2011 Fiscal Year Research-status Report
確率共鳴現象と部分空間法を利用した高感度・高選択性匂いセンサの開発
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23760394
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
竹井 義法 金沢工業大学, 工学部, 准教授 (30350755)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 確率共鳴 / 匂いセンサ / 部分空間法 / システム同定 |
Research Abstract |
本研究は,高感度・高選択性匂いセンサの開発を目的として,感度問題における耐ノイズ性能向上に関して,通常除去できない感度限界付近の背景雑音を逆に利用することで,微弱な検知対象となる信号を強調する確率共鳴現象を利用した静的非線形フィルタによる高感度化の実現,さらに,多入出力系とみなせるアレイ型センサシステムから得られるデータに部分空間同定法を適用した特徴点抽出アルゴリズムに基づく高選択性の実現を目指すものである.本年度は,SR を発現するシステムの基礎的な理論検証・解析を進めるために,数値シミュレーション上でのSR の発現を確認し,入力振幅,雑音強度,非線形素子の閾値といった各パラメータと入出力相関および出力SN比との関係を検討した.さらに,化学センサであるガスセンサでは微弱な入力信号,すなわち低濃度のサンプル供給が可能な実験環境の構築が必要であるため,まず前段階としてフォトトランジスタを用いて,実機でのSR発現と検討を行った.7素子の光センサ,非線形素子としてオペアンプによるコンパレータを用いて,Collinsによる並列ネットワークを構築し,10Hzの矩形波を入力とし,減光フィルタによる入力振幅の減衰によって入力SN比を変化させてSRの発現を試みた.その結果,周波数領域での出力SN比があるノイズ強度で,単純加算平均による出力結果を上回るSN比が得られることを確認した.しかしながら,入力信号が微弱になるに従い,非常に小容量ながらコンデンサを含むセンサ検出回路に起因すると思われる位相遅れが顕著になった.今後は,前述の実機で得た検討結果を踏まえ,ガスセンサを用いた計測システムの構築,実測データを用いた検証を進め,SRによる雑音除去と匂い識別のためのセンサ応答モデルの同定問題を進める.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は確率共鳴現象の発現とシステムを構成する各要素のパラメータとの関連を実験的に進めた.数値シミュレーションによる解析は,初期の目的をほぼ達成しており,今後の,例えば,非線形素子や観測信号に印加する設計可能なノイズ強度の最適化手法の検討に供する結果を得た.また,物理センサを用いているが実機による検討から,シミュレーション上で再現していない,あるいは実機において改善すべき特性についての問題点が確認でき,概ね計画通りの達成度であると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
確率共鳴現象の匂いセンサへの応用とそれらのシステム同定の枠組みで解釈によって,匂いセンサの感度・選択性の向上を目指し,確率共鳴現象を発現するシステム設計について検討を進める.また,本年度の結果を踏まえ,センサの動特性および,検出回路の信号伝達特性を考慮したシミュレーションの検討を進める.SR を感度向上に積極的に利用するためのシステム設計における,印加ノイズ強度の最適化に関する検討を進める.SR は非線形系を通した雑音に汚された観測信号に対して,有限なノイズ強度で出力SN 比(入出力相関)が最大となる点に特徴があるが,その雑音は観測雑音を利用する以外に,システム内部に制御可能な雑音源を同時に持つことで与えられる.このとき,入力信号と非線形システムの特性のみから入出力相関を最大にできる雑音強度は与えられず,雑音強度の最適化が必要となる.今後は入力信号の統計情報と非線形素子の特性(システムパラメータ)から,最適なノイズ強度を与えるアルゴリズムの開発を進める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は数値シミュレーション及び実機による確率共鳴現象を発現するシステムの実験的な評価検討を行った.また,その検証用に簡易な実験系として,物理センサを用いた系で検討を進めた.そのため,ガスセンサアレイの製作等,化学センサによる実験系の構築を次年度へ繰り越し,当該予算を本年度の残額とした.なお,ガスセンサによる実験系の構築は現在進行中であり,また,低濃度での実験系の構築を含めた問題設定の詳細についてはより検討が必要であり,次年度における予算執行を予定している.
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Research Products
(1 results)