要であるため,より効率的な(利用者の旅行時間が短い)運行経路の探索が重要となる.そのため,デマンドバスの経路探索手法に関する調査を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,100万人規模の中核地方都市圏を対象として,実際の交通需要に基づくデマンドバスを含む交通網の定量的評価を行うための交通シミュレータの開発を目的の一つとしている.実務等でよく行われる静的な分担・配分交通量の推定手法と比較して個々の車両の振舞いをモデル化したミクロ交通シミュレータは,大域シミュレーションの実施例が少ないため,現況再現性の向上を目指してモデルの改良や提案を行っている. 交差点モデルは現況再現性に大きな影響を与えるため適切なモデル化が必要となる.しかしながら,実際の交差点においては信号毎に異なる制御パラメータが設定されておりこれらを全て正確にモデル化するのは困難であると考えられる.そこで,本研究では,信号個別のパラメータを設定することなく高い現況再現性を有する交差点モデルを導入した. また,ミクロシミュレーションは,計算負荷が非常に高いため計算時間についても十分な考慮が必要となる.マルチコアCPUに対する最適化を行ったところ,12コアのシステム(3GHz 6-Core Intel Xeon x 2)において沖縄県中南部(ノード数639,リンク数2006,総トリップ数訳40万)の1日のミクロ交通シミュレーションが数分程度で実施可能となった.前述の交差点モデルは,計算負荷が低く計算時間の短縮にも寄与している. デマンドバスの導入可能性を議論するため,同地域の路線バスを全てデマンドバスに転換した場合の利用人数について考察を行った.現行の路線バスと同程度の走行速度及び利用料金によりドアツードアで移動可能であると想定したシミュレーションでは,遅延時間を数分程度に抑えることができれば多くの利用者がデマンドバスを選択する可能性があることが示唆された
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに研究により,ベースとなるミクロ交通シミュレータによって十分な現況再現性が得られることが確認されている.今後は,計算時間と運行効率のトレードオフを考慮してデマンドバスの運行経路探索アルゴリズムを策定し,デマンドバス導入における自家用車削減の可能性について検証する. マルチモーダルシミュレーションにおける,交通手段選択の現況再現性向上のためランダム効用理論に基づく配分アルゴリズムを実装する.例えば,ロジットモデルが同様の目的で広く利用されている.自家用車の経路配分については,固定的利用者均衡配分においても解の算出仮定における補助解を用いた手法により高い現況再現性が得られることがわかったので,両者を組み合わせた手法を模索する. さらなる高速化のためGPGPUによる実装を検討する.とくにデマンドバスの運行経路問題はNP困難問題であるため,一般的には近似解を採用することになる.より精度の高い近似解を算出するためには並列度を高めた実装が必要になると考えられる. 運行時刻のみをオンデマンド化したゼミデマンド型基幹バスと末端交通を担うフルデマンドバスを組み合わせた階層型デマンドバスについてシミュレーションモデルを構築し,評価実験,沖縄県への導入可能性について議論を行うことが本研究の目標である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
GPGPU導入のためGPU及びホストコンピュータを購入する. 研究成果発表のため旅費(国内1件,海外1件)を支出予定である.
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