2011 Fiscal Year Research-status Report
衝撃弾性波法を用いた床版下の検査が可能な壁面検査ロボットの開発
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23760413
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Research Institution | Ariake National College of Technology |
Principal Investigator |
岩本 達也 有明工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (20390528)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 非破壊検査 / 衝撃弾性波法 / コンクリート構造物 / 検査ロボット / コスト縮減 |
Research Abstract |
高度経済成長期に大量に建設されたコンクリート構造物は,経年劣化で建替の時期が迫っている.しかし,最近の経済状態では建替は困難であり,問題個所を補修し長寿命化することが最善策である.検査が急がれる問題個所は膨大で,効率的・経済的な検査方法の開発が急がれている.また,地震などの災害発生時には,利用再開にあたって安全性評価が不可欠であるが,対象物に到達できない場合もあり,遠隔操作が可能なロボットの開発が必要である.本研究では,衝撃弾性波法を用いて壁面や床版下の点検を行なうロボットを開発することを目的として,平成23年度は垂直な壁面を点検可能なロボットの開発を行なった. ロボットは,吸着部,駆動部,制御部,計測部の各要素で構成されている.吸着部には,当初減圧ポンプを用いる予定であったが,減圧に時間がかかることや吸盤にわずかな隙間が生じただけで吸着力を失うことから,ブロア用のファンを用いた.搭載するファンに対して,吸盤からの漏れ面積と吸盤内圧力の関係を求め,必要な吸盤の直径を決定した.駆動部には,DCモータとスライダを組み合わせた移動装置を製作し軽量化を計った。点検方法は,衝撃弾性波法の他、マイクロフォンを用いた打音検査やカメラを用いた目視検査が可能である.衝撃弾性波法は,モータに取り付けた鉄球で打撃し,加速度センサを用いて表面振動を計測する.計測された時系列データは,無線LANを介してPCに保存される.また,加速度センサをマイクロフォンと交換することで打音検査が可能である.また,画像データも同時に収録することができる。駆動部のモータを制御するための通信には,ラジコン用無線(AM帯)を使用して,無線LANとの混線を避けた.すべての電力は,リチウムポリマー電池から供給されることで、無線化を実現した. 平成23年度は,これらの各要素を設計・製作し動作確認を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画は,(1) 無線操縦による垂直面を探査可能な検査ロボットの開発と(2) 欠陥を含むコンクリート供試体の製作である.(1)について,当初の計画では,平成22年度に開発済みの壁面検査ロボットを改良し無線化する予定であったが,重量が20kg近くあったため,ブロアの消費電力が大きくなり,そのまま無線化してバッテリー駆動とする事は困難と判断した.したがって,平成24年度に計画していた軽量化を前倒しして,軽量化と無線化を並行して開発を行った.このため,設計・制作に時間を要してしまった.このような理由からロボットを組み上げるまでには至っておらず,走行性能などの実証実験には至っていない.しかし,各構成部品はほぼ完成しており,平成24年度の早い段階で移動性能の検証実験を行う予定である.(2)コンクリート供試体の制作について,当初は,幅2m,高さ2m,厚さ50cm程度の供試体の製作を行う予定だったが,次の理由から計画を変更した.コンクリート供試体の制作目的は,ロボットの移動性能の検証と欠陥の検出性能の検証である.移動性能の検証は,欠陥の有無は関係がないため,学内のコンクリート構造物などを利用できる.欠陥の検出性能の検証について近隣の研究施設のコンクリート供試体を利用できることが判明したため計画を変更し,製作を取りやめた.その変更に伴う予算の余りについては,実構造物への実証実験に充てる予定である.以上の理由から,研究目的に対して「おおむね順調に進展している」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は研究計画の最終年度であり,すべての研究目的を達成するため,次の研究計画を実行する.(1)平成23年度に開発したロボットの実証実験 学内施設のコンクリート壁面を使用したロボットの移動性能の検証実験と,近隣の研究施設(熊本大学工学部機械システム工学科材料信頼性工学研究室)保有の供試体を使用した欠陥検出性能の検証実験を実施する.実験結果をもとに,検査の速度や精度などを向上させるため,打撃部装置や振動計測装置および移動機構などの改良を行う.(2)床版下を探査可能なロボットの開発 開発したロボットの吸着部を改良し,床版下の検査を可能とさせる.具体的には,吸着部の吸引力アップ,吸盤の材質の変更および吸盤の形状・個数の変更を計画している.また,ロボットの壁面(天井)移動性能の評価を行うために,学内施設の天井面を利用することを計画している.(3)実構造物に対する実証実験 当初計画していなかったが,実構造物に対するロボットの検査性能を検証するために,実構造物を使用した実験を行なう.検査対象は,県内の既存構造物もしくは実構造物を保有する研究施設(たとえば,名古屋大学橋梁点検技術研さん・研究用施設「N2U-BRIDGE」、土木研究所 構造物メンテナンス研究センター「CAESAR」など)を予定している.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の収支状況報告所の次年度使用額は約63万円である.この研究費が生じた理由は,物品費で支出予定であったコンクリート供試体の製作(約35万円)を変更したことが主な理由である.また,成果発表のために確保していた旅費(約15万円)が使用されなかったことも理由の一つである.次年度使用額については,コンクリート供試体の予算は実構造物への実証実験に充て,旅費については,出席予定の国際会議(8th International Conference on Fracture Mechanics of Concrete and Concrete Structures,2013年3月10日から14日開催,スペイン)の渡航費用に充てる予定である.平成24年度に助成予定だった研究費については交付申請書に記載している内容で使用予定である.
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