2011 Fiscal Year Research-status Report
雷空電の球面波伝搬効果解明とポータブル雷モニタへの応用展開
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23760367
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
尾崎 光紀 金沢大学, 電子情報学系, 助教 (70422649)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 落雷位置推定システム / 雷空電 / 電離層電磁波伝搬 |
Research Abstract |
近距離(100 km圏内)の雷活動(位置と規模)を検出する小型軽量な単体システムを開発するという目的に対し、本年度は、雷空電直接波の一地点観測落雷距離推定法への影響について重点的に理論解析を進めた。雷空電(数百Hz~数十kHz)は、落雷点から観測点に直接到達する直接波と電離層-大地導波管内を多重反射して到達する反射波に分類できる。従来、一地点観測による落雷距離推定法は、電離層-大地導波管モード伝搬もしくは平面波近似に基づいており、比較的長距離(数百km)の落雷を検出するのに適していた。しかし、波長に対し近距離といえる100 km圏内の落雷に対しては、推定法の近似が成立しなくなるため、落雷距離を推定することができないという技術的問題点があった。一方で、雷空電直接波は大地導電率の影響により、その見かけの伝搬速度は光速よりも遅くなるため、一地点観測による落雷距離推定法には用いられてこなかった。しかし、落雷距離推定法に用いる雷空電パルス間の時間差パラメータの微小変動に対する推定値変動が、反射波のみを使用する従来法は無限大に漸近してしまうのに対し、直接波を用いることで光速に漸近させられることがわかった。つまり、時間差パラメータの誤差に対し、推定結果の変動は直接波を用いることで従来法に比べ小さくすることができ、推定精度改善に原理的に有効であることがわかった。これは、従来の反射波を用いた一地点観測による落雷位置推定システムの近距離雷に対する欠点を補うものとして重要な知見を得ることができたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、一地点観測による落雷距離推定法の誤差率は100 km~400 km圏内の遠距離雷に対して±20%以内で推定出ることが分かっていた。さらに、本年度の解析により数十km~100 km圏内の近距離雷に対して、直接波を用いることで誤差率±20%で推定できる見通しが立ち、計画通り推定法の適用限界の検討を進めることができているため。
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Strategy for Future Research Activity |
一地点観測の電磁波情報だけでは、原理的に落雷位置の推定が困難な極近距離(数十km圏内)の落雷に対し、新しい位置推定法の開発について検討を進める。特に、雷から放射される電磁波と超音波の観測点までの到来時間差を利用して距離推定法の確立を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
雷空電の一地点観測落雷距離推定法の適用限界に見通しをつけるため、直接波の推定法への影響について力点を置き理論解析を進めた。このため、雷空電のフィールド観測が十分に行うことができなかったため、次年度に使用する研究費が生じた。平成24年度以降に十分なフィールド観測とシステム開発(特に小型化の検討)に研究費を使用する。
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Research Products
(6 results)