2012 Fiscal Year Research-status Report
異方性材料に対する新しい波動解析手法の開発と超音波非破壊評価への適用に関する研究
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23760418
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
斎藤 隆泰 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (00535114)
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Keywords | 異方性材料 / 波動解析 / 超音波非破壊評価 / 境界要素法 |
Research Abstract |
平成24年度の目的は、平成23年度の研究で開発したプログラムの効率化とその性能評価である。効率化に対するアプローチはハードウェアによる並列化と新しい数値計算手法による並列化である。まず、ハードウェアを用いた並列化手法として、OpenMP, MPI, GPUを用いて異方性弾性波動問題における数値解析手法(演算子積分時間領域境界要素法)を高速化した。OpenMP-MPIの両者を合わせたハイブリッド手法においては完成した。GPUを用いた場合は、現在25倍程度の高速化を実現出来ているものの、さらなる高速化を目指し、引き続き研究を続ける予定である。一方、新しい数値解析手法を用いた効率化においては、ACA(Adaptive cross approximation)と呼ばれる、行列-ベクトル演算を高速化する方法を応用して、計算を行うことを試みた。特にACAについては、通常の弾性波動問題に対する波動解析に対しては完成した。残る課題は、実際に異方性材料中の弾性波動問題にACAを適用して演算子積分時間領域境界要素法を高速化することであるが、この点については、高速多重極法のように積分核の多重極展開を求める必要がないため、ほぼ問題なく拡張できる。このように、異方性材料中の波動解析の効率化については、概ね予定通り研究が進んだと結論づけることができる。また、それらの手法を適用した場合の計算精度であるが、超音波非破壊評価における最も単純なモデルとして知られる無限異方性弾性材料中における空洞の散乱解析を実行することで、計算精度の確認を行った。効率化後も、比較的高精度に散乱波動場を解析することができており、工学上必要な数値計算精度で異方性材料中の超音波の散乱波動場を求めることが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究の最大の目的は大きく分けて2つで有り、平成25年度で行う異方性材料中の欠陥による超音波の散乱シミュレーションを実行するための1)演算子積分時間領域境界要素法の高速化2)計算精度の確認、であった。いずれも予定通り進行し、いくつかの解析結果を得ている。実際1)に対しては、OpenMP,MPI,GPUを用いて、高速化が成されている。また、2)に対しても、簡単な異方性材料中の超音波の空洞やき裂による散乱問題を解析することで工学上の実用に耐えうる精度で解析が行われていることを確認できている。実際、これらの成果は、国際会議や査読付き論文で発表を行っている。一方、ACAを本研究で開発した新しい演算子積分時間領域境界要素法に取り入れる部分については、現在途中であるものの、その進展に問題はなく、おおむね順調に研究が進んでいるとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、平成24年度までに開発した手法を用いて、実際の異方性材料に対する超音波非破壊評価法を想定した数値シミュレーションを実行する。まず、異方性材料中に入射する超音波のモデル化を行う。等方性の場合と異なり、音響異方性を示す材料中では、超音波は複雑な波面を形成する。群速度曲線等を参考に、如何に入射超音波をモデル化するかについて検討する。次に、これまでに開発した異方性弾性波動問題に対する演算子積分時間領域境界要素法を、実際にACAを用いて効率化することを行う。無限弾性体中の空洞やき裂による散乱問題を解析することで、ACAを用いた場合の効率化をCPUや必要記憶容量の点から確認する。そして、作成した入射波モデルとともに、異方性材料中の欠陥に対する超音波非破壊評価の数値シミュレーションを行う。この際は、無限領域や半無限領域における波動解析を対象とする。欠陥からの散乱波が、異方性弾性定数から算出される群速度曲線等と調和しているかにより、正しく散乱波動場を表現できているかを確認する。また、数値シミュレーションで得られた波動場を利用して、欠陥形状を再構成する方法について検討する。ここで検討する方法は、逆散乱解析手法であるが、異方性材料は波動場が複雑なため、研究の進捗状況によってはより単純な開口合成法についても検討する。最後に、様々な欠陥の位置や形状等を考慮して、解析を行い、異方性材料中の欠陥を検出するための超音波非破壊評価法の指針について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度の研究費の使用計画であるが、価格が50万円を越えるものの購入予定はない。 研究用物品としては、比較的規模の大きい計算を実行できるよう、50万円以内の計算機を1台購入する予定である。また、国際会議や国内会議出席のための旅費を40万円程度とし、残りを数値計算補助者に対する謝金、論文投稿費等に割り当てる予定である。なお,H24年度の研究において,約5万円の残額が生じているが,研究代表者の所属機関移転に伴い,当初参加予定であった学会に参加できなかったためである.この金額はH25年度に繰り越し,別の学会への参加費等へ充当する予定である.
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