2012 Fiscal Year Research-status Report
確率共鳴現象と部分空間法を利用した高感度・高選択性匂いセンサの開発
Project/Area Number |
23760394
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
竹井 義法 金沢工業大学, 工学部, 准教授 (30350755)
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Keywords | 確率共鳴 / 部分空間法 / 匂いセンサ / システム同定 |
Research Abstract |
本研究は,高感度・高選択性匂いセンサの開発を目的として,微弱な検知対象となるセンサ信号を増幅する確率共鳴現象(以下,SR)を利用した非線形フィルタによる高感度化,さらに,センサ応答のシステム同定手法に基づく特徴点抽出アルゴリズムによる高選択性の実現を目指すものである.本年度は,SR を発現するシステムの基礎的な理論検証・解析をさらに進めるための数値シミュレーション上でのSR の発現について,入力振幅,雑音強度,非線形素子の閾値といった各パラメータと入出力相関との関連について継続して検討を行った.単純な閾値系を非線形素子とするSRを発現するシステムの出力と,非線形素子を通さずに線形加算した出力と比較した場合,SRによって得られる対ノイズ強度に対する相関係数の曲線は,有限なノイズ強度で最大となるSRの特性を示すものの,同条件下において線形加算時の結果から向上することは得られず,SRを用いるメリットが得られない.そこで,非線形素子としてヒステリシスを有したコンパレータを導入して,検討を行った.その結果,相関係数が最大となるノイズ強度の近傍で線形加算処理を上回る相関を得ることができ,SRの有効性が確認できた.また,ヒステリシス特性に関して上下限の閾値を変化させ,入力,雑音強度に対して相関係数を最大とする最適な条件が存在することをシミュレーションにて確認した.今後は,このヒステリシスコンパレータと生体のニューロンにおける不応期との関連において,その伝達特性について検討する.また,SR現象のガスセンサに対する応用として,生体における信号伝達系とSR現象の応用を検討するために新たにガス源探知問題に関する検討も行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度も前年に引き続き,確率共鳴現象(SR)の発現とシステムを構成する各要素のパラメータとの関連を数値シミュレーションによる解析を中心に行った.物理センサを用いた前年の実験結果に沿ったシミュレーション結果が得られる非線形素子の検討等を行い,ヒステリシス素子のSRにおける効果を確認するなど一定の進展はあるが,SRの理論解析とシステム同定との関連についてはやや遅れており,次年度において重点的に行う必要があると考えられる.また,SRの応用としてガスセンサを応用した匂い源探知ロボットを土台として,研究計画に予定していた生体における信号伝達系を模倣したシステムの構築とSRの応用について検討に着手した点は,概ね計画通りに進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得られた,確率共鳴現象(SR)において線形加算処理に対して性能向上が確認できたヒステリシス素子についてのSRにおける効果のより詳細な解析や,SRを発現する最適ノイズ強度の相互情報量など用いたに理論解析および,ガス種に関する特徴抽出のためのセンサ応答モデルに対するシステム同定手法との接続についてさらに検討を進める.また,SRを適用することを目的とした生体における信号伝達系の構築とその応用としての匂い源探知ロボットの構築等を進める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本課題の主たるターゲットであるガスセンサシステムの構築に関して,匂い識別を検討できるところまで至っていないため,前年の若干の残額を含め,ガスセンサアレイシステムの構築に予算割り当てを行う予定である.また,生体模倣の信号伝達系の構築および,最終の研究成果公開について予算執行を予定している.
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Research Products
(2 results)