2011 Fiscal Year Research-status Report
自律移動型ロボットのための準遠方領域・超波長分解能レーダセンサの研究
Project/Area Number |
23760364
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
木寺 正平 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (00549701)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | UWBイメージングレーダ / レーダ信号処理 / 準遠方界計測 / 多重散乱環境 / 超分解能イメージング |
Research Abstract |
超広帯域(UWB)レーダシステムは,光学計測技術を超える測距性能(数mm)を有し,粉塵環境・暗闇等での画像化が可能であるため,特に災害救助,資源探査等の各種ロボットセンサや非侵襲人体計測に有用である.既に従来の分解能限界を超えるレーダ画像化手法RPM法を提案しているが,計測領域が数十から数百波長の準遠方界計測においては,処理時間・画像化領域・精度等において解決すべき問題点がある.本年度では,準遠方界計測での3次元画像化の高速化のため,従来のRPM法のアルゴリズムを本質的に改良した.従来のRPM法では,到来角度推定において探索領域を離散化する必要があり,特に準遠方計測で十分な画像化精度を保持するには,同探索領域が広がり,離散化誤差を抑え,画像化精度を保持するには,膨大な計算量が必要であった.これに対し,提案法ではアンテナ位置を中心・観測距離を半径とする球の交点の集積度を評価することで,探索領域の離散化を回避し,従来法で同程度の精度を得るための処理時間を1000倍以上短縮することに成功し,従来法と同程度の耐雑音性能も確保することを数値計算により示した.更に,多重散乱波イメージングにおいて,散乱波識別のための信号処理法を導入した.一般に,奇数回・偶数回の多重散乱波の識別には,位相情報が不可欠である.しかし,超波長画像分解能に必須となるCapon法やMUSIC法おける出力値は位相情報を保持しない.同問題を改善するため,Capon出力から推定される伝達関数を用いた位相識別法を導入し,Capon法の超分解能を保持しつつ,多重散乱波の識別が可能とする手法を提案した.同識別法により,RPM法及び多重散乱波イメージングの分解能を保持しながら,誤識別による虚像を抑圧することが可能となることを数値計算により示した.今後は,同手法の実験的検討を実施する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的に示す通り,準遠方界計測における波長限界を超える分解能・精度を保持する立体イメージング法を開発するため,従来のRPM法が有する本質的な問題点を解決した.従来のRPM法を単純に遠方計測領域に拡張すると,処理時間と画像化精度・分解能の間に深刻なトレードオフが存在し,両方を実用に供するレベルに引き上げることは困難であった.これに対し,本年度で開発した手法は,新しい着眼点に基づき,従来の問題点を本質的に解決した.同成果は,レーダ3次元イメージング技術の分解能・処理速度・精度等の画像化性能を飛躍的に高めるものであり,重要な成果であると評価する.また,従来の超分解能距離法では提供できなかった位相情報抽出においても,一定の成果を上げ,これにより画像化精度を直接的に向上することになった.これらの成果を踏まえ,本研究は当初の研究目的を達成するために順調に成果を上げていると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに静止目標計測に対して,準遠方界領域でも高速性・超波長精度と分解能を保持する立体画像化手法を開発した.本年度は,本手法を移動目標計測へと拡張する.移動目標計測では,必要な散乱データを瞬時に観測する必要があるためマルチスタティックモデル(多点送受信モデル)を導入する.但し,非点状の目標形状では,観測方向により散乱中心位置が異なるため,移動目標の形状を正確に再現するには,「散乱中心位置の移動」と「目標速度ベクトル」の両者を追従する必要があり,逆問題の設定条件としては劣悪である.これに対し,多重散乱環境を最大限に利用する.まず,「目標速度ベクトル」推定には,多重散乱波のドップラー変位を用いる.同変位は,仮想的に複数方向への投影速度成分を含むため,3次元速度ベクトルの各成分が推定可能である.同速度ベクトルを用いて,「散乱中心位置の移動」を推定し,目標形状・速度ベクトルを反復改良しながら,真の目標形状を再現する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度では 実験データを用いて各種の提案技術の性能を評価する.既に基礎的なレーダ実験設備(電波無響ボックス・広帯域パルス発生器・オシロスコープ)が整備されている.次年度では,特にマルチスタティック観測の基礎検討を行うため,多数のRFケーブル・コネクタ類が必要となり,また送受信信号切替のためのスイッチ及び同制御用PC等を購入する.また,本研究領域(超分解能UWBレーダ技術)を先導するために,本研究課題に基づく研究成果を積極的に公表・広報する必要があるため,複数の国際論文誌掲載及び国際会議等に関わる出張経費等を本予算より拠出する.
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Research Products
(14 results)