2012 Fiscal Year Research-status Report
ディジタル・アナログ混在汎用スイッチング電源システムの知能化制御技術
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23760383
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
橋本 誠司 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30331987)
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Keywords | スイッチング電源 / 知能化制御 / ディジタル制御 / リミットサイクル振動 |
Research Abstract |
本研究の目的は,汎用スイッチング電源に対し,ディジタル制御方式を導入することにより知能化した新しい汎用電源システムを開発することである。この目的に対して今年度は,以下の研究項目を実施した。 ① 前年度に実施した,AD/DA分解能に起因する出力電圧のリミットサイクル振動の補償法に対し,負荷抵抗の変化に対しても,その推定値を利用することにより,振動が最小となる目標値電圧補正手法を構築し,負荷実験によりその有効性を検証した。これにより,スイッチング電源において,入力電圧変動と負荷抵抗変動に対しても常に振動が最小となる,ロバストなディジタル制御が可能となる。 ② 多チャンネルのマルチレベル電圧制御に対して,部分空間法に基づく多入出力同定法と本研究にて提案している多入出力系に対する外乱オブザーバ付き内部モデル制御法(DIMC)を導入し,制御帯域幅のみを設計パラメータとする実験データに基づくシステマティクな制御系設計法を提案した。また提案手法の同定法と制御法を実機に実装し,実験によりその有効性を検証した。 ③ ディジタル制御電源の知能化技術として,上記のDIMC制御系に対してニューラルネット(NN)に基づく学習理論を導入した。これにより,(1) 電源システムの負荷変動や入力電源電圧変動などの時変特性や,AD/DA分解能誤差やスイッチングによる電圧制御という非線形性に対して,適応的に制御性能を改善できる制御系が構築可能となること,また,(2)NNのニューロ結合係数の変化に着目することにより,どのパラメータがどの程度変動しているかを定量的に推定する手法を提案した。 以上の成果を,Journal論文(2編)と国内外の学会(2件)にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題では,大きく分けて5つの実施項目を設定しているが,今年度はディジタル制御電源の高機能化・知能化が主たる課題となっている。この課題において,実施項目1の「軌跡追従性と制約条件を考慮したディジタル制御法の確立」に関し,学習理論を用いたモデル規範型適応制御手法により,過大な制御入力を簡便に回避できる制御構成となり,高機能化に貢献している。また,項目2の「負荷変動や経年変化に対して適応的に制御性能を保持する制御法の確立」に関しても,同制御構造により時変性と非線形性を学習的に補償でき,高機能化が達成できる。項目3の「電源システムの状態監視と故障診断,寿命推定法の確立」に関しては,学習の工程で変化するニューロ結合係数に着目することで,特定のパラメータの定量変化を推定可能となる手法を提案した。以上は,当初予定通りである。また,次年度課題である項目5の「ディジタル・アナログ混在システムの低消費電力・低コスト実現法」に関しても,AD/DA変換に起因した分解能問題に対して研究に進展が見られたため,優先して取り組んでいる。 今年度予定していた項目3に関連するパラメータ推定結果に基づく故障診断法と自己修復機能については,現在開発を進めている。以上より,研究の進捗状況としてはおおむね順調に進んでいるものと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,平成24年度に予定していた故障診断法と自己修復機能について,学習理論に基づくパラメータ推定値を応用し,その開発を進めていく。更に,提案する高性能ディジタル制御電源制御法は多入出力モデルの同定と制御となるため,現状では制御演算負荷がサンプリング時間の増大,すなわち制御性能劣化に影響している。平成25年度の課題である汎用電源への応用を視野に入れ,低コスト実装を目指し制御器実装に関する簡便化,構造の見直しを今後,遂行していくとともに,これまでに提案した高機能化・知能化手法を融合し,開発したディジタル制御電源装置で実験検証する。 平成25年度は最終年度であり,総合評価・見直しを行うとともに,提案制御技術を特許化するとともに学会誌論文として発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度では予定の故障診断法と自己修復機能について,その手法提案を優先し,シミュレーション検証を主に行っている。そのため,実験検証は平成25年度に行う予定であり,これに伴い実験用のデジ/アナ混在システム解析用ミクスドシグナルオシロは未購入である。同機器は,この残金により平成25年度に購入予定である。 また,平成25年度は提案するディジタル制御電源の高機能化・知能化手法の低消費電力・低コスト実現が課題であり,これを実施するために当初予定のソフト開発・実験解析用演算装置を導入する。各種負荷試験や推定・自己修復機能の実装のための電子回路部品を計上している。 得られた研究成果を総合評価し,Journal論文として投稿するとともに,関連する国内外の学会にて発表予定である。
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Research Products
(4 results)