2012 Fiscal Year Annual Research Report
エネルギーフローに着目した流域水・熱・物質循環モデルの開発
Project/Area Number |
23760465
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
赤松 良久 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (30448584)
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Keywords | 河川生態系 / エネルギー効率 / 流域水物質循環モデル / 河川環境評価 |
Research Abstract |
自然と社会構造の基本組織体である流域において,河川はその大動脈として流域の水・物質循環を担っている.しかし,我が国のほぼすべての河川はダムや堰などの構造物によってその連続性が分断され,陸域からの負荷を河川内にも蓄積し易い状態にある.したがって,流域の水・物質循環(エネルギーフロー)の健全化を図ることによってこれらの人間活動による負荷を低減し,河川・流域生態系に与える負荷を最小限に抑えることが必要とされている.そこで,本研究では河川生態系内のエネルギーのフローに着目した新しい河川生態評価モデルを構築した. 山口県の佐波川流域を対象として上流から下流の4地点に約一ヶ月毎の物理環境および生物環境の調査を2年間にわたって実施し,各地点の河川生態系内の有効エネルギー効率を明らかにした.また,有効エネルギー効率の長期的推移を算出し,長期間の佐波川の健全性を評価するために,有効エネルギー効率の予測モデルを構築した.このモデルでは地形データ,気象データ,日射量・栄養塩・水温,生物パラメーターを入力データとして,「流域水物質循環モデル」,「藻類増殖モデル」,「底生動物成長モデル」の各要素モデルを用いて,流量・水深,付着藻類量,底生動物量を算出する.本モデルを用いて調査対象の4地点における有効エネルギー効率の長期的推移を明らかにした. その結果,佐波川の複数地点間の生態系の健全性の違いを有効エネルギー効率で表現可能であることがわかった.また,現地調査に基づいた予測モデルによって,長期間の有効エネルギー効率の推移を予測可能であることがわかった.さらに,有効エネルギー効率による河川環境評価によって水質・底質環境から判断不可能な河川の健全性を評価可能であることが示された.
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