2011 Fiscal Year Research-status Report
可視化計測による粒状層の界面近傍における動的乱流構造の解明
Project/Area Number |
23760460
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中條 壮大 京都大学, 防災研究所, 研究員 (20590871)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 粒状層 / 多孔質体 / 乱流 / 可視化計測 / IB法 |
Research Abstract |
23年度は粒状層界面における基礎的な乱流構造の解明を目的として,開水路の一方向流場に敷設された固定粒状層近傍の流れを対象に可視化流速計測(PIV)を行った。また、粒状層近傍の流れを解析可能な数値モデルの構築を図ることが本研究のもう一つの目的であり、23年度はIB法を用いた複雑境界周りの3次元流れ解析モデルの構築を行い、その精度検証を行った。水槽実験は大阪市立大学所有の20m水槽を用いて行い、底部に代表径2.9cmの礫を6cm厚で敷き詰めて粒状層を作成した。この時の上流側の水深を10cmから30cmまで変化させた際の流動場の計測を、IDT社製の高速度カメラM3を用いて200~500fpsの間隔で流動場を計測した。また、画像計測結果の比較検証と長時間計測結果からの乱流イベント頻度の把握のためにADV流速計を用いた点計測も実施した。時間平均操作から乱流量を定義し、その異方性をもった鉛直分布特性を示した。また、流れの可視化結果の目視により、粒状層間隙から3次元性の強い渦流が間欠的に生じる様子が観察されており、乱流量の分布からも粒状層近傍では平均流と同程度の乱れが生じていることが示された。数値実験は、複雑境界周りの3次元流れ解析モデルの構築を23年度の目標とし、その達成を単一球に作用する抗力や多孔質体を通過する流れの摩擦係数に関するErgan式の再現性で確認した。これは24年度に行う粒状層上部流の乱流解析を行う際の再現性を保証するものである。粒状層近傍の流れについては、土砂輸送のみならず水生生物の生育環境評価など水質問題との関係も深い。にもかかわらず、本研究のように面的計測から基礎的なメカニズムを明らかにしようとする試みは希少であり、23年度の研究成果が示す乱流量の分布特性は、24年度に実施する非定常性の強い粒状層界面近傍のせん断流れ場の乱流モデリングにおいて大変有用となる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の計画段階には、高解像度なPTV解析法を用いて、粒状層近傍の密な流速分布を計測する予定であった。しかし、実際に実験を行ってみると予想よりも高速な流れと光源の出力不足により、必ずしも理想的な条件で実験を遂行することができなかった。高速な流れを計測しようとするとシャッター速度を早くする必要があるが、そうすると光量が不足するため、両者はトレードオフの関係にある。大出力の光源は非常に高価であるため、予算内で購入することはできなかった。このため、水理実験においては当初の予定よりも解像度の低い2次元の流速分布の情報とADV流速計による点計測結果で考察を行った。とはいえ、可視化計測実験の最適撮影条件については、検討が進んでおり、粒状層近傍の流れによるエントレインメント構造の基礎的解析も進んでいる。また、点計測結果を利用した乱流イベント頻度の解析から可視化計測の効率的な実施のための方針も定まっている。2台目の高速度カメラを購入した24年度においては、これらの知見を踏まえて、当初の目的である流れの3次元計測から乱流構造をより多面的に明らかにしていく予定である。一方、IB法を実装した数値計算モデルによる検討については、従来の2次元流れのモデルから3次元流れのモデルへと拡張が済んでおり、その精度検証も行われている。この進捗状況は予想以上である。この数値モデルを用いて、今後は水理実験では困難な流れの条件における検証が可能となっている。24年度には数値モデルを用いた粒状層周りの流れの解析が、やや情報の不足が見られる水理実験の知見を補足・強化する上で重要な役割を果たす。以上、水理実験においては当初の想定よりも計測解像度に問題があるものの、乱流構造の検討は可能である。また数値解析モデル開発の進展もあり、粒状層近傍の乱流構造解明という目的達成にむけて概ね順調に進んでいると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
24年度には屈折率整合法を用いた水理実験により、粒状層間隙部の流動と上部流の同時計測を行い、特に上部流と間隙流の相互作用について明らかにしていく。ここではステレオ撮影による3次元流動の計測も想定しているが、光学的条件の検討によって達成が困難であると判断された場合には、平面2次元計測をそのまま拡張した多面同時計測による検討も視野に入れている。ステレオ3次元計測では3次元空間の流速場を直接計測できる点、が、多面同時計測ではステレオ3次元計測よりも高解像度な計測結果が得られる点がそれぞれメリットとして挙げられる。また、先に「現在までの達成度」で述べたように、23年度の水理実験を行った結果から類推すると、当初計画していた移動層を含む流れ場の計測は光学的条件から非常に困難で挑戦的な課題であると考えられる。このため、移動層流れにおける乱流構造については、計測に取り組むと同時に、23年度に開発が進んだ数値モデルを積極的に活用して明らかにしていく。数値モデルに導入する乱流モデルは、研究代表者がこれまでに多孔質体通過流に対して妥当性を検証してきた空間平均操作に基づく非線形乱流モデルである。モデルのパラメタ―は空間平均領域のスケールとモデル係数であり、これが多孔質体流れにおいては概ね一意に決められることを示している。粒状層の流れにも同様に適用した場合、どこまで再現性があるかを検証し、porous flowからclear flowまで統一的に表現可能な乱流モデルを構築する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
先に「現在までの達成度」で述べたように、現在の画像計測システムでは、撮影条件に光学的な限界があり、さらなる精度向上を図ることが困難である。そこで、計測システムの性能向上と実験の効率化のために、計測システムの制御コンピュータに画像解析ソフトウェアの導入を行う。次年度の研究費にはそのための物品費として予算を執行する予定である。また、当初の研究計画通り、本研究の成果を国際ジャーナルや土木学会誌へ投稿する費用として予算を執行する予定である。
|
Research Products
(3 results)