2011 Fiscal Year Research-status Report
振動による鋼橋の損傷検出限界の解明と圧電体を利用した損傷検出手法の開発
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23760421
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
宮下 剛 長岡技術科学大学, 学内共同利用施設等, その他 (20432099)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 橋梁 / 維持管理 / 振動 / 損傷 |
Research Abstract |
既設橋梁の老朽化は急速に試行しており,これらの健全性を定量的かつ効率的に評価する手法の確立が強く求められている.この中で,動特性の変化に着目して,健全性の評価を目指す振動モニタリングに関する研究が国内外で積極的に行われている.ここでは,ハード面での進展に目覚ましいものがあるものの,取得したデータをもとに健全性を評価するソフト面での立ち遅れ感が否めない.これは,実橋における損傷と同定される動特性の間の関係が,十分に把握されていないことが一因と考える. そこで,本研究では,上記の関係把握を目的として,撤去する歩道橋(鋼2主鈑桁橋,一径間,スパン約28m)に対して,段階的に損傷を与えながら振動計測を実施した.サーボ型加速度計を床版上に14個設置して常時微動計測を実施した.無損傷状態の計測後,総計34ケースとなる損傷を橋梁に与えた.以下に,本研究から得られた主な知見を述べる.・損傷と固有振動数の変化率の相関は,3次(逆対称1次)モードが高く,損傷を与える前後で,約8.2%低下した.これは,理論的な固有振動数の変化率に近い.・固有振動数の変化率は,損傷の与え方に起因して,ねじれを伴わないモードの方が大きくなった.これは,下フランジに与えた損傷が,床版,下横構を含む擬似箱断面のねじり剛性に対して大きな影響を与えないためである.・対象橋梁の詳細なFEAモデルを作成して,実橋梁に与えた損傷と同一の損傷を与え,固有値解析を実施した.計測結果と同様に,FEAでもねじれを伴う振動モードでは固有振動数の低下率が小さく,ねじれを伴わない振動モードでは固有振動数の低下率が大きくなり,両者の傾向が概ね一致した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,段階的に損傷を与えた既設鋼橋の振動計測データの詳細分析を通じて,損傷と動特性の関係を把握することが目標であり,この目標は達成された.本研究の成果にもとづいて発表した学術論文ならびに学会発表は以下である.・宮下剛,玉田和也,劉翠平,岩崎英徳,長井正嗣:振動を利用した健全性診断に向けた実橋梁の損傷と動特性変化,土木学会論文集A1(構造・地震工学) (掲載決定,印刷中)・玉田和也,宮下剛,劉翠平,岩崎英徳,長井正嗣:段階的に損傷を与えた鋼鈑桁橋の振動計測と有限要素解析,橋梁振動コロキウム2011論文集,pp.68-75,2011.9.・安田聖晃,玉田和也,宮下剛,長井正嗣,岩崎英徳:健全性診断に向けた実橋梁の損傷と動特性変化の相関把握,第66回土木学会年次学術講演会講演概要集,pp.641-642,2011.9.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も撤去する橋梁に対して損傷を与えながら振動計測を実施する予定であり,損傷と動特性に関するデータを蓄積し,振動モニタリングの維持管理への利活用方法について検討する.また,現地計測より局部加振の有効性が示唆された.そこで,発展テーマとして,圧電体(圧電素子,PVDF)による局部加振を利用し,鋼橋の損傷を検出する手法を開発する.圧電体のメリットは,振動計測で使用する周波数帯(数Hz)から超音波探傷で使用する周波数帯(数MHz)に及ぶ広範囲の周波数帯を活用でき,振動のみならず,弾性波動としての利用も可能な点である.本項目の最終目標は,超音波探傷で使用する波長よりも長い中間周波数帯を利用し,近接目視が難しい部材の状態把握を目指す.具体的なイメージは,主桁などの部材両端部に圧電体を設置し,片側の圧電体に電圧を印加して部材を局部加振する.そして,もう片側の圧電体で振動あるいは波動を検出し,それらの伝播特性から部材内の異常を検出する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費として,「今後の研究の推進方策」で述べたことを実施するために,以下を計上する.現地振動計測の旅費,振動計測用プログラム(LabVIEW)の年間保守料,振動計測データ解析プログラム(MATLAB)の年間保守料,構造解析ソフトウェア(DIANA,midas FX+ for DIANA)の年間保守料,圧電体(圧電素子,PVDF)の材料費,国内・国外学会成果発表旅費,実験補助謝金,学会誌投稿料.
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