2012 Fiscal Year Research-status Report
効率的な資源循環に向けた静脈物流における共同輸送の課題構造に関する研究
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23760473
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
楽 奕平 東京大学, サステイナビリティ学連携研究機構, 特任研究員 (20573116)
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Keywords | 共同輸送 / 静脈物流 |
Research Abstract |
平成24年度は、まず、動脈物流と比較した場合の静脈物流の特性について、国土交通省が集計・公表している全国貨物純流動調査(2005年、2010年)のデータを用いて、輸送距離、輸送ロット、輸送機関選択の観点から分析を行った。廃棄物の輸送に係る課題に関して、既往研究で明らかになった業態の特徴について、最新のデータにおいても結果の再現性が認められ、依然として廃棄物輸送の非効率性などの課題の存在が確認された。 静脈物流の実情として、共同輸送はほとんど実施されていない状況であるが、その背景理由と課題について、事例調査を実施した。本年度は、(社)ビジネス機械・情報システム産業協会の静脈物流委員会が実施しているビジネス機械の回収機交換システム、国土交通省が中心となって検討した首都圏建設副産物における小口巡回共同回収システムを事例として、政府関係者、建設廃棄物協同組合などの事業団体、排出事業者、収集運搬事業者にヒアリングを実施した。その結果、静脈物流の特性として、廃棄物処理に関する規制、収集運搬業界の零細性が固有の課題として確認された。静脈物流では廃棄物の適正処理の観点から廃棄物処理法の規制を受け、共同輸送では、特に積み替え保管施設の設置にあたり、各自治体の許可を得る必要があること、原則として、収集運搬業者は廃棄物の収集運搬を第三者に再委託できないなどのことから、動脈物流では主要な問題とならない法規制の面がネックであることが確認された。また、廃棄物輸送事業者は、地域に密着した小規模な業者が多く、これらの事業者にとっては輸送の共同化により結果的に業務が縮小し、個々の事業者では共同輸送に参加するメリットが少ない点が明らかになった。また、二つの事例の比較から、廃棄物の種類及び業界によって共同輸送の課題は異なってくるものと考えられ、廃棄物の種類・業界特性に応じた類型化の必要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、延長申請以前に23年度に予定していた①静脈物流に関わる事業者の産業規模、産業構造及び利害関係者の実態把握、②静脈物流における共同輸送の実施状況、動脈物流との比較、③共同輸送の形態の実態把握、という3点についてヒアリングを中心に、調査を実施した。国土交通省が集計・公表している全国貨物純流動調査(2005年、2010年)のデータを用いることにより、動脈物流と比較しながら、静脈物流の特性と輸送実態を定量的に分析した。また、(社)ビジネス機械・情報システム産業協会の静脈物流委員会が実施しているビジネス機械の回収機交換システム、国土交通省を中心として検討した首都圏建設副産物における小口巡回共同回収システムを事例として、関係者へのヒアリングより、静脈物流における共同輸送の実態、関係する事業者等の利害関係者、共同輸送の推進における課題などについて実態把握を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、延長申請以前に24年度に予定していた分析等を行うこととし、ヒアリング及び統計調査等により得たデータ、分析結果について、より詳細な考察を加えることとする。なお、ヒアリングに関しては、課題の検証の過程において必要を生じた場合には今後も追加的に行う見込みである。平成24年度は、主な共同輸送の実施主体についてヒアリングを行ったところであるが、日本における静脈物流の全体像を把握できたとは言いがたいため、事例の全国網羅的な把握などマクロな視点からの調査を継続して行い深堀する。考察においては、まず、成功及び失敗した事例について、要因と課題の抽出を行う。ヒアリングの結果、成功・失敗を単純に判断することは難しいことが明らかになったが、共同輸送を検討した結果として実現に至ったかどうか、取り組みがどの程度の期間継続してなされたか、どれほどの範囲の関係者に波及したか、などの観点から評価することとする。次に、それぞれの要因及び課題の構造化を行う。構造化にあたっては、まず、共同輸送の実施へのインセンティブや事業者間の共依存性などステークホルダーの関係性とともに、規制制度や廃棄物の固有性など背景要因について、整理分類を行う。加えて、それが取り組みへの実現性・継続性・波及性に影響を及ぼしたか詳細に分析するとともに、事例ごとの共通項や独自性の観点から定性的モデル化を試みることとする。最後に、課題が解決された場合、どの程度の効率化が図られる可能性があるのか、という潜在的な効率化メリットを定量的に把握する手法について検討する。以上、まとめると、共同輸送における成功事例、失敗事例から課題・要因を抽出、構造化し、仮説の検証を行うとともに、成功事例による課題解決法の検討を行い、静脈物流における共同輸送が広く普及した場合の、効率化の効果、環境負荷の低減効果、リサイクル推進への寄与などについて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は課題の検証の過程において追加のヒアリングを行う見込みであるので、国内の旅費と調査への協力の謝金が必要となっている。また、最終年度であるため、研究成果を学会等において発表する予定であり、学会発表の旅費と登録費としての支出を予定している。既に発表を予定している学会として、平成25年10月に中国成都で開催する「International Conference on Transportation Engineering」が挙げられる。
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