2012 Fiscal Year Research-status Report
画像解析によるRC棒部材のせん断耐荷機構の評価と設計の高度化
Project/Area Number |
23760419
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松本 浩嗣 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (10573660)
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Keywords | 画像解析 / せん断 / 鉄筋コンクリート棒部材 / 噛合い作用 / ダウエル作用 |
Research Abstract |
本研究では画像解析を利用することにより、鉄筋コンクリート(RC)棒部材のせん断抵抗メカニズムを明らかにし、各せん断抵抗成分を定量化することで、合理的なせん断耐力予測式を構築することを目的としている。 前年度の検討の結果、既存の画像解析システムは圧縮ひずみの測定には難があることが明らかとなったため、平成24年度はまず、画像解析の圧縮ひずみに対する測定精度の改良に着手した。ターゲット間隔(有限要素モデルの要素寸法)、形状関数、ひずみ算出方法をパラメータとして、圧縮ひずみの評価に最適な計測手法を検討した。その結果、ターゲット間隔を60mm程度、形状関数を一次関数、ひずみをガウス点における要素内の平均ひずみを用いて評価する手法を採用することにより、良好な圧縮ひずみ測定結果が得られることがわかった。さらに、その算出方法をRCディープビームに適用した結果、載荷点と支点を結ぶ領域に圧縮ひずみが卓越する状況が確認され、圧縮ストラットの形成が可視化できる可能性を見出した。これまで、圧縮ストラットの形成状況は有限要素法等の数値解析のみにより確認されていたものであり、本研究のように実験結果として得られたことこれまでになく、大きな意義を有している。 また、平成24年度は、画像解析を繊維補強コンクリートはりのせん断破壊に適用し、斜めひび割れの開口変位およびすべり変位を測定することで、繊維の分担せん断力を評価することを試みた。別途測定した繊維補強コンクリートの引張軟化曲線を用いてひび割れ変位から引張応力を算出し、斜めひび割れに沿って積分することで繊維の分担せん断力を算出した。実験値と比較した結果、画像解析により算出した繊維の分担せん断力は精度良く評価されていることを確認した。斜めひび割れにおけるせん断抵抗力を正しく評価できることが示されたことは、今後の展開に大きく貢献する成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鉄筋コンクリート(RC)部材のせん断抵抗メカニズムは、斜めひび割れ面における骨材の噛合い効果、主鉄筋のダウエル作用、圧縮コンクリートのせん断抵抗、せん断補強鉄筋の引張力の4成分によるものと考えられる。本研究は、各荷重レベルにおけるこれらの抵抗成分それぞれを定量的に評価することに特徴を有している。せん断補強鉄筋の引張力については、ひずみゲージを貼付することにより評価できることが数々の既往の研究により知られているが、骨材の噛合い効果と圧縮コンクリートのせん断抵抗を定量的に評価することは、これまで困難であった。本研究は、すべての位置およびすべての方向の変形が測定可能であるという画像解析の特徴を生かして、これらの抵抗成分の評価を試みようとするものである。 平成24年度までに得られた成果により、圧縮ひずみが卓越するコンクリート部材のひずみ発生状況を適切に捉えることができ、また、繊維補強コンクリートはりの斜めひび割れ面における応力の発生状況から分担せん断力を算出することに成功した。これにより、最終目標である斜めひび割れ面における骨材の噛合い効果、主鉄筋のダウエル作用、圧縮コンクリートのせん断抵抗、せん断補強鉄筋の引張力の各抵抗成分の評価が高い精度の元で可能になったものと考えられる。 以上から、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度までに得られた成果により、圧縮ひずみが卓越するコンクリート部材のひずみ発生状況を適切に捉え、また、斜めひび割れ面における応力の発生状況から分担せん断力を算出することが可能となった。そこで平成25年度は、本研究の最終目標である斜めひび割れ面における骨材の噛合い効果、主鉄筋のダウエル作用、圧縮コンクリートのせん断抵抗、せん断補強鉄筋の引張力の各抵抗成分が、各荷重レベルにおいて如何に推移するかを評価することを試みる。 まず、斜めひび割れ面における骨材の噛合い効果によるせん断抵抗力については、斜めひび割れ全長における開口変位およびすべり変位を画像解析により求め、既往のひび割れ面の応力伝達構成式に従って応力を算出し、斜めひび割れ方向に積分することで評価する。次に、圧縮部コンクリートのせん断抵抗については、圧縮部コンクリートの主ひずみの大きさおよびその方向を画像解析により求め、対応するせん断ひずみとコンクリートのせん断剛性からせん断応力を算出し、圧縮部深さを乗じることで評価する。せん断補強鉄筋の引張力は貼付したひずみゲージの値より算出し、最後に主鉄筋のダウエル作用による抵抗力を実験における作用せん断力からその他の3成分を減じることで評価する。 得られた各せん断抵抗力と荷重レベルとの関係を、せん断スパン比、主鉄筋比、コンクリート強度等の鉄筋コンクリート(RC)棒部材のせん断挙動に影響を表すことが知られている各パラメータにより整理することで、RC棒部材のせん断破壊メカニズムに対する検討を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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