2012 Fiscal Year Research-status Report
非線形マルチスケール解析に基づく鋼橋の冗長性最大化設計
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23760416
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
齊木 功 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40292247)
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Keywords | 鋼構造 / 鋼トラス橋 / 冗長性 / 非線形有限要素解析 / 崩壊メカニズム / 維持管理 / 余耐力 / 設計 |
Research Abstract |
我国における社会的背景から,既設構造物の維持管理の重要性が増しており,構造物,特に鋼トラス橋の冗長性に関する数値解析的な研究が近年報告されている.これらの鋼トラス橋の崩壊過程や冗長性の解析においては,計算負荷の観点から,格点部を剛結とした骨組要素による弾塑性解析が主流となっている.一方で,本研究では,格点部のみ板要素により詳細にモデル化した数値モデル(以下,複合モデルと呼ぶ)を用いて,各部材やガセットプレートに破断や断面積の減少を与え,弾塑性有限要素解析を行い,設計では考慮されていない鋼トラス橋のリダンダンシーについて考察した.その結果,格点部を詳細にモデル化することにより,格点部を剛結とした場合と比べて塑性変形に伴う荷重の分配が異なること,また,格点部ガセットプレートの設計の余裕度によってガセットプレートの塑性化が他の部材より早く顕著に現れることがあること,を示した.ただし,複合モデルの非線形解析は,計算負荷が非常に高いため,実務設計において行うことは困難である.この場合,全体を骨組モデルで解析し,その内力を格点部のみのモデルに与えるズーミング解析を行うことも多い.本研究では,格点部のみのモデルに与える内力を,従来の骨組モデルと,複合モデルの両モデルによって求め,両者の結果を比較した.その結果,格点部のみのモデルに与える内力を,従来の骨組解析によって求めると,複合モデルの非線形解析とは結果が乖離する場合があることを示した.一方で,複合モデルによって求めた内力を用いれば,計算負荷軽減と精度向上の両立がある程度可能になることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は,主に,鋼トラス橋の格点部を板要素により詳細にモデル化した有限要素モデルを用いて,崩壊メカニズムの推定を行った.その結果,研究の概要に記載したように,鋼トラス橋の冗長性発揮のメカニズムや,冗長性向上のための知見を得た. しかしながら,非線形解析の計算負荷が高く,マルチスケール解析による数値解析の効率性向上が課題であった.この点について,本年度は,ズーミング解析を用いることで計算負荷の低減を図った.本研究で提案するズーミング解析は,従来のズーミング解析に比較して,計算効率と精度の面ですぐれていることを示した. 以上から,おおむね計画通りに進捗している.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画全体のまとめとして,構造物の冗長性を高める設計法を確立することを目的とする.まず,許容応力度設計法や限界状態設計法で,各部材の設計耐力と作用力の比を部材の設計上の余裕度と定義する.設計耐力を (耐力/安全率) とすれば,ある部材の設計上の余裕度が 1 であるとき,その部材の設計荷重 × 安全率を超えた荷重を載荷した場合,部材は破壊する.しかし,材料の非線形性を考慮した限界状態設計法であっても,すべての非線形性を考慮しているわけではないので,そのようにして設計された部材も,実際には想定した荷重を超えてもすぐに破壊に至るとは限らない.さらに,ある部材が破壊しても,内力が他の部材に再分配される場合,必ずしも構造物の崩壊に至るとは限らない.そこで,設計において考えられるすべての荷重パターンの中で,構造物を崩壊させる最小の荷重倍率を構造物の実際の余裕度= 構造物の冗長性と定義し,構造物の冗長性を最大化するような設計を試みる.また,このとき,部材が破壊する衝撃については,動的解析を用いてその影響を評価した後,静的な問題として取り扱うことができるかを検討する.現実的ないくつかの鋼トラス橋について,構造物の冗長性を最大化する試設計を行う.これらの試設計をケーススタディとして,鋼トラス橋の冗長性最大化設計法を提案する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は,設備備品の購入計画はない.研究費は成果データ保存のためのストレージシステム,調査・資料収集および成果発表のための旅費,各種資料の購入,論文投稿料に使用する.
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Research Products
(1 results)