2012 Fiscal Year Research-status Report
港湾・海運・通商政策評価のための国際物流業行動モデルと貿易予測モデルの開発
Project/Area Number |
23760487
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石黒 一彦 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 准教授 (60282034)
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Keywords | 多地域応用一般均衡モデル / 国際輸送 / 国内輸送 / 運賃 |
Research Abstract |
平成23年度に,国際物流業としての船社の行動のモデル化を行った上で,それらを組み込んだSCGEモデルの構築を行ったが,平成24年度はそのモデルを拡張する形で,運賃外生モデルと運賃内生モデルの2通りのモデルを構築した.物流業もほかの産業と同様の生産関数を持つと仮定して定式化を行っている.生産関数としてはCobb-Douglas関数とCES関数の2通りの関数を用いてそれぞれモデルを構築した.ただ,平成24年度には,モデルの各種パラメータの特定および推定を行うことを目標としていたが,データの入手が進まなかったため,データ入手の容易な国内を対象に運賃外生で生産関数がCobb-Douglas関数であるモデルのみ適用を行い,その有効性を検証した.本研究の特徴的な想定として,各地域に港湾が1つずつ存在し,対象地域全体に物流業が1つ存在する状況を想定した.また,通常のSCGEモデルと同様に各地域にそれぞれ複数の産業,家計,政府が存在するものと想定した.産業数は40,地域数は47としたが,計算時間は実用的な範囲内に収まった.適用例としては,何らかの政策または技術革新による運賃低下が各地域各産業および家計にもたらす影響の推計を行った.特区などにより地域や品目を限定した形での規制緩和による運賃低下は,特定地域に恩恵がもたらされる可能性があるものの,国全体には負の経済的影響を与えることが示された.一方,国全体で運賃が低下する場合には,国全体の生産額や所得は増加する結果となっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデルの構築およびその精緻化については概ね計画通りに進んでいる.しかし,モデルの各種パラメータの設定や推定に必要なデータの入手が計画通りに進んでいないため,モデルの適用や検証は一部のモデルについてしか行うことができていない.ただ,必要なデータ等については,今後ヒアリング等で入手できることが期待できるため,深刻な問題はないと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
作成したモデルのさらなる精緻化およびパラメータの特定および推定を行う.これまで構築した国際物流業の行動モデルのSCGE体系との整合性をさらに検討した上で,最終的に最も適切と考える国際物流業の行動を取り込んだSCGEモデルを提案する.入手可能なデータのみからパラメータ推定が可能かどうかを再び検討し,不可能な場合はパラメータの推定方法を検討する.既存の統計のみで不十分な部分について,さらなるヒアリング調査を行い,必要データを入手する.関税政策変化,港湾整備に伴う輸送費用の低下および輸送容量の増加,国際物流業の合併による生産性向上,船舶の大型化による効率性向上,海運業に対する税制の変更,船員の国籍自由化,内航海運の市場開放など,政策や状況・環境変化のモデル上での表現方法を検討する.特にここ最近の国際物流業の変化と貿易の変化の因果関係を明確に示すことができる適用例を示すことにより,本課題で開発したモデルの有用性を示す.また,その適用例をもとに今後の港湾政策について提言を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は,予定していたヒアリング調査が,日程調整の不調等の原因により,予定通り行われなかった.それにより,データ収集にも遅れが生じ,研究補助のための謝金の支出も行われなかった.平成25年度はヒアリング調査を進め,それにより得られたデータの処理等も行うため,平成24年度に使用する予定だった補助金も併せて使用する予定である.また,当初の予定通り,国際貿易関連および国際物流関連の書籍・統計も購入する予定である.
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Research Products
(2 results)