2011 Fiscal Year Research-status Report
鉄道における車両・ダイヤ・運転の最適化による統合的省エネルギー化の進展
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23760357
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
宮武 昌史 上智大学, 理工学部, 准教授 (30318216)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 電気鉄道 / エネルギー管理 / 省エネルギー / 運転理論 / 運行計画 |
Research Abstract |
本年度はまず,学会で未発表の「等増分消費エネルギー則」を発表すると同時に,その考え方を,ダイヤ設定上のより複雑な制約条件,例えば他路線との列車間接続からくる複数区間の所要時間の設定などを考慮できるように拡張し,最適解を数値的に得られるようにプログラムを開発した。特に,これまで駅間運転時分と消費エネルギーの関係が陽な関数で記述できることを前提としてきたものが,陰関数表示,あるいは折線近似といったより現実的な関係記述を許容させることができた。その手法の有効性を評価するための最適化シミュレーションの実施のために,解析用ワークステーションを新規購入した。これにより,ダイヤの最適化に関する議論のベースを完成させた。研究者自身が各事業者の詳細なダイヤを手に入れて実例を評価するのは容易ではないが,学会で発表した本理論はその直観的な分かりやすさから鉄道事業者等でも本理論によるダイヤの省エネルギー性を評価しようという試みがなされつつあり,事業者主体でダイヤの省エネルギー性評価が進みつつある。次に,正確な消費エネルギーの評価に向け,電車における電力の消費傾向を知るために,鉄道事業者にヒアリングを行い,変電所の電力特性などのグラフを頂くことができた。これは特に,き電特性も含めたシミュレーション時において大いに参考になるデータである。なお,年度中に欧州,特に教員短期交換制度の協定校であるスペイン・マドリッドのコミーリャス大学に最大2ヶ月滞在し,欧州の情報を収集するとともに,議論を行う予定であったが,逆に先方の若手研究者2名を本学に3ヶ月ずつ招聘することとなり,その際に十分な情報収集や議論が行えると判断し,滞在を中止した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「理論に裏付けされた,鉄道における車両・ダイヤ(運行スケジュール)・運転の最適化による統合的省エネルギー化の方法を明らかとする」という目的に対し,特にこれまで十分な検討がなされていなかったダイヤによる省エネルギー化について,一定の方法論を進展させることができ,統合的省エネルギー化に向けた足並みが揃ったと考えられる。また,本年度の研究実施計画に対しても,詳細を「研究実績の概要」に記述した通り,だいたい計画通りの成果を得ることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も,当初の計画通り研究を遂行する予定である。本年度で構成した基礎理論に基づき、運転面について、設定された駅間の所要時間に対して最適な運転速度パターン(運転曲線)を既に応募者が確立した理論により導き出し、ダイヤと運転の両面からの省エネルギーの定量的可能性を評価する。利用者の効用や運転コストの面からの多目的評価も行う。また、車両面についても、車両性能の設定、および車載または地上電力貯蔵装置の設計も合わせて行い、車両まで最適化を施した場合の統合的省エネルギーの定量的可能性をも評価する。電力貯蔵装置の正確な特性モデル化のための電力測定実験も行う。さらに,これまでごくわずかの研究しかない、正常な列車運行ができなくなった時の対応を検討する。特に、電力不足や変電所の故障で電力供給が限られた場合に、最適化によりどの程度列車の運行を確保できるかを評価する。また、乱れた運行ダイヤを元にもどす運転整理時にも、列車の密度と速度が高くなった所の電力が逼迫するが、信号の特性を考慮しつつ、電力面からのスムーズな回復運転方法を検討する。異常時の運行取扱については、事業者の指令業務担当者等から情報を得る。また、当年度まで積み重ねてきた理論を実際の鉄道システムで実行するための方策も検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は,今年度購入した演算用サーバーを有効活用することとし,新たな設備備品の購入は予定していない。主な使用は,国内外の鉄道エネルギーに関する資料収集と研究成果発表のための国内外旅費,資料整理や専門家へのヒアリング等への謝金等であり,これらは様々な鉄道事業者での個別の取組みに関する情報収集を行うこと,および研究成果を広く公表することから必要不可欠なものである。その他,学会投稿料と,上記演算用サーバーの保守部品や配線用品等の消耗品に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)