2011 Fiscal Year Research-status Report
水分移動及び表層劣化の影響を考慮した凍結融解環境における塩化物イオン浸透予測
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23760410
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Research Institution | Hachinohe Institute of Technology |
Principal Investigator |
迫井 裕樹 八戸工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (30453294)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | コンクリート / 耐久性 / 複合劣化 / 塩化物イオン浸透性 / 凍結融解作用 |
Research Abstract |
寒冷地におけるコンクリートは,その環境的特徴から,凍結融解作用および塩化物イオンの浸透による複合劣化が生じる可能性が極めて高い環境下にあるといえる。しかし,コンクリート中への塩化物イオン浸透性に及ぼす凍結融解作用の影響を検討した例は少ないのが現状である。積雪寒冷地域のコンクリート構造物の合理的な維持管理を行うには,凍結融解作用を考慮したコンクリートの塩化物イオン浸透予測を行うことが必要不可欠であると考えられる。そこで本研究では,凍結融解作用を受けるコンクリートの塩化物イオン浸透性について検討を進めている。本研究ではこれまでに,凍結融解環境下にある水セメント比の異なるコンクリートの塩化物イオン浸透性,表層劣化(スケーリング)が塩化物イオン浸透性に及ぼす影響および表面含浸材を用いたコンクリートの塩化物イオン浸透性について検討を行った。本研究によりこれまでに得られている結果をまとめると以下のようになる。1.凍結融解環境下における塩化物イオンの見掛けの拡散係数は,温度一定環境下におけるそれと比較して,1.2~1.5倍程度高い値を示す。これは,水セメント比が高いものほど,高くなる傾向にある。2.凍結融解作用に伴う表層劣化(スケーリング)がコンクリート中への塩化物イオン浸透性に及ぼす影響は少ない。3.表面改質剤を用いたコンクリートにおいても,改質剤を用いないコンクリートと同様の傾向が認められる。つまり,凍結融解作用を受けることにより,コンクリート中への塩化物イオン浸透性が高まる傾向にある。これらの結果より,凍結融解環境下におけるコンクリートへの塩化物イオン浸透メカニズムとして,凍結融解作用に伴う外部からの水分移動および,コンクリート内部での未凍結水の移動によるものと推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,現在までに水セメント比の異なるコンクリートを対象に,凍結融解作用がコンクリート中への塩化物イオン浸透性に及ぼす影響について実験的検討を行っている。暴露環境として,温度一定環境および凍結融解環境(最低温度:‐20℃,凍結融解サイクル:1回/日)を設定し,それらの影響を明らかとするとともに,凍結融解作用に伴う表層劣化(スケーリング)がコンクリート中への塩化物イオン浸透性に及ぼす影響についても検討を行った。同時に,当初平成24年度実施予定であった表面含浸材による表層品質の及ぼす影響についてもすでに検討を進めており,表面含浸材を用いたコンクリートの凍結融解環境における塩化物イオン浸透性についても明らかにしつつある。凍結融解環境下での塩化物イオン浸透性予測式の構築には,暴露条件を増やし,さらにデータを蓄積することが必要であるものの,一部先行して研究を進めるなど,概ね順調に研究は進められていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度,凍結融解環境がコンクリートの塩化物イオン浸透性に及ぼす影響について,水セメント比の異なるコンクリートを用いて検討を行うとともに,凍結融解作用による表層劣化(スケーリング)の程度の違いが塩化物イオン浸透性に及ぼす影響について検討を行った。また,表面改質剤を用いたコンクリートについても同様に,凍結融解作用が及ぼす影響について一部検討を行った。今年度,凍結融解環境の影響を含むコンクリート中への塩化物イオン浸透性予測のための式を提案するため,温度条件を変化させ,その影響の程度を明らかとする予定である。特に,コンクリートの凍害劣化に及ぼす凍結融解の影響として良く知られている,最低温度,凍結速度,凍結保持時間に焦点を当て,塩化物イオン浸透性に及ぼす暴露条件の影響を明らかとする予定である。今年度の研究の進め方について,暴露条件の設定変更等があるものの,塩化物イオン浸透性の検討は前年度の方策を引き続き実施する予定である。ただし,前年度の結果より推察される,凍結融解作用に伴う水分移動がコンクリート中への塩化物イオン浸透に及ぼす影響について,今年度検討を加えることを予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度同様,本実験を遂行するために必要となる研究施設・設備等は,凍結融解装置(スケーリング試験装置),水銀圧入式ポロシメータ,塩化物イオン濃度分布測定装置,その他各種計測機器等であり,これらの試験機器類は,すでに著者所属機関で整備済みである。よって,研究費の大部分は本研究を遂行するための消耗品となる。特に,塩化物イオン浸透試験のための塩化物イオンや,全塩化物イオン濃度測定のための種々の薬品類が主となる。また,凍結融解作用に伴うコンクリート表層・内部の劣化状況を検討するための水銀圧入による細孔構造分析用の水銀等(廃棄のための費用を含む)に用いる予定である。またこれらの研究成果を取りまとめ,関連学協会への論文投稿を行う予定であり,そのための投稿費・発表用旅費に充てる予定である。
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