2011 Fiscal Year Research-status Report
画像解析によるRC棒部材のせん断耐荷機構の評価と設計の高度化
Project/Area Number |
23760419
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松本 浩嗣 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (10573660)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 鉄筋コンクリート棒部材 / 画像解析 / せん断 / 斜めひび割れ / 破壊メカニズム / 骨材の噛合い作用 |
Research Abstract |
本研究では、せん断破壊を呈する鉄筋コンクリート棒部材の載荷試験を画像解析とともに実施し、斜めひび割れの開口変位およびすべり変位を詳細に検討することで各せん断抵抗力を定量的に評価し、その破壊メカニズムを解明することを目的としている。平成23年度は、従来の画像解析システムで問題となっていた解析領域の広域化を行った上で、せん断破壊を呈する鉄筋コンクリートはりに適用し、ひび割れの形成過程に着目したせん断破壊メカニズムの検討を行った。従来のシステムでは一台のデジタルカメラのみ接続可能であったため、撮影領域が限定され、部材全体の挙動を高精度に捉えることが不可能であった。そこでまず、最大四台のデジタルカメラをネットワーク化し、同時撮影を可能とする広域化システムを構築した。これを鉄筋コンクリートはりの載荷試験に適用した結果、部材全体の画像解析を行うことに成功し、また、その精度は従来のものと比較して遜色ないことを確認することができた。本成果は「画像解析を用いたリアルタイム非接触ひずみ計測領域の広域化」と題してコンクリート工学年次論文集に投稿され、発表されている。次に、せん断破壊を呈する鉄筋コンクリートはりの載荷試験を画像解析とともに実施し、破壊メカニズムの検討を行った。載荷の各段階で生じるひび割れ(曲げひび割れ、曲げせん断ひび割れ、斜めひび割れ)の進展状況を良好に可視化することに成功した。また、すべての位置のひび割れ開口幅を算出し、その分布を検討した結果、引張鉄筋の付着が曲げせん断ひび割れの進展状況と骨材の噛合い効果に影響を及ぼし、斜めひび割れ発生荷重が変化することを明らかにした。本成果は「ひび割れの形成過程に着目した変断面RCはりのせん断破壊メカニズムの評価」と題してコンクリート工学年次論文集に投稿され、発表されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画を遂行するにあたっては、画像解析システムの精度およびその適用範囲を確保することが非常に重要である。従来のシステムは一台のデジタルカメラにしか対応しておらず、高精度かつ広範囲の画像解析を行うことが困難であったため、その広域化が必須の検討項目であった。平成23年度に行われた研究により、精度を低下させることなく撮影範囲を広域化することに成功しており、本研究計画の土台を作ることができたと考えている。さらに、画像解析を用いた鉄筋コンクリート棒部材のせん断破壊メカニズム解明の第一歩として、単純支持を受ける鉄筋コンクリートはりの載荷試験を画像解析とともに実施し、そのひび割れの進展状況を検討することで、ひび割れ形態に依存したせん断抵抗メカニズムを明らかにしている。これは、本研究で用いた画像解析システムが、鉄筋コンクリート棒部材のせん断破壊メカニズムを解明する上で強力なツールとなり得ることを証明するものであって、さらなる現象の解明と評価方法の構築に向けた研究の推進が大いに期待できることを示唆している。以上のことから、平成23年度は、おおむね計画通り順調に研究が進んだと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は広域化した画像解析システムの鉄筋コンクリート棒部材のせん断破壊メカニズム検討に対する有用性を確認したため、今後は、種々の形状、配筋、材料強度を有する鉄筋コンクリート棒部材の載荷試験に適用してゆく。具体的には、部材寸法、せん断スパン-有効高さ比、引張鉄筋比、せん断補強筋比、コンクリート強度、鉄筋強度等、従来からせん断挙動に影響を与える因子として知られているものを実験パラメータとして、鉄筋コンクリートはり試験体を作製し、それらの載荷試験を画像解析とともに実施する。画像解析ではひび割れ開口変位、すべり変位をすべての位置で測定し、コンクリート強度を考慮したひび割れ面の応力伝達モデルに入力することで、発生したすべてのひび割れに対して、伝達応力の大きさとその方向をひび割れ全長にわたって定量的に評価する。これにより得られるひび割れ面のせん断抵抗力を、上述した各実験パラメータに対して整理することで、各影響因子のせん断抵抗メカニズムへの貢献分に対する定量的評価を試みる。また、鉄筋コンクリート棒部材のせん断抵抗メカニズムのひとつであるタイド・アーチ機構についての検討も進める予定である。タイド・アーチ機構は、コンクリートの主圧縮応力の方向が部材軸方向に対して傾斜角を持ち、圧縮力の鉛直成分がせん断抵抗力として寄与するものである。画像解析により、主ひずみの大きさおよびその方向を二次元的な分布として得ることができれば、部材内の応力の流れを可視化できる可能性があり、タイド・アーチ機構の形成過程や全せん断抵抗力に対する貢献分を詳細に検討すること可能であると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は効率的に予算を使用できたため、若干の残額が生じた。平成24年度は、平成23年度の残額を加えた予算を、主に消耗品と成果発表に研究費を充てる予定である。消耗品としては、試験体製作の際に必要な材料費(セメント、骨材、各種混和剤、鉄筋等)に加えて、ひずみゲージを購入する。想定される試験体数を加味して、平成24年度は消耗品に40万円程度使用することを想定している。一方、成果発表としては、国内の学術論文発表会への参加を予定している。その旅費および学会登録料として、10万円程度使用することを想定している。
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