2011 Fiscal Year Research-status Report
環境ガス計測を目的とした位相同期型QCMセンサの開発-サブピコグラム検出への挑戦
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23760373
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
今池 健 日本大学, 理工学部, 助教 (10548093)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | QCM |
Research Abstract |
数ナノグラム以下の微少質量変化を水晶振動子の共振周波数変化として検出するQCM(Quartz Crystal Microbalance:水晶振動子微量秤)センサの測定感度の向上と,測定精度を保ったまま,測定時間の短縮を実現するために位相同期型QCMの提案をした.位相同期型QCMは従来のQCMとは異なり,質量の変化を周波数変化として検出するのでは無く,変位した周波数を元に戻すための制御電圧を検出する形式であるため,QCMセンサ上に質量変化が生じた場合の共振周波数変化を想定し,周波数が変化した場合にどの程度の電圧として検出できるか検討を行った.この際,使用するバラクタダイオードの容量-制御電圧特性に着目し,バラクタダイオードの感度がPL-QCMの検出感度に大きく影響を与えることを明らかにした.また,バラクタダイオードの周辺回路を改善することで,PL-QCMの検出感度を,単純なバラクタダイオードのみの構成と比し,100倍以上が得られることを明らかにしたほか,検出感度の直線性も改善できる結果を得た.次に,PL-QCM回路を作製しその特性評価をおこなった.研究計画段階の時点で,水晶振動子対の振動がクロストークすることや非線形効果による引き込み作用により,回路の安定動作に影響を与えることが予想された.この対策として,水晶振動子対の距離を隔てることを念頭に置いていたが,より優れた対策として,振動子対の厚みがそれぞれ異なるよう水晶板を加工し,水晶振動子対の共振周波数をずらし,位相同期回路(PLL)側に周波数変換回路機能を持たせて位相同期を行う形式の新たなPL-QCM方式を提案した.これにより振動伝搬のアイソレーションを改善し,安定した回路動作を実現できる目処を立てた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画していたPL-QCMに使用する水晶振動子センサは,一枚の水晶振動子上に同一仕様の電極対を2組作製し,発振回路と検出回路を付加するものであったが,2組の振動が相互に影響し合い,このクロストークを改善するために振動子に何らかの工夫をする必要が生じた.この対策として,2組の振動子対を別々の共振周波数で振動させ,相互の影響を低減する方式を考案した.しかし,異なる周波数では位相同期できないため,異なる発振周波数で位相同期を可能とするために,新たに周波数変換回路を付加し対応することとした.この改善方式の検証のため,当初予定していた計画を遅らせる必要が生じた.また,当初納期1ヶ月であった水晶板が実際には納入までに3ヶ月程度要したことにより,振動子作製行程にも遅れが生じた.
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Strategy for Future Research Activity |
水晶振動子間のクロストークを改善したPL-QCMの作製を行い,その回路特性の評価を行う.また,QCMでは未だ実現されていない,振動子の共振周波数を数100MHzにした場合のQCMの測定精度および安定度評価を行い,それをPL-QCMへ応用することで検出感度のさらなる向上を狙う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
数100MHz以上で使用可能なQCM用水晶振動子は市販されていないため,水晶板から加工して作製する必要がある.このとき,水晶振動子の発振周波数や電極形状について条件を変えて実験を行う必要があるため,振動子作製に研究費を使用する.また,振動子の設計に,ムラタソフトウェア社製有限要素法解析ソフト「Femtet」を使用するため,そのライセンス料に充当する.また,研究成果を国内外の学会で研究成果を発表するための旅費に充てる.
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Research Products
(2 results)