2013 Fiscal Year Research-status Report
均衡モデルに基づく階層型デマンドバスのミクロシミュレーション
Project/Area Number |
23760356
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
赤嶺 有平 琉球大学, 工学部, 助教 (00433095)
|
Keywords | デマンドバス / ITS / 交通シミュレーション |
Research Abstract |
平成25年度は,末端交通を担う小型デマンドバスと都市間の移動を担う基幹大型バスを組み合わせた階層型デマンドバスの設計及びシミュレーション実験を行った. 本研究の目的は,中規模都市圏におけるデマンドバスの導入可能性を評価するためのシミュレータの開発である.デマンドバスをシミュレーションにより評価するには,想定される利用者に対する経路計画問題(DARP)を解く必要がある.DARPはNP困難な問題であるため,これまでにさまざまな近似解法が提案されている.Jawらにより提案されたADARTWが計算効率及び解の精度ともに優れていると判断し,同アルゴリズムを採用したデマンドバスモデルを構築した.また,実乗車時間の削減を目的とした階層型デマンドバスの設計及びモデル化し,シミュレーションによる両者の比較実験を行った.シミュレーション実験では,行政による調査データに基づき入力データを作成した.さらに,既存交通網との比較のため現在運行中の路線バスをモデルとした固定路線バスモデルを構築した. シミュレーション実験の結果,市町村毎に若干のばらつきはあるものの,移動コストに関しては概ねADARTWと提案手法でほぼ同等であることが示された.また,両手法ともに固定路線バスモデルに対して旅行時間の点で優れている事が示された.一方,運用コストに関する評価実験として,車両の占有時間(車両を他の路線として再度利用可能となるまでの時間)を評価したところ,提案手法はADARTWモデルに対して半分程度の時間で再利用可能となることが示された.これは,提案手法が,既存手法と同じ旅行時間を提供可能な交通機関でありながら運用コストを半減できる可能性があることを示唆している.また,経路計画の求解に要する計算時間は,ADARTWに対して10分の1以下となる事が示された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,地方中核都市圏を対象として,実際の交通需要に基づきデマンドバスを含む交通網の定量的評価を行うための交通シミュレータの開発及び,都市部の通勤移動を対象にデマンドバスを含む複数の交通手段を階層的に結合した交通システムの提案である. 本研究では,交通シミュレータが算出する定量的評価指標として旅行時間を想定している.これまでの研究で,中規模都市圏の通勤移動を旅客として想定したデマンドバスと基幹バスを結合したあらたな交通システムの開発を行った.提案システムは,郊外の乗客を小型デマンドバスにより集約し,大型車両によって都市部まで輸送する.集約する事で,バスの利用効率が向上する,経路が限定されるため高速道路の利用やバスレーン設定による旅行時間短縮が見込める,などのメリットがある. さらに,提案した新しいデマンドバスシステムモデル,既存デマンドバスをモデル化したADARTWモデル,運行中の路線バスをモデル化した固定路線バスモデルの3モデルについて,実データに基づく交通需要及び交通インフラを用いて旅行時間を算出可能なシミュレータを開発し,階層型デマンドバスの評価を行った.従って,研究目的である「実際の交通需要に基づきデマンドバスを含む交通網の定量的評価を行うための交通シミュレータの開発」について概ね達成できていると考える. また,本研究の成果を,情報処理学会論文誌に投稿中である.
|
Strategy for Future Research Activity |
交通シミュレーションモデルは,その粒度により大別して,マクロシミュレーション及びミクロシミュレーションの2種類がある.マクロシミュレーションは,道路網を重み付き有向グラフとしてモデル化し旅行時間を算出する.渋滞による旅行時間の変化は,交通量に対する関数として表現される.一方,ミクロシミュレーションは,個々の車両の振る舞いをモデル化するものであり,計算時間が大きく実装の難度が高いものの,渋滞が発生する地域の旅行時間に関する現況再現性が高いという特徴がある.本研究で開発した交通シミュレータは,自家用車に関するモデルはミクロシミュレーションモデルとして実装されており現況再現性が非常に高いものの,提案交通システムやデマンドバスモデルは,現在のところマクロシミュレーションモデルとしての実装に留まっているため,今後はミクロシミュレーションモデルの実装を進めていく.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
シミュレーション用コンピュータを購入予定であり,発注手続きを済ませていたが,納入業者の手違いにより年度内の納品が不可能となったため,一旦発注をキャンセルし,本プロジェクトの延長申請を行った.同コンピュータは,H26年度に購入する予定である. H25年度計画により購入予定であったシミュレーション用コンピュータを購入する.
|