2011 Fiscal Year Research-status Report
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23760360
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
船水 英希 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90516486)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 国際情報交流 |
Research Abstract |
本研究は,非接触・無侵襲な血流計測法であるレーザースペックル法にディジタルホログラフィ技術を適用し,レンズレスで焦点合わせの不要な新方式の血流イメージング法の確立し,生体の血流分布および表面形状から良性・悪性腫瘍を判別する診断システムを高精度かつ低コストに構築することを目的としている.平成23年度の研究計画は主にディジタルホログラフィを用いた血流イメージングと従来のレーザースペックル法との比較・検討を行うための基礎研究を行なうものである.血流イメージング用のディジタルホログラフィ光学系を構成し,785 nmの半導体レーザーを移動ステージに置かれたスリガラスに照射し,その反射光と参照波により生じる干渉パターンをCCDにより検出する.CCDのフレームレートを15 fpsとし,スリガラスの移動速度を変えて数度の実験を行った.その結果,移動速度の増加につれて再生像の画質が劣化していくことが確認された.これは,移動速度の増加に伴い,物体の情報を持つ干渉パターンの明暗のコントラストが時間平均により小さくなることで,物体の情報が消失したのだと考えられる.このため,本方法はレーザースペックル法と比較して高フレームレートを必要とすることが明らかとなった. 次に,実際の生体試料としてヒトの指の血流イメージングを試みたところ,予想以上に光量ロスが多く,画質の良い再生像を得ることはできなかった.これに関しては,光量を高めるための光学系を考えており,次年度に取り組む予定である.この実験と並行して,解析プログラムの作成を行った.具体的にはディジタルホログラフィの特徴の1つである計算機処理によるオートフォーカスのプログラムと,波長に依存した再生像のサイズの補正プログラムの開発に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本予算の申請書の研究目的に記載したうち,平成23年度で達成する予定であったのは,焦点合わせの不要なレーザー血流イメージング法の確立と,コンピュータ再生による被検部の傾き・焦点ずれ補正及び倍率調整プログラムの開発の2つである.前者に関しては,血流イメージング法の一般的なスリガラスを用いた基礎実験を行い,ディジタルホログラフィ技術を用いて血流イメージングを行う際に有用な研究成果が得られ,計画通りに100%達成された.一方で,生体試料としてヒトの指を用いた血流計測においては,生体からの反射光の光量が著しく低下してしまったため,実験成果の取得が難航しているため,達成度は60%程度と考える.また,後者の達成度に関しては,被検部の傾きの補正に関しての現在の達成度は80%程度である.一方で,焦点ズレをディジタルホログラフィの大きな利点であるコンピュータでの後処理によるオートフォーカスのプログラムを完成することができた.被検部の画像診断の補助的な役割として,画像の倍率調整が可能なプログラムの開発に関しては平成23年度で開発に成功し,100%達成することができた.上記より,平成23年度の全体的な研究達成度は85%程度であり,概ね申請書に記載した計画通りに研究が進行している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度で達成ができなかった主要な課題は,ディジタルホログラフィで実際の生体血流の情報を反射光の光量の問題から取得できなかったことである.これについて平成24年度では最初に取り組む.光量の問題を解消するために,CCDと被験物体間の距離を近づけたディジタルホログラフィ光学系を構成し,血流イメージング法の実験および確認を行う.次に,ディジタルホログラフィを用いた血流計測法において,血液情報として重要な情報である血液濃度および酸素飽和度イメージング計測を実現するために780 nmと808 nmの2つの半導体レーザーを用いて実験を行う.2波長のスペックルをCCDカメラに2重露光し,ディジタルホログラフィの特性を利用して異なる波長により得られる2つの再生像を空間的に分離し,当研究室ですでに確立されている分光演算法によって血液濃度と酸素飽和度を計測する.また,2波長で得られた再生像の位相情報を利用して,被検物体の表面形状を計測するプログラムの解析を行う.位相情報を表面形状の情報に変換する際に,2波長の値を正確に知る必要があるため,高分解能な分光器を用いて波長を計測する.2分岐ファイバ光学系を導入し,小型で簡便かつ低コストなディジタルホログラフィ血流計測システムの構築を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には,2波長法に必要な808 nmの近赤外半導体レーザー素子を新規に購入する.また,半導体レーザーは発振波長に5 nm程度の個体差が生じることが知られており,表面形状を取得する際の誤差の原因となることから光源の波長を正確に測定するための高分解能分光器を購入する.本研究の最終的な目的である小型で簡便かつ安価なディジタルホログラフィ血流計測装置を構成するために,レーザー光導波用の光ファイバを新規購入する.また,実験装置の構成に必要な光学素子,機械・電子部品の購入費用を消耗品費に計上した.2回の国内学会と1回の国際学会での成果発表のための費用と,国内外の研究動向調査のための論文購読料および論文投稿料として使用する.
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