2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23760479
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
浅野 美帆 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80469858)
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Keywords | 交通工学・土木計画 / 駅前広場 / 空間構造 / シミュレーション |
Research Abstract |
駅前広場や路上駐車場等を含む都市内の道路空間においては,利用者が限られた空間を最大限効率的に利用できる設計が求められる.既存の道路空間設計方法では,道路の幾何構造はあくまで設計車両が幾何的に道路空間を通行可能かのみに重点を置いており,その幾何形状内で利用者が移動や停車に必要と認知する空間の大きさや,他の利用者が既に空間を占有している状態で選択される移動軌跡を考慮していない.本研究は,移動の自由度の大きな駅前広場を対象に,空間構造や周辺利用者の存在に応じて個別の利用者が選択する占有空間や移動軌跡を,実観測データから定量的に表現し,空間の効率性を評価するシミュレーションモデルの構築を目的としている. 平成24年度は,23年度に引き続き,実測データを用いて駅前広場のキスアンドライド車両停車特性に関する分析を行った.23年度は広場内での車両が全て路肩に停車する,という前提での車両停車位置モデルを構築していたが,広場内の二重停車車両の存在が広場の通行位置閉塞による混雑を引き起こすことから,このモデルを二重停車の選択行動も組み込んだ形に拡張した.その際,周辺車両の停車状況を踏まえて,自車両が移動可能な空間の範囲を考慮したモデルとした. これまでに構築した,停車位置選択モデル,車線によらない横方向移動に関する車両挙動モデル等をセルオートマトンシミュレーションに実装し,時々刻々と変化する広場内の車両停車状況および混雑状況が再現できることを確認した.駅前広場は通常の道路と異なり,車線が明確に決められておらず,幾何構造も多様である.セルオートマトンでは,セルの大きさをきめ細やかに設定し,1台の車両が複数のセルを占有する形とすることで,このような空間内での自由度の高い車両挙動の表現を可能とした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は,当初予定していた通り,車両の相互干渉を考慮した分析とモデルの一般化を試みた.複数の駅前広場における実態調査結果を踏まえ,特に交通量が大きく,他者の影響のある場合でのキスアンドライド車両移動軌跡や停車挙動について分析・モデル化を行った.特に渋滞発生のメカニズムとして,二重停車車両に着目した分析を行った.広場内の停車車両が多くなってくると,路肩にまだ停車可能な空間があるにも関わらず,駅入口に近い場所に二重停車を行う車両が散見され,これが渋滞発生の原因となる.このような二重停車の発生条件も含めてモデル化した.また,他車両が存在する際に自車両の行動に必要な余裕空間として,縦列停車時や車線変更時の余裕幅員,車間の分析を行った.これらを通じて,広場の空間利用状況をより詳細に説明することが可能となった. 以上のモデルをセルオートマトンシミュレーションに実装することで,時々刻々と変化する車両の空間占有状況や混雑状況の表現を行った.これらはおおむね当初の計画通りである. なお,今回のシミュレーションではキスアンドライド車両のみを取り扱っており,バスやタクシー,乗降する歩行者の影響は考慮できていない.また,駅前広場の構造によっては,広場出口の交差点容量や,交差点待ち行列と乗降のための停車車両の相互作用も二重停車以外の主な渋滞発生要因となることが判明しているが,このような状況の表現については今後の課題である. 研究代表者が産前産後休暇に入ったことにより,国際学会での研究成果発表はできていないが,研究実施期間内における進捗状況は総合的に見て計画通りに進んでいるといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,構築したシミュレーションプロトタイプに対して必要なモデルの拡張を行い,実際の駅前広場を対象としてモデルの再現性を検証する. 1.シミュレーション個別要素モデルの改良と拡張:今年度のシミュレーションはキスアンドライド車両の乗降位置周辺の挙動を表現するものであるが,広場全体の性能を総合的に検証するためには,広場出口の交差点待ち行列との干渉や,バス等他の交通機関との関係についてもモデル化・実装すべきである.これらについて,既存のシミュレーションモデルや調査データを基にモデルの内容を検討し,シミュレーションに実装する. 2.モデルの再現性検証:実際の複数の駅前広場を対象に,シミュレーションモデルの再現性を検証する.特に,1を踏まえた広場全体の性能評価に着目する.さらに,施設配置や幾何構造の変化に応じて,広場の混雑状況がどのように変化するかの感度分析を行う. なお予定では平成25年度が最終年度ではあるが,産前産後休暇・育児休業取得中のため研究期間を延長予定である.当初計画にて予定していた内容の一部(シミュレーションモデルを用いた道路空間の設計・評価方法の検討)については,平成26年度実施予定である.平成26年度には,海外の事例等も参考にしつつ,幾何構造改善の具体的な案を例示し,車両の停車位置や移動軌跡がどのように変化するか,結果として全体としての遅れ時間等のサービスレベルがどう変化するかを検証する.また実務における設計手法との比較を通じて,本研究成果をより具体的に実務に活かすための手法を検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は,研究代表者が産前産後休暇に入ったことと,その前の体調変化に伴い,当初計画していたほどは現地調査を実施できなかった.そのため,調査用に計上していた旅費と作業謝金等に関して残額が発生した.また,学会参加・発表に関しても,移動の制約から当初予定していた国内外の学会に参加できなくなった.これらの理由から,平成24年度の予算に相応の繰越が発生した. 平成25年度は,シミュレーションの個別要素モデルの改良・拡張のためのプログラムのコーディングや現地調査にかかる作業謝金に重点的に配分する.さらに,現地調査における器材レンタル料等を計上する.また,育児休業からの復帰となるため,引き続き国際学会への参加は困難と考えられることから,その代替として,成果発表のための学術雑誌論文投稿料を計上予定である.
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