2011 Fiscal Year Research-status Report
山地流域の地形・地質・土壌分類に基づく粒度別土砂生産ポテンシャルの空間的評価
Project/Area Number |
23760466
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
齋田 倫範 鹿児島大学, 理工学研究科, 助教 (80432863)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 土砂生産 / 土砂動態 / 粒土組成 / 土壌分類 / 土地利用 / 表層地質 / 流域 / 地球化学図 |
Research Abstract |
平成23年度には,川内川鶴田ダム集水域の土砂生産特性を概観するための現地観測を行った.本研究では,西諸県盆地下流の吉松橋,大口盆地南部の荒田天神橋,川内川・羽月川合流部下流側の下殿橋,ならびに大口盆地北部を流れる支川の堂崎橋,新高津原橋の5測点を対象とした.2011年10月~2012年1月に月2~3回の頻度で採水を行い,懸濁物(SS)濃度を測定した.観測結果より,西諸県盆地下流や支川の羽月川では他の測点と比較して出水時にSS濃度が高くなり易いこと,支川の白木川では平常時でもSS濃度が高いことが確認された.鶴田ダム集水域の浮遊砂生産特性を検討するため,2001年~2011年を対象として,観測で得られたQ-Qs式から年間の総SS輸送量を求めた.ただし,本研究では夏季の大規模出水時のデータが得られなかったことから,各年の非出水期間の総量として求めた.非出水期間の総SS輸送量については,支川のSS輸送量が川内川本川の1/2程度であった.また,荒田天神橋では,上流の吉松橋より総SS輸送量が小さくなっており,非出水時には西諸県盆地で生産されたSSが大口盆地南部に堆積する傾向にあることが確認された.年間比SS輸送量の比較では,西諸県盆地や白木川上流の土砂生産能が羽月川上流と比べて約2倍高い結果となった.測点配置を考慮して鶴田ダム集水域を西諸県盆地,大口盆地南部,大口盆地北部,白木川流域の4領域に区分し,各領域の土砂生産特性と土地利用区分や斜面勾配との関係について検討した.その結果,平常時でもSS濃度が高い白木川流域では農地の比率が高いことが分かった.また,白木川流域とともに土砂生産能が相対的に高かった西諸県盆地では荒地や農地の比率が比較的大きく,平均斜面勾配も大きいことが確認された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,流域の地理・地質情報と山地斜面の侵食速度に関する既往の知見を活用し,粒度別土砂生産能を空間的に評価する手法を確立する.平成23年度秋季に現地調査を開始したため,出水時のデータが取得できなかったが,月2回以上の頻度で定期的な採水調査を実施し,本研究で構築するモデルの精度検証用データを取得することができた.GISによる地質・地形・植生・土地利用データの統合は既に完了しており,平成23年度には採水調査結果と地理・地質データとの定性的な関係を把握することができた.土砂生産量評価モデルのベースとなる分布型降雨流出モデルの作成も併せて行っており,概ね順調に作業が進展しているといえる.
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では,河川水中の懸濁物質の粒度分布を把握するための採水調査が不可欠である.加えて,出水時のデータを平成23年度に取得できなかったことから,平成24度も引き続き採水調査を実施する.さらに,鹿児島大学所有の蛍光X線分析装置を用いて川内川上流域における土壌中の化学組成を原位置調査し,地球化学図を作成する.河床材料に対しても同様の化学分析を行い,両者の関係から流域内で生産される土砂の起源と発生量を明らかにする.加えて,平成23年度から構築を進めている分布型降雨流出モデルに土砂生産量評価モデルを実装し,流域から発生する土砂量とその粒度組成を推定する数値モデルを構築する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
採水調査に公用車を活用することによって平成23年度研究費の支出を大幅に削減できたため,平成23度分と平成24年度請求分の研究費を利用して採水調査を継続する.採水調査と並行して,蛍光X線分析装置による土壌中の化学分析を実施する予定である.また,平成23年度に採取した粒度分布測定用試料の分析も平成24年度に実施する.以上の研究計画に基づき,主に現地調査のための旅費と現地調査・試料分析に係る消耗品費を中心に研究費を使用する予定である.
|