2011 Fiscal Year Research-status Report
港湾・海運・通商政策評価のための国際物流業行動モデルと貿易予測モデルの開発
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23760487
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石黒 一彦 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 准教授 (60282034)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 多地域応用一般均衡モデル / 国際輸送 |
Research Abstract |
国際物流業の特徴的な点を考慮すべく検討を行った。船社のサービス生産に必要な資本費用は比較的大きく、損益分岐点を大きく下回っても操業を停止するには至らない。また、船舶の建造には多大な日数を要し、短期的に供給量を増加させることが困難である。以上の特徴は、短期的には現実が多地域応用一般均衡(SCGE)体系が想定する均衡状態とはかけ離れていることを意味する。しかし、長期的な視点では、現実には国際物流業が常に発展しながら存在することから判断して、SCGE体系と整合していると考えられる。短期的な視点と長期的な視点の両面を考慮したモデル化の方法について検討を行った。国際物流業としての船社の行動のモデル化を行った上で,それらを組み込んだSCGEモデルの構築を行った。国際物流業の行動表現方法にはCobb-Douglas型関数やCES型関数をはじめ、様々な関数型の候補が考えられるため、それぞれの関数型に応じた表現手法および必要なデータを検討し、まずは計算の簡便さからCobb-Douglas型関数を採用した。国際物流業の生産要素投入構造を産業連関表および有価証券報告書から推計した。同時に、世界各地域間の輸送実績および運賃に関するデータを文献調査により把握した。本研究の特徴的な想定として、各地域に港湾が1つずつ存在し、対象地域全体に海運業が1つずつ存在する状況を想定した。また,通常のSCGEモデルと同様に各地域にそれぞれ複数の産業,家計,政府が存在するものと想定した。地域間産業連関表が存在すれば、パラメータのキャリブレーションを行うことができ、モデルの適用も可能であることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際物流業のモデル化における短期的な視点と長期的な視点の両面を考慮する方法については結論を得る予定であったが、結論を得るに至っていない。これは実務者へのヒアリング調査が思うように進まなかったことに原因があると考えている。モデルの構築は行うことができたが、計画に記した精緻化を進めるところまでは至っていない。上記の問題はあるものの、いずれも深刻な問題ではなく、全体としては順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
作成したモデルの精緻化およびパラメータの特定を行う。初年度に構築した国際物流業の行動モデルのSCGE体系との整合性をさらに検討した上で、最終的に最も適切と考える国際物流業の行動を取り込んだSCGEモデルを提案する。入手可能なデータのみからパラメータ推定が可能かどうかを検討し、不可能な場合はパラメータの推定方法を検討する。おそらく既存の統計のみでは不十分であり、追加データが必要なことが予想されるため、さらなるヒアリング調査を行い、必要データを入手する。関税政策変化、港湾整備に伴う輸送費用の低下および輸送容量の増加、国際物流業の合併による生産性向上、船舶の大型化による効率性向上、海運業に対する税制の変更、船員の国籍自由化、内航海運の市場開放など、政策や状況・環境変化のモデル上での表現方法を検討する。特にここ最近の国際物流業の変化と貿易の変化の因果関係を明確に示すことができる適用例を示すことにより、本課題で開発したモデルの有用性を示す。また、その適用例をもとに今後の港湾政策について提言を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は予定していたヒアリング調査が、日程調整の不調等の原因により、予定通り行われなかった。それにより、データ収集にも遅れが生じ、研究補助のための謝金の支出も行われなかった。平成24年度はヒアリング調査を進め、それにより得られたデータの処理等も行うため、平成23年度に使用する予定だった補助金も併せて使用する予定である。また、当初の予定通り、国際貿易関連および国際物流関連の書籍・統計も購入する予定である。
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Research Products
(1 results)