2011 Fiscal Year Research-status Report
複雑ネットワークモデルを用いた世界都市圏別人口の長期推計手法に関する研究
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23760490
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
紀伊 雅敦 香川大学, 工学部, 准教授 (20426266)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 国土計画 / 都市人口 / Zipf則 / 複雑ネットワーク |
Research Abstract |
平成23年度は、都市圏の空間的成長機構をモデル化するとともに、人口・地理情報に関する基礎データを最新のデータに全面更新した。 まず、都市圏の空間的成長機構のモデル化では、従来モデルでは十分に説明できなかった、パレート係数が1を下回る都市規模分布の生成メカニズムをモデル化し、仮想的なデータを用いたシミュレーション分析を行った。具体的には、従来モデルでは都市が発生する場合、確定的にその都市が成長することを仮定していたが、新たなモデルでは、その都市が成長するかどうかは確率的に定まるものとし、その成長確率が低い場合、パレート係数が1を下回り、一極集中型の都市規模分布が得られることを理論的に説明した。こうしたマクロな関係を導くシンプルなミクロモデルは既往研究には見られず、都市地理学における新たな知見である。その成果はPhysica Aに投稿中である。 また、都市圏空間の拡大モデルについては基礎分析が完了しているが、現状では現況再現性に課題が残っている。都市のアクセシビリティを一人あたりGDPの関数として設定しているが、都市の個別的要因を反映していないことが原因と考えられる。このためには、交通基盤データの導入など、新たな変数の導入が必要である。 このため、基礎データの更新では、GIS上に整備された交通基盤地図である、OpenStreetMapのデータを新たに取得・整備している。これにより、全世界の多くの都市における道路、鉄道等の整備状況を把握することが可能となり、前述の都市圏空間の拡大モデルの説明力が高まることが期待される。論理的には、都市の拡大と交通基盤の整備は互いに影響するものと考えられるが、交通基盤の整備状況は政策的な意志によって都市圏ごとに異なる。したがって、本研究ではまず交通基盤を与件としたうえで、都市拡大に与える影響を分析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、おおむね当初計画通り研究をすすめることができた。ただし、研究実績に示したように、当初、都市圏の拡大を十分説明できると考えていた変数のみでは、説明力が不十分であることが判明し、新たな説明変数を追加するために、新たなデータの取得、整備を行なっている。このため、都市圏空間の拡大モデルについては平成24年度も引き続き取り組むことを予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き都市圏空間の拡大モデルの精度向上を測ると共に、地理情報データを用い都市の適合性指標を作成する。この指標は各都市の座標における自然地理条件が都市に適している度合いを示すものであり、国ごとの平均値が各国の都市規模分布の形状パラメータと一致すると理論的には解釈される。平成24年度は、前述のOpenStreetMapのデータを用い、交通基盤が都市の適合性に与える影響を国土レベルで把握することを試みる。 その上で、本モデルによる世界都市圏別人口の再現性を評価する。国連人口データベースでは世界約650都市圏について1950年以降の都市圏人口を提供している。このデータと本モデルの遡及推計人口を比較することでモデルの再現性を評価し、不十分な場合その原因を明らかにする。 以上のモデルを用い、IPCC-SRESシナリオに基づく2100年までの都市圏別人口を推計し、将来生じうる巨大都市の動向を考察する。ただし、現在IPCCで検討が進められているRCPシナリオなど、新たな長期人口シナリオが公開される場合、それらに対応した推計も行う。 以上の成果を国内外の学会、学術誌等で公表することに加え、香川大学内にサーバを設置し、各都市圏の人口推計結果を含む研究成果物をインターネットで公開する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品費として、研究成果として得られる多くの人口データを効果的に公開するためデータサーバを計上する。また分析理論の深度化のため関連図書費を計上する。また、消耗品費として、データ保存用のハードディスク等を計上する。 国内旅費として、研究が独善的なものにならないよう、同志社大学の三好教授、地球環境研の秋元氏、運政研の松岡氏と年2回程度打ち合わせを行うための旅費を計上する。また、研究成果の学会発表の旅費を計上する。また、外国旅費として、研究成果をTransport Research Board(米国)で発表する旅費を計上する。 謝金等として、大量のデータを処理するため分析補助者の謝金を計上する。また英文での論文投稿を目的として英文校閲費を計上する。また、その他として、学会発表(土木学会、エネルギー資源学会等)のための参加費用を計上する。
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