2012 Fiscal Year Research-status Report
鉄道における車両・ダイヤ・運転の最適化による統合的省エネルギー化の進展
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23760357
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
宮武 昌史 上智大学, 理工学部, 准教授 (30318216)
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Keywords | 電気鉄道 / エネルギー管理 / 省エネルギー / 運転理論 / 運行計画 / 最適制御 |
Research Abstract |
まず,設定された駅間の所要時間に対して最適な運転速度パターン(運転曲線)を求める手法について,既に応募者が確立している動的計画法をベースとした手法をさらに改良し,運転上目標となる架線柱や信号機毎に制御指令を切り替えることをも可能とする手法に発展させた。これは,手動運転時において,この柱から減速する,などの指示を可能とし,運転のしやすさを考慮することができるようになった。 次に,電力量が大幅に抑制されて正常運転が困難になった場面の対策として,列車の停車パターンを見直すことを検討し,利用者の時間的効用と消費電力量とのトレードオフ関係に着目して,多目的評価によりパレート最適解を得る方法論も確立できた。これにより,従来の電力量削減方法である列車の間引きよりも,各駅停車を減らして通過列車を増やす新しい運転方法の方が,利用者の効用と電力量の面で有利であることを示せた。 電力貯蔵装置の利用については,地上設置,車上設置ともに事業者の事例を調査し,次年度の本格検討に必要な,基本的なスペックや制御法について知ることができた。 関連して,スペインの若手研究者が本学に滞在された際,欧州における省エネを考慮した自動運転や運転支援,ダイヤ作成手法等についてディスカッションを行い,本手法の国外への適用可能性について確認を行った。結果,省エネの余地は欧州の方が高いものの,駅間が長い,ダイヤの余裕が多いなど,これまで想定してきた条件とやや異なる部分もがあることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「理論に裏付けされた,鉄道における車両・ダイヤ(運行スケジュール)・運転の最適化による統合的省エネルギー化の方法を明らかとする」という全体の目的に対し,運転制御とダイヤ作成の両面から省エネを図る方法論の構築が進んでおり,さらに利用者の利便性を加えた2つの評価軸で方法を多目的に評価する試みも行えた。最近になって一層強くなった省エネに対する要請や,輸送障害時の対応について,的確に応えられる素地ができつつある。 詳細は「研究実績の概要」に記述した通りであり,本年度の研究実施計画に対してもだいたい想定通りの成果を得ることができている。細かく見れば,正常運行が困難になった場合の検討が想定以上に進み,電力貯蔵装置の検討が想定より若干遅れているが,平均的に見た進捗は想定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる次年度も,概ね当初の計画通り研究を遂行する予定である。 車両面については,車両性能の設定,および車載または地上電力貯蔵装置の設計を,既に調査した実例をもとに統合的に行い,車両まで最適化を施した場合の統合的省エネルギーの定量的可能性をも評価する。 乱れた運行ダイヤを元にもどす運転整理時にも,列車の密度と速度が高くなった所の電力が逼迫するが,信号の特性を考慮しつつ,電力面からのスムーズな回復運転方法を検討する。異常時の運行取扱については,事業者の指令業務担当者等から情報を得る。 また,当年度まで積み重ねてきた理論を実際の鉄道システムで実行するための方策も検討する。特に,省エネルギーな運転方法を運転士にアドバイスする支援システム等の実証的検討を行う。 最終的に3年間で得られた成果を取りまとめ,学会だけでなく広く成果を公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は,引き続き前年度購入した演算用サーバーを有効活用することとし,新たな設備備品の購入は予定していない。主な使用は,国内外の鉄道エネルギーに関する資料収集と研究成果発表のための国内外旅費,資料整理や専門家へのヒアリング等への謝金等であり,これらは様々な鉄道事業者での個別の取組みに関する情報収集を行うこと,および研究成果を広く公表することから必要不可欠なものである。特に次年度は課題の最終年度となるため,成果発表に伴う旅費の割合が多めとなる。その他,学会投稿料と,上記演算用サーバーの保守部品や配線用品等の消耗品に使用する予定である。
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